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YouTubeに公開しているセミの鳴き声の動画を教材に使いたいという要望があったので、動画ファイルを直接添付ファイルで送ろうとしたが、サイズが大きすぎて困難であることが分かった。 以前から大サイズのファイルは、YahooBoxか、ジャストシステムのインターネットディスクを通じて送っていたのだが、YahooBoxのほうは実質的にサービス打ち切り、ジャストシステムのほうは私が無料で利用できる容量は130MBに過ぎず、いちばんサイズの小さいミンミンゼミの動画だけで75MBを占めてしまってパンク。 そこで、少し前に大量のファイルを受け取る時に送信元が利用していた某ファイル転送サービスを使ってみることにした。アップロードもダウンロードもそれほど時間がかからず、しかも無料というのがありがたい。 もっとも、気になるのがセキュリティの問題である。
なおこちらの記事によれば、アップロードの履歴が残らない、送信が保障されない、データが盗まれたり改ざんされる恐れがある、などのリスクはあるようだ。ま、今回送信した「セミの鳴き声」の動画は、別段、流出しても困るものではないが。 あと、私が利用したサービスの場合、正規のダウンロードボタンの周辺に、転送サービスとは全く無関係の広告窓が配置され、その中には大文字で「ダウンロード」と書かれた詐欺まがいの広告もあった。利用する際には、どれが本物かを見分ける必要がある。 |
【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(4)単一事例の効果検証と真の目的 昨日の日記で、 ●ラジオ体操集会になかなか参加しなかった子どもに、参加するたびにシールを与えたところ、毎朝参加するようになった。 という仮想の事例を挙げた。本題から外れるが、この際、こういう日常行動における効果検証について、私なりの考えを述べておきたいと思う。 上記の事例で強化の効果を検証する方法としては、反転法が知られている。
ここまでのロジックはそれで良いと思うのだが、そもそも、これって何のための効果検証なのだろうか? 素朴に考えると、ここで確認できたのは、単に、 ▲この子どもにとって、シールは強化子(好子)として機能した。 だけであるように見えるが、そんなことが分かっても、大した意味はない(様々な日常行動の改善のためにシール貼りが有効である可能性を示したという有用性は無いとはいえないが)。 では、上記の事例で導き出された真の結論は何かと言えば、 ●この子どもにおいて、(付加的な)正の強化という方法で、ラジオ体操参加行動の増加・継続を達成することができた。 ということになるのではないかと私は思う。要するに、ある日常行動を定着させるために、叱責や根性論ではなくて、正の強化という方法が有効であったことを示せたという点に情報的価値があるのだ。反転法を行ったのは、それが本当に正の強化であったという証拠を示すためである【「シールが強化子(好子)であった」という証拠を残すためではない】。 さて、ここでもう1つ問題にある。上記の介入計画では、第2介入期で参加行動が継続されればメデタシメデタシになるが、それではいつまで経っても、シール目当ての参加に終わってしまう。参加行動が十分に定着した時点では、シールではなく、ラジオ体操に参加すること自体がもたらす強化子(好子)、つまり自然随伴性によって継続されていくような「自走への切り替え」が求められる。具体的には、「朝の清々しい環境に接する」、「参加者同士の交流」、「ラジオ体操自体や、会場までのウォーキングがもたらす健康増進」などが自然に随伴する強化子(好子)となりうる。 また、「ラジオ体操参加行動」は孤立した標的行動ではない。さまざまな日常生活行動のバランスの中で、ラジオ体操に参加することがQOL向上にどう役だったのか(例えば、早起きすることで遅刻しなくなった、朝食をとれるようになったなど)も含めて効果検証するべきであろう。 少し前に、どこかで「トイレットペーパーを要求するマンドの確立」という話題を耳にしたことがあった。確かに、本来トイレットペーパーは(日本であれば)トイレに備え付けて置くべきであり、トイレに行くたびに要求するものではない。しかし、とにかく、ある種のマンドが形成されることが般化し、自分に必要なさまざまな事物を求められるようになれば、その人のQOLの向上に繋がる。 私自身は、教育や臨床分野の実践経験が乏しいため、現状がどうなっているのかは十分に把握できていないが、自立などに必要な行動を強化するという実践研究においては、単に、標的行動が強化できたのかどうかを断片的に捉えるのではなくて、 ●その標的行動が強化されたことによって、日常諸行動全体はどう変わったのか、それによりどういうQOL向上が見られたのか? を巨視的に評価する必要がある。そのためには、最初のベースライン段階から、標的行動以外の諸行動もしっかり把握しておく必要がある。 同じことは高齢者のリハビリについても言える。ウォーキングが体に良いからといって、そのために多大な時間を費やしてしまうと、当事者のQOLはかえって低下する恐れがある。支援する側はしばしば「この行動は望ましい行動であり増やすべきだ」という固定観念に囚われがちであるが、本当に望ましい行動であったかどうかは、当事者のQOLへの貢献度として事後的に検証されなければならない。 不定期ながら、次回に続く。 |