じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 年末年始の帰省中は、タブレットとノートパソコンを持参し、タブレットのテザリング機能によるWi-Fi接続でノートパソコンを使っていた。9日間の日別の使用量は75〜158MBとなっており、1日平均で116MBであった。この接続サービスは月間993円の3ギガプランとなっている。実際に使用するのは外出中だけ(自宅では光)であり、3ギガプランでは毎月余りがでてしまう(3GBまで翌月繰り越し可能)。私の場合、帰省先ではこの程度の通信量で十分であることが確認できた。

2020年1月20日(月)



【小さな話題】「SNS時間を減らし、読書時間を増やす」:あるべきオペラント条件づけとは?

 Twitter経由で、

オペラント条件付けで「SNS時間を減らし、読書時間を増やせるか」検証してみた結果

という記事を拝見した。

 それによれば、
...「オペラント条件づけ」とは、一言で説明すると「アメとムチで行動をコントロールする」というものです。具体的には、「勉強を1時間したら『ご褒美としてコンビニのスイーツ』」「テレビを1時間見たら『ペナルティとしてトイレ掃除』」といったルールを、下の図のように設定していきます。
とされており、今回は、
  • 【増やしたい行動】本を読む
  • 【減らしたい行動】スマートフォンでSNSを見る
というように目標を設定し、
  • 【ご褒美を増やす】本を50ページ読んだら、好きな紅茶を1杯飲んでいい/100ページ読んだら外食していい
  • 【ご褒美を減らす】SNSを30分見たら、甘いもの禁止/SNSを1時間見たら、外食禁止
  • 【ペナルティを増やす】スマホのPWを複雑に/スマホの待ち受け画面を嫌いなアーティストに
  • 【ペナルティを減らす】本を一冊読んだら、早起き1日免除/本を半分読んだら、家事1日免除
などとルールを設定、但し「ルールは5日ごとに変更および破棄ができる」という条項をつけており、結果的に、10日後の時点では、ペナルティ条項はすべて削除され、
  • 【ご褒美を増やす】本を50ページ読んだら、甘いものを食べていい。
  • 【ご褒美を減らす】SNSを30分見たら、甘いもの禁止。
というルールに絞り込まれた。具体的なデータは示されていないが、「オペラント条件付けは非常に効果的であることが実感できました(本を読む習慣も定着してきました)。」と結論されていた。




 以上の記事は一般向けに、オペラント条件づけによるセルフコントロールの手法を分かりやすく紹介したものであり、行動分析学に好意的な内容となっている面では評価できるのだが、実際に上記そっくりのやり方で生活習慣を改善することには大いに問題があり、また、オペラント条件づけの応用について、「オペラント条件づけというのはアメとムチを使って人間を動物のように飼い慣らすものだ。あなたも飼い慣らされてみてはいかがですか?」という誤解を生む恐れがあるように思われた。

 まず、ご褒美やペナルティの設定に問題がある。まず、当初、「本を一冊読んだら、早起き1日免除/本を半分読んだら、家事1日免除」というように設定されていたが、早起きは健康によいし、家事も生活上必要なことであって、これらが罰的に扱われていることは中長期的にみて望ましくない。また、最終的に「本を50ページ読んだら、甘いものを食べていい。/SNSを30分見たら、甘いもの禁止。」とすると、読書習慣が定着すればするほど甘いモノを食べ過ぎて生活習慣病になってしまう恐れがある。




 しかし、もっと本質的と思われる問題点は、「読書は良いこと→増やしたい」、「SNS利用は時間のムダで悪いこと→減らしたい」というように、短絡的な目標設定が行われていることである。
  • 読書については、なぜ時間を増やす必要があるのか、読書量を増やすと何が得られるのか?を明確にする必要がある。その人にとって必要な読書であれば、いずれは、行動内在的の結果(読書それ自体によって獲得される知識やモノの見方、スキルなど)によって自然に強化されるようになるはずであり、「アメ」といった付加的強化はあくまで過渡的に設定されなければならない。
  • SNSについても、なぜ今現在、それに熱中しているのか? つまり何によって強化されているのかを明確にするべきである。その上で、SNSはどういう部分で役に立っているのか(例えば、新たな情報を得たり、他者のコメントを参考にしたりできる点など)、どういう部分が弊害になっているのかを区別する必要がある。SNS利用の時間を一律に減らそうとするのではなく、SNS利用のメリットを生かすように、利用時間の削減ではなく、利用の内容を改善するべきである。





 さらに本質的で重要な問題は、「読書=増やすべき」、「SNS=減らすべき」というように2つの行動を独立的、対立的に捉えているところにある。

 まず、その人がSNSに熱中しているということは、原因はどうあれ、SNS参加行動自体が強化的であることを意味する。であるなら、プレマックの原理の応用として、例えば、

●本を50ページ読んだらSNSに1時間参加

というように、SNS自体を強化子(好子)として活用する方法が考えられる。

 さらに、これは読書の内容にもよるが、ブログやTwitterなどを通じて、その本を読んでこれはスゴいと思ったこと、ここは違うのではないかといった点を発信したり、同じ本を読んでいる人との交流をするといった形で、読書促進のためにSNSを活用することである。私自身も、本を読んだ時は、こういう形で、備忘録やコメントを残すようにしている【アクセスがあるかどうかは全く考慮していないが】。




 ということで、行動分析学を好意的に紹介してくださっている記事にケチをつけてしまった可能性があるが、私は、行動分析学やその応用は、決してアメとムチの原理で行動を変える理論であるとは思っていない。より巨視的、中長期的な視点に立って、種々の日常生活行動を包括的に調整していくための有効な手順を示すものでなければならないと考えている。