【連載】関係反応と #関係フレーム をどう説明するか(45)専門書、入門書で取り上げられている事例(2)
昨日の続き。
トールネケ(2010、翻訳書2013)[※]では、関係フレームの説明として、「あるグループの成員の1つを、別のグループの成員に対応づける実験」が取り上げられていた。
[※]トールネケ, N.(著)武藤崇・熊野宏昭(監訳). (2013). 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ:言語行動理論・ACT入門. 星和書店【Torneke, N. (2010). Learning RFT: An Introduction to relational frame theory and its clinical applications. New Harbinger Publications. 】
実験は、意味のない図形や無意味綴りを用いた見本合わせ課題の一種であった。ここでは便宜上、図形や綴りを、E、D、Z、F(Fは、E、D、Z以外のいろいろな刺激)としておく。課題では、
- 見本刺激としてE、選択刺激(比較刺激)としてDとFが提示された時は、Dを選べば正解(強化される)。この訓練を繰り返す。
- 次に、見本刺激としてD、選択刺激としてEとF(E、D、Z以外のいろいろな刺激)が提示される。
この2番目の段階で、Eが選ばれる確率が高くなったとすれば、これが相互的内包の証拠となる。
次に、
- 見本刺激としてE、選択刺激としてDとFが提示された時は、Dを選べば正解(強化される)。この訓練を繰り返す。
- 見本刺激としてD、選択刺激としてZとFが提示された時は、Zを選べば正解(強化される)。この訓練を繰り返す。
という訓練を行う。そのあと、
- 見本刺激としてE、選択刺激としてZとFを提示。
- 見本刺激としてZ、選択刺激としてEとFを提示。
これら1.と2.はそれまで一度も訓練を受けたことのない課題であるが、1.ではZ、2.ではEが選ばれる確率が高くなったとすれば、これらが複合的相互的内包の証拠となる。
これらの事例は、関係フレームの説明としてはまことに明瞭であるように見える。但し、厳密に言うと、F(E、D、Z以外のいろいろな刺激)として多種多様な刺激を用いるのか、1つだけの刺激を用いるのかによって、別の影響が結果に反映する恐れがある。なぜなら、
- Fを多種多様に提示した場合、FはE、D、Zと比べると相対的に新奇な刺激となる。もし実験参加者が新奇な刺激より、何度も見かけた刺激のほうを選ぼうとすれば、それでも正解率を上げることができる。
- Fを1種類、あるいは少数種類の刺激として固定してしまうと、当初の訓練ではFを選ばない(Fを避けてそれ以外の刺激のほうを選ぶ)と正解率を上げることができる。
という可能性があるからだ。これを避けるには、もっとたくさんの刺激を、E、D、Zという3つのグループに分けておき、その成員の間で特定の一対一の選択を強化するという方法が考えられる(添え字付きの小文字が1つ1つの無意味な図形や綴りを表すものとする。
- グループE:e1、e2、e3、e4、...en
- グループD:d1、d2、d3、d4、...dn
- グループZ:z1、z2、z3、z4、...zn
その上で、例えば、
- e1を見本刺激、d1とd2が選択刺激の時はd1を選べば正解。
- e2を見本刺激、d1とd2が選択刺激の時はd2を選べば正解。
- e3を見本刺激、d3とd2が選択刺激の時はd3を選べば正解。
というような訓練を行っておき、そのうえでd1、d2、d3などを見本刺激に、e1、e2、e3
などを選択刺激にした時の選ばれ方を見れば、相互的内包の確認ができるだろう(複合的相互的内包についても同様)。
次回に続く。
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