じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 10月30日の岡山は朝は濃霧、日中はよく晴れたものの黄砂の影響で霞んでいた。写真は日没後の夕焼けと月齢2.1の月。なお、月の右下には金星も見えたが写真には写っていない(水星も同様)。

2019年10月30日(水)



【連載】#又吉直樹のヘウレーカ! 「あなたは何色に見えますか?」(4)言葉と色のカテゴリー分け

 昨日に続いて、10月25日に放送された、

又吉直樹のヘウレーカ! 「あなたは何色に見えますか?」

の感想と考察。

 番組では、ヒトの3色覚に続いて、「不確かな色を共有できるのか?」という話題が取り上げられた。40×8=320通りのカラーチャート[]を、基本色名と言われる「赤、緑、青、黄、紫、オレンジ、ピンク、茶、白、灰、黒」の11通りに区分けするという実験を日本人57人に行ったところ、ヒトによって区分けに違いが出たという。特に青と緑の境界にはかなりの個体差があることが分かったという。
]出典は、
Paul Kay, Brent Berlin, Luisa Maffi, William R. Merrifield, and Richard Cook (200). The world color survey. Stanford CSLI Publications.

 このほか、11色ではなく、自由な一言の色名で区分けしてみると、かなりの人で水色という領域が出てくることも紹介された。この「水色」は30年前には無かったとのことである。

 このあと、言葉(色名によるカテゴリー分け)が先か、色の区別が先であとから色名が割り振られたのかという話題も取り上げられた。赤ちゃんをつかった実験では、青と緑の境界で反応の変化が見られたことから、「脳は元から青と緑のカテゴリー分けをしていた」と結論された。言葉によるカテゴリー分けは、コミュニケーションのためと、自分の中で分けて整理するために、行われるようになったとも解説されていた。

 ここからは私の考えになるが、言葉によるカテゴリー分けというのは色名に限ったことではない。さまざまな事物は、言語コミュニティの中で必要に応じてカテゴリー分けされる。例えば、雨が滅多に降らない環境に暮らしている人々では「雨」は一語で充分だが、日本のように気象変化が激しい地域では「大雨」、「俄雨」、「土砂降り」、「小雨」、「春雨」、「時雨」というようにいろいろな言葉でカテゴリー分けされる。雪という呼称も、多様な雪が降る地域では細かくカテゴリー分けされた呼称があると聞く。

 色の弁別は、おそらく、しゃべり言葉の弁別と似たところがあるはずだ。音声については、よく「L(エル)」と「R(アール)」の区別が話題になるが、LとRを区別せずに「らりるれろ」という同じ音としてカテゴリー分けをしている言語圏に住んでいる人は、どちらも同じ音に聞こえてくる。青と緑についても、どちらも「あおい」とカテゴリー分けしていれば、似た色に見えてくるかもしれない。【但し、音声の場合は、音を聞き取ることと自分で発生することという双方向でカテゴリー化がはかられるが、色のカテゴリー化はあくまで色刺激に対する片方向のカテゴリ分けという点で共有性が弱い。また、言語コミュニティによってカテゴリー化が統一され共有される機会も遙かに少ない。】

 あと、上記の「水色」の話だが、私にとっては子どもの頃から水色は基本色名であり、11通りの色名が「赤、緑、青、黄、紫、オレンジ、ピンク、茶、白、灰、黒」であって水色が含まれていないというのは少々意外であった。鮮明に写っている虹の色の写真を見ても「赤、オレンジ、黄色、黄緑、緑、水色、青、紫」というように緑と青の間には水色がはっきり見えている。

 ちなみに、私が知っている色名は殆どが小学校低学年の頃に、多色のクレヨンや絵の具を通じて覚えたものである。ネットで検索してみると、24色や36色の中には「えんじいろ、ふかむらさき、ぐんじょういろ、ふかみどり、おうどいろ、つちいろ、こげちゃいろ」といった懐かしい色名が並んでいた。上記のカテゴリー分け実験などでも、実験協力者が幼少時にどのようなクレヨンや絵の具を使っていたのかが大きく影響しているように思われる。

次回に続く。