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ウォーキングコース沿いの幼稚園の園庭。今年の2月に園庭が人工芝で覆われたが、今度は盛夏を前に、遮光ネットが張られていた。これで紫外線を遮るとともに熱中症の予防にもなると思われるが、私が幼稚園に通っていた時のような泥んこ遊びはできそうもない。 |
【連載】ヒューマニエンス 「“天才” ひらめきのミステリー」その1 直感の役割 6月3日にNHKのBSPで初回放送された、 ヒューマニエンス〜40億年のたくらみ〜「“天才” ひらめきのミステリー」 についての感想と考察。 まずは放送リストの再確認。この番組は2020年10月に開始され、6月28日の時点で、
そろそろネタ切れではないかという気がしないでもないが、まだまだ興味深い話題は尽きない。但し、このところ再放送も増えているようにも思われる。 今回の番組の前半では、将棋の田中寅彦九段と、理化学研究所・特別顧問の田中啓治先生が出演された。田中寅彦九段が挙げた将棋の天才は、羽生善治九段と藤井聡太・二冠であったが、羽生九段が著書で「直感の七割は正しい」と述べていることとの関連でまずは、直感の役割が取り上げられた。 まず紹介されたのはイスラエルの心理学者マリウス・アシャーによる2012年の実験であった。ネットで検索したところ、 Konstantinos Tsetsos, Nick Chater, and Marius Usher. (2012). Salience driven value integration explains decision biases and preference reversal. Proc Natl Acad Sci U S A., 109, 9659-9664. という論文として公開されていることが分かった。 番組で紹介された実験は、画面の左右に、「60 42」、「52 59」、...というように2ケタの数字が15秒間のうちに次々と提示され、左右それぞれの合計値のどちらが大きいかを判断してもらうという内容であった。実際の合計値は左側が1150、右側が1140で殆ど変わらないが、実験参加者の90%は「左のほうが多い」と正解できたという。 原典を読んでいないので何とも言えないところもあるが、私のこれまでの知識から言えば、この種の判断はカーネマンやトベルスキーらにより体系化された、 Kahneman, D., Slovic, P., & Tversky, A. (1982). Judgment Under Uncertainty: Heuristics and Biases. New York: Cambridge University Press. で説明可能であるように思われる【実際、Usherの論文にもいくつか引用されていた】。 要するに、上掲の実験では、参加者は暗算で合計値を出すことはできない。そういう意味では「直感で判断した」と解釈することはできるのだが、その直感がどういう仕組なのかは別に分析する必要がある。今回の番組ではその仕組は脳の働きと結びつけて説明されていたが、脳のどの部分が関与しているかが確認できたからといって「直感」の本質は分からない。けっきょく「直感」とは何か?という問題は、 ●【きわめて短い時間に判断が求められるという意味での】直観的判断はどのような性質を持つか。どういう要因が判断に影響を与えるか。 という形で分析するほかはないのではないかと思う。 次回に続く。 |