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【連載】チコちゃんに叱られる!「昆虫が小さい理由」「にらめっこの起源」 昨日に続いて、9月4日に初回放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。 本日は、
まず、2.の「なんで虫は小さいの?」については、私は「昆虫は脊椎動物ではないので骨で体を支えることができないから」だと思っていた。番組によると、これも正解の一部に含まれるが、正しくは「肺も骨もないから」と説明されていた。 番組によれば、昆虫の体は硬い殻(外骨格)に支えられているが、地球の引力の影響で、大きな体を支えきれなくなってしまう。これが1番目の理由。 もう1つの理由は、昆虫は肺ではなく、気管で呼吸している。この呼吸方法では、体が大きくなると全体に酸素が届かなくなってしまうという。なおネットで調べた限りでは、昆虫には心臓と似た器官はあるが血管はない。心臓から出た血液は、体の各所にしみ込んでいくらしい。 この2番目の理由から、酸素濃度の高い環境では昆虫の体が大きくなれる可能性がある。アメリカのアリゾナ州立大学で酸素濃度が1.5倍の環境でトンボを飼育したところ通常より15%大きいトンボが誕生したという。また、今から約3億年前は酸素濃度が1.5倍あり、当時生息していたメガネウラは翅を広げた横幅が約70cmもあったという。なお、メガネウラはトンボに似ているが、正確には「原トンボ目」に分類されており、トンボ目のトンボたちとは区別されているらしい。 このほか番組では、気管呼吸は酸素を全身から吸収できるためパワフルな動きを可能にしていること、また、海の中のエビやカニが大きい理由は、水の浮力で外骨格が支えられためと説明されていた。 ここからは私の感想になるが、昆虫が脊椎動物より小さい理由が上記の2点にあるという点は納得できた。もっとも、昆虫は、空中を飛び回るなど、脊椎動物より素早く動けることで地球環境に適応していると言える。なので、仮に地球環境より酸素濃度が高く、かつ引力が小さい惑星上であっても、脊椎動物が居る限り、巨大昆虫がそれらと共存するのは難しいように思われる。例えば、
もう1つ、海中に棲む巨大なカニやエビの件だが、水の浮力で体が支えられるという説明は分かったが、大きな体なのに海中でどうやって酸素を取り込めるのかについては特に説明が無かった。実際には、カニやエビはエラ呼吸をしており、昆虫の気管呼吸とは異なっているようであった。 最後の3.の「にらめっこ」の由来だが、番組では「戦に勝つための訓練」と説明された。番組によれば、にらめっこは平安時代の終わり頃に、「目競(めくらべ)」として始まった。平清盛が骸骨と目競をして退治したというのが最も古い記録であるらしい。当時の戦では、目をそらさず敵を正面から見る必要があり、そのための訓練として「にらめっこ」が始まったという。その後、鎌倉時代には、相手を笑わせる遊びとして一般庶民にも広まった。さらに江戸時代になると、「だるまさん、だるまさん」のわらべうたが誕生し、子どもの遊びとして定着した。なお、海外では、ブラジルでも似たような遊びがあると紹介されていた。 ここからは私の感想になるが、この番組ではしばしば、庶民の慣習や子どもの遊びの由来を、昔の上流階級や宗教上の儀式、逸話などに求める説明がなされている。しかし何度か書いているように、何かの慣習が常に、上流階級から庶民に広がったというように捉えることには大いに疑問が残る。確かに、過去の文書を紐解けば、いついつの時代に上流階級でこういうことが行われていたという記録が残っているだろうが、その時代やそれ以前に一般庶民が何をしていたのかということは文書には記録されにくい。むしろ素朴な慣習や民間信仰のようなものが先にあって、上流階級がそれをヒントに儀式として定着させたということも少なくないように思われる。 今回の「にらめっこ」についても、武士の訓練とは独立して、庶民の間で遊びが流行していた可能性は否定できない。但しそれらが上流階級の文書や絵巻に記録されているかどうかは分からない。一般庶民の慣習の由来を文書だけに頼って考察することは、危険が伴うように思う(といって、岩絵に描かれていたり、遺跡から遊具が発見されない限りは、なかなか分析は難しそう。) |