【連載】関係反応と #関係フレーム をどう説明するか(57)恣意的に適用された #派生的関係反応(その2)
昨日の続き。
一般に、「恣意的」か「非恣意的」か、ということは、
- 恣意的:
- 人間が約束事として勝手に決める関係のことを「恣意的に確立された関係」と呼ぶ。
- 恣意的(arbitrary)とは「任意の」あるいは「自由な選択によって決まる、世の中の気まぐれ次第の」という意味である。
- 恣意的に適用可能な(arbitrarily applicable)というのは、刺激間の関係性が社会的な慣習で確立されていることを意味する。たとえば、何らかの名前と名づけられたものの関係は完全に恣意的である。【一部の擬声語を除く】
- 非恣意的:
- 物理的性質に依存した関係は「非恣意的な関係」と呼ぶ。
- 非恣意的とは、「固定した、決められた」といった意味。環境の非恣意的な特徴は、見ることができる、触れることができる、匂いを嗅ぐことができるなど、感覚器官を通じて知覚できるような特徴である。
として区別される。しかしながら、昨日も述べたように、当事者(関係反応を発する人)の置かれている状況によっては、本質的には「非恣意的」であっても、実質的には「恣意的」となるケースがあるように見える。例えば、ピンポン球とテニスボールとサッカーボールの大きさの関係はあくまで非恣意的であり、
- ピンポン球とテニスボールを見せられた時にはテニスボールを選ぶ
- テニスボールとサッカーボールを見せられた時にはサッカーボールを選ぶ
という訓練を受けたあとで、ピンポン球とサッカーボールを見せられた時にサッカーボールを(未訓練でも)選ぶという関係反応は、AARRとは言えない。また、目の前にある2つのモノのうち相対的に大きいほうを選ぶという学習は、人間以外の動物でもできることが知られている。
いっぽう、これら3種の球体を見たことが無い人(それらの球体の名前を知らない人)に対して、
- ここに3つのボールがあり、それぞれ、ピンポン球、テニスボール、サッカーボールという名前で呼ばれている。
- ピンポン球よりテニスボールのほうが大きい。
- テニスボールよりサッカーボールのほうが大きい。
というように言葉だけで大きさの違いを教えられた人が、未訓練にもかかわらず「ピンポン球よりサッカーボールのほうが大きい」と判断したとすれば、これはAARRと言ってよいだろう。
昨日取り上げた「速さ」もそうだが、観察可能な現象を比較する場合は、本質的に「非恣意的」であることと、それが語られる場面においても非恣意的であることとは区別する必要がある。
これに対して、人間が約束事として勝手に決める関係の場合は、とことん恣意的と言える。例えば、赤、青、黄のゲーム用コインがあったとして、それらの交換価値を、みな等しいと決めるか、「赤<青<黄」というように決めるのか(「<」は価値の大小を示す)は完全に恣意的である。コインの色のどこを観察したところで、交換価値という特徴を見出すことはできない。
不定期ながら次回に続く。
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