じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 時計台前の芝地でネジバナの花茎が見られるようになった。少し前に草刈りが行われたことと、梅雨入り前ということもあり、昨年同時期よりは遙かに少ない。このあと、梅雨入りで雨が殖えれば、ニョキニョキと花茎が出てくるものと期待される。


2019年6月19日(水)



【連載】

又吉直樹のヘウレーカ!「“かわいい”ってどういうこと?」 (6)「かわいい」という言葉の社会的機能

 昨日に続いて、又吉直樹のヘウレーカ!の「“かわいい”ってどういうこと?」 に関する話題。今回で最終回。

 昨日までのところで、「かわいい」についての研究は、少なくとも次の2タイプがあると指摘した。
  1. 「かわいい」とされている事象の刺激機能や反応クラスについての研究。実験・観察において「かわいい」という言葉は一切使用しない。
  2. 「かわいい」という言葉の使われ方についての研究。
 このうち1.は、行動分析学的なアプローチであり、言葉が使えない動物との比較もできるし、ビジネスへの応用など実用的利点がある。いっぽう2.は、言語学の研究という側面があるが、言葉の社会的機能を分析するという方向では心理学も大きく貢献する可能性がある。

 このWeb日記で何度か述べているように、言語行動を「恣意的な関係反応を派生させる」という形で定義すると、言葉を使う動物は人間以外には皆無、もしくはきわめて例外的な報告事例に限られている。

 このことで少々脱線するが、「からす なぜなくの」で知られる童謡「七つの子」では、
烏なぜ啼くの
烏は山に 可愛い七つの
子があるからよ

可愛い 可愛いと 烏は啼くの
可愛い 可愛いと 啼くんだよ
【以下略】
というように、カラスは「かわい(い)」と啼くように歌われているが、実際のカラスは「かわい(い)」という言葉を使っているわけではない。
※余談だが、河合隼雄先生の何かの講演の時に、河合先生は「七つの子」は自分の名前が呼ばれているように聞こえて嫌いだったというような話を伺ったことがあった。

 元の話に戻るが、「かわいい」という言葉の社会的機能については、番組では、
  • “かわいい”スパイラル:かわいいものを見れば笑顔になり、笑顔は表情模倣によって伝染するので社会的な場で増幅する。
  • “かわいい”トライアングル:あるモノを見て、ある人がかわいいと感じ笑顔になる。別の人もかわいいと感じて笑顔になる。互いに顔を見合わせてさらに笑顔になる。
というように紹介されていた【詳しくはこちらの論文参照】。
 そう言えば、このWeb日記を執筆している時に視ている「日経モーニングプラス」でも、「“おじいちゃん、かわいい」というCMが流れていた。【もっともこのCMは、自転車カゴにぬいぐるみをいっぱい積んだおじいちゃんの性格が可愛く見えるということを言いたいのではなく、ぬいぐるみはゲーセンで獲得したものであり、人生100年時代のシニアの生活の一面を取り上げたものであったようだ。】

 上掲では「かわいい」という言葉が交わされること自体ではなくて、「かわいい」と発声する時の口元が笑顔の形になったり、あるいはモノ自体を見て笑顔になっていることが表情模倣によって伝染する、というように解説されていたが、これについてはイマイチ納得できないところがある。というのは、日本人は会話の際にお互いの顔をそんなに見合わせないからである。またSNSでは、発信者の表情ではなく、言葉としての「かわいい」が直接交わされている。笑顔自体の効果が付加されていること自体は確かであるとしても、「かわいい」という言葉の社会的機能と笑顔の機能は別々に取り出せるのではないかと思う。

 あと、番組では、

●かわいいと言っている人をほかの人から見たらその人は笑顔になっているように見える

と解説されていた。これは、「い」を発音すると口が横に開いて笑顔のように見えることに由来している。確かに「いい」で終わる形容詞は「良い(いい)」と「かわいい」以外にはあまり思い浮かばないが、直前に「き、し、ち、に、ひ、み、り」が位置するような形容詞ならいっぱいあり、口の形は同じになるのではないかという気がする。例えば、「苦しい」、「鬱陶しい」、「難しい」などと発声しても、最後の「い」を伸ばせば、口の形は同じになるはずだ。なお、「い」の発音については6月7日の日記でも取り上げたことがあった。

 なお、だいぶ昔の番組になるが、「かわいい」に関連して、NHKのBSで といった話題が取り上げられたことがあった。なかなか奥深いテーマである。