じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 朝、郵便局方面に向かう途中、歩道上でゴミ袋の中身が散乱しているところを目撃した。この日は回収曜日ではない。不心得者が曜日を守らずに放置し、カラスが中身を食い散らかしたものと推測される。
 散乱しているゴミの中には、ティッシュペーパーや使用済みマスクが含まれており、もしこの不心得者が新型コロナ感染者であったとすると、私を含めて通行人に感染を拡大させるリスクがある。犯人を見つけ出し、殺人未遂者として逮捕するべきかと思う。


2020年7月28日(火)



【小さな話題】映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

 7月26日にBSテレ東系で放送していた映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を録画再生で観た。

 この映画に興味を持ったのは、どの便だったか忘れたが、海外旅行中、飛行機の中で似たような映画を観た記憶があったからである。但し、その映画は中国語版であり、しかも、着陸までの残り時間が足りなくなって終わりのあたりはスキップしながら観ていたため、結末の展開はよく分からないところがあった。今回ネットで調べたところ、私が観た映画は、「ナミヤ雑貨店の奇蹟 -再生-」という、2017年12月29日に公開された、原作を同一とする別作品であることが分かった。この中国語版で、ナミヤ雑貨店の店主はジャッキー・チェンが演じていたということは全く気づかなかった。

 でもって、今回観た日本版のほうであるが、ナミヤ雑貨店を通じて、1980年に投函された相談の手紙に2012年の若者が回答し、その回答が1980年の相談者の人生を変えてしまい、なおかつ2012年にまで影響を与えてしまった、という大枠は理解できたのだが、もともと失顔症気味で、登場人物の固有名詞を全く覚えられない私にとっては、どこがどう繋がっているのか、1回観ただけでは全く理解できないという状況に陥った。

 その後ネットで、あらすじや、人物相関図などを検索し、どうにかこうにか登場人物全員の繋がりを把握することができたが、やれやれ、私にとっては難解な映画であった。


以下、ネタバレ満載




 もちろん原作を尊重することも大切だろうが、映画の場合は上映時間が限られているので原作のすべての内容を網羅することは難しい。メインのストーリーに限定し、感動場面にスポットを当てるべきかと思う。一例として、
  1. 松岡克郎(魚屋ミュージシャン)が3人組に相談。作品が水原セリに歌い継がれる。
  2. 田村晴美が3人組に相談。回答の指示通りにバブル期を乗り越え、最終的には丸光園の園長になる。
  3. 3人組が自首し、その後、新たな道を進む。
というシンプルなストーリーに限定したなかで登場人物の生きざまをより詳しく描いていただければさらに良かったように思われた。

 いっぽう映画ではカットしてもよかったのではないかと思われる部分としては、
  1. 浪矢雄治(ナミヤ雑貨店店主)と浪矢貴之(息子)とのやりとり。
  2. 皆月暁子(浪矢雄治の元恋人)。かつて駆け落ちの話があったらしいが、映画のストーリー展開には必要ない。丸光園の創設者という設定も付け足し(←この「創設者」という設定は、田村晴美が丸光園を訪れた時に語られるが、私は失顔症気味でしかも固有名詞を覚えられないため、最初は何の話かサッパリ分からなかった。)
  3. 川辺みどりと娘の川辺映子。メインストーリーには関係の無い話。川辺映子は後に水原セリのマネージャーになったそうだが、失顔症気味の私には、セリが舞台から帰る際に映子がマネージャーとして待機していた場面をなかなか確認できなかった。
などを挙げることができるように思う。上記のようにカットしてしまうと、タイトルの「ナミヤ雑貨店」の店主、浪矢雄治の活躍の場が無くなってしまうが、映画ならそれでも良いのではないか。つまり、この映画では、浪矢雄治に代わって3人組が回答者となり、松岡克郎や田村晴美の人生を変えるというストーリーに絞れば、非常に分かりやすい展開になったように思う。

 ところで、田村晴美と3人組のエピソードは、タイムマシンのパラドックスという点から見るとまことに興味深い。田村晴美が起業家として大成功を収めたのは、3人組のアドバイスに従ってバブル期に大儲けをし、かつバブル崩壊の前に手を引いたことにあった。ところが、この3人組は、丸光園の出身であり(←彼らが2012年12月にボランティア?として丸光園を訪れた際に、「将来なりたいもの」の掲示に彼らの名前がついていたことから確認できる)、丸光園は、田村の金銭的支援がなければ経営破綻しており、もしそうなっていれば3人組は別の施設にバラバラに移されていた可能性もあった。しかも、3人組が田村晴美の家に強盗に入り、かつ空き家になっていたナミヤ雑貨店に逃げ込まなければ、30年前の田村晴美の相談に答えることはできなかった。いったい、何が原因で、何が結果なのか?

 なお、冒頭で言及した中国語版(「再生」)では、水原セリのエピソードはカットされ、原作の他の章のエピソードが入っているということだが、寝不足の中で搭乗中に観たせいか、すっかり記憶が消えてしまった。

 バラバラの出来事が時代を超えて繋がり、最後にはなっなんと地球を救うという映画としては、「フィッシュストーリー」(2009年)という映画があった。描かれている時代は1975年、1982年、1999年、2009年、2012年となっており、それぞれがいつの時代なのかをしっかり抑えておかないと何が何だか分からない展開になってしまう映画であった。喫煙シーンが多すぎるという難点はあったが、なかなか印象深い内容であった。但し、「フィッシュストーリー」のほうは、時代間の交信はない。あくまで、いっけん無関係な出来事の繋がり(売れないバンドの曲が、地球滅亡を救う)の面白さを描いたもの。

 元の話題に戻るが、現実に悩みを抱えている人が、何十年後の世界の人に相談を持ちかけることはできない。しかし、人間の悩みは、本質的には過去も現在も未来もそんなに変わるものではない。未来の人に相談することはできないが、先人の書物を紐解けばすでに回答は記されており、そういう意味では、我々は、常に過去の人々と交信できているとも言える。