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5月30日放送のNHK 偉人たちの健康診断「新選組・土方歳三“お掃除男子”美肌の秘密」という番組の中で、土方歳三の「美肌」のヒミツは、天然理心流の鍛錬で筋肉量が増えていたため、というような話をしていた。解説者によれば、
そう言えば最近、炎天下でウォーキングをしているにも関わらず頬のシミが薄くなったり、ホクロの色が薄くなってきたような気がする。ほぼ毎日、半田山植物園の山登りで鍛えているためだろうか。 もっとも、土方歳三の美肌が体幹や下半身の鍛錬によるという説は疑わしい。もしそうであるなら、同じように鍛錬をしていた新撰組の隊士はみな美肌になったはずである。 ※なお、番組で紹介された研究は、 Beauty and muscle ?the secret effect of muscle on the skin- という国際大会(2018年9月)で口頭発表された知見であるようだが、その後、学術誌に論文掲載されているのかどうかは確認できなかった。 |
【連載】 世界禁煙デー協賛企画(6)受動喫煙防止対策から薬物依存に対する包括的な対策へ 昨日の続きで、この連載の最終回。 現在、喫煙対策は、非喫煙者の健康を守るための緊急避難対策として受動喫煙防止に重点が置かれているように見えるが、私は、より根本的には、ニコチン依存を無くす対策が必要であり、さまざまな薬物依存とセットにして包括的な撲滅対策を実施していくべきであると考えている。 ニコチン依存が薬物依存の1つであることは、身体依存や耐性、離脱などの特徴から明白であり(最近の議論についてはこちらを参照)、程度や中身の差はあるにせよ、依存という特徴自体は、覚醒剤、大麻、各種危険ドラッグなどと本質的に変わらない。 じっさい、岡大で敷地内全面禁煙が実施された後も、敷地内の座主川(用水路)沿い、建物の裏側、トイレ、(教員の場合は)研究室内などでこっそりと喫煙を続けている人がいる。全面禁煙に反対であるとか喫煙所設置を要望するという意見を提案するだけなら大いに結構であるが、そういう意見を主張しているからといって違反喫煙をしてよいという理由にはならない。喫煙所設置を要望する人は、現状では全面禁煙をしっかり守った上で主張を述べ、喫煙所設置が認められた場合に限って、その後から喫煙所での喫煙を開始するべきであるが、実際には違反を承知で隠れ喫煙をせざるを得ないのである。それでもなお自分はニコチン依存ではないと否定し続けるのは哀れと言うほかはない。 少し前の話になるが、5月30日のNHK「シブ5時」で、アメリカ・フィラデルフィアを取材した「薬物蔓延の街」という話題を取り上げていた。 番組では、フィラデルフィアでは20年程前、痛みを和らげるための医療用鎮痛剤が合法的に使用されるようになった。そこに少量でも高揚感が得られるフェンタニルが、中国から違法に流入し、爆発的に広まったという。行政の責任者は、いまや対策の打ちようのないレベルに達しているとし、 ●買いたい人が多くいる限り、金もうけのために売る人は絶えません。これをくい止めるのは不可能です。 と、悲観的な見解を示していた。 取材映像の紹介に続いて番組によれば、オピオイド系鎮痛剤はもともと、がん患者の緩和ケアを目的に使用されてきたが、20年ほど前から、痛み止めや、うつ病などの薬としても使用されるようになった。それにより眼科医や歯科医も処方ができるようになり、比較的安価でモルヒネやヘロインの50倍の効果をもたらすフェンタニルが広く出回るようになったという。薬物の過剰摂取で死亡する人は、年間で7万人(1日あたり200人)となり、この数は、銃で死亡する人(4万人/年)、交通事故で死亡する人(4万人)を超えているという。トランプ大統領は、習近平主席との会談で、大量のフェンタニルが中国からアメリカに流入していることにふれ、「これは侵略だ 薬物と犯罪者による侵略だ」と述べたというが、もちろん密輸を阻止する対策は必要であるとしても、外国のせいにしているだけでは何の改善にもつながらない。自国でしっかりとした薬物依存対策をとることが必要である。 ちなみに、上記で、アメリカでは薬物過剰摂取による死者が年間で7万人(1日あたり200人)という数字に驚かれた人は多いと思うが、日本でも、喫煙もしくは受動喫煙が主原因と見られる慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡数は年間1万5000人を超えており、肺炎による死者、さらには喫煙によってリスクが高まる疾病を含めると、より中長期的に見れば、喫煙がもたらす直接的・間接的死者は相当数にのぼるものと見られる。 フィラデルフィアの街角では使用済み注射器が散乱し街中を夢遊病者のようにさまよう光景が見られるという。日本ではそこまで深刻化していないように見えるが、注射器を吸い殻、街中をさまよう人たちを歩行喫煙者に置き換えれば、依存という本質は、フェンタニルでもニコチンでも少しも変わらない異常事態であることに気づくであろう。 どこかの天体から宇宙人がやってきて、街中で地球人を観察したとする。得体の知れぬ管のようなものに火をつけて口から煙を吐き出す光景や、路上に散乱している吸い殻を目にしたら、地球人はニコチン依存に蝕まれていると報告するに違いない。街角での喫煙が異常であるように見えないとしたら、それは過去において、地位の高い人たちが所構わずに喫煙していたり、映画やドラマでの喫煙シーンを見たり、親や友人が人前で喫煙する環境で生まれ育ってきたために、「人前での喫煙は当たり前」と刷り込まれてしまったからに他ならない。 すべてを白紙に戻した上で、喫煙はニコチン依存であるという観点から、種々の薬物依存とセットにして、包括的な依存撲滅対策として取り組む必要がある。 |