じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 半田山植物園の裏山には少なくとも2株、巨大な葉を広げるムサシアブミがある。巻き尺で測ったところ、幅は90cm近く。なぜこんなに巨大になるのかは不明。半田山植物園の七不思議に加えたいところだ。

2020年5月21日(木)



【小さな話題】映画「今夜、ロマンス劇場で」で疑問に思ったこと

 昨日に続いて、表記の映画(2018年2月公開)の感想。本日は、映画の中のいくつかの「謎」について考察する。

↓↓↓↓↓以下、ネタバレ満載↓↓↓↓↓





 まず、私は、映画やドラマを観るたびに、それらがどのくらいの期間を描いたものなのか気になる癖がある。じっさい、ロミオとジュリエットの恋愛は何日間だったか? とか、「千と千尋の神隠し」で千尋が別世界で過ごしたのは? というように、日数の疑問はネット上で話題になることがある。

 今回の映画の場合は、
  1. 【1960年頃】映画館に美雪が現れてから、「最後に一度だけ、抱きしめて」と別れを告げようとするまでの日数
  2. 【現在(2018年頃)】晩年の牧野健司が、看護師さんと脚本の話をした時から、息をひきとるまでの日数

 このうち、1.については、美雪が出現した翌日、ヒナゲシの咲いた野原を通るシーンがあることから4月頃の出会いであると推測される。その後、2週間ほど経ってから助監督に脚本募集の話が舞い込んでくる。この執筆には相当の日数がかかるはずだと思うが、藤棚のシーンがあることからまだまだ5月上旬であると推測される。さらに雨降り、ホタルや虹のシーンがあることから、6月に至っていることは確認できるが、真夏や秋以降の景色は全く無いことから[]、おおむね、4月から6月梅雨時までの3カ月間として設定されているものと思われる。
追記]そう言えば、牧野と美雪が連想ゲームをしながら歩いていた時、「赤いもの」として、「夕日」、「りんご」、「ポスト」、「バラ」と続いて牧野が「モミジ」と答えたところで美雪が「私の知らないモノを言うのは反則だ。罰としてこの上を歩いてみろ」と、牧野に欄干を歩かせるシーンがある。このことから見て、美雪は秋の景色を知らないものと推測できる。
追記2]栃木・足利での撮影は4月下旬から6月6日であることが確認されている。撮影日程の都合上、紅葉シーンは撮れなかったのかもしれない。

 これに対して、2.の日数はなかなか難しい。まず、病院のシーンの始まりでは牧野健司の病室の窓の外に桜の花が写っており、3月下旬か4月の初めころの季節であると推測される。映画の終わりのほうで「孫」の美雪が面会に来た時もやはり桜の花が咲いていた。また長椅子で2人が脚本の結末の話をする際、ガラス越しに病院の中庭が見えており、ムシトリナデシコと思われるピンクの花が咲いていた。なので、看護師さんとの最初の会話からここまではせいぜい1カ月以内と推測される。しかし私がよく分からなかったのは、病院から、牧野が危篤になっているという電話を受けて、美雪が病院に駆けつけるシーンであり、ここでは窓の外も、屋外も激しく雪が降っているように見えた。この雪は、牧野が息を引き取った翌朝にもまだ降っていた。最初は、雪では無く桜の花吹雪かとも思ったが、そもそも桜の花びらが至るところであのように舞うことはないし、駆けつける時の美雪の服も冬の格好のように見えたのでやはり冬であると推測できる。つまり、晩年の牧野健司のシーンは、4月から12月頃までのかなり長い日数を描いたことになるが、なぜラストが春から秋ではなく冬に延ばしたのか、このあたりはよく分からなかった。
追記]美雪は雪が舞う中、ショールを羽織って病院にかけつけていた。翌朝、病室の椅子の上にはショールが残されており、美雪の姿はどこにも無かった。このショールの効果を出すためには、雪が舞うシーンがどうしても必要だったのかもしれない。

 ということで、この映画はカラフルな自然の情景が描かれているが、紅葉の景色は全く含まれていなかった。紅葉シーズンをラストに持ってこなかったのは、「ラストのラスト」の色彩効果を最大限に高めるという事情があったからかもしれない。




 以上に述べた以外にもいくつか謎が残った。

 まず、最初のほうで、三体のお地蔵さんが出てくるシーンがあるが、これは何かを象徴しているのだろうか。「お転婆姫と三獣士」の中の「三獣士」に繋がっているようにも見えるがよく分からない。

 あと、映画館のオーナーの本多正(柄本明)の人生がイマイチ謎であった。おそらく、本多も映画の中のヒロインに憧れ牧野と同じような体験をしたが、相手の女性が不注意で「ぬくもりに触れてしまった」ために姿を消してしまったということなのかもしれない。

 このほか、ネットで検索したところ、牧野はいつ死んだのか、翌朝にそれが発見されたとしたら看護師さんはもっと驚くはずではないかというような声もあった。私自身は、美雪が牧野のぬくもりに初めて触れて、しだいに透明化して姿を消していく時に、息を引き取ったのだろうと素直に解釈していたが、翌朝の看護師さんの態度はちょっと不自然であったように思う。あの場面は、次のようなシナリオにすれば分かりやすかったと思うのだが、あのままにしておくことには素人の私には及ばない何らかの異図ががあったのかもしれない。
 【美雪がベッドの上で透明化して姿を消したところから】 翌朝、牧野が亡くなっていたことが発見され遺体は霊安室に運ばれていく。病室の後片づけをしていた看護師さんが、机の上の原稿を見つける。開いてみると、結末の書かれた脚本であった。...以下、元の作品に戻る。