Copyright(C)長谷川芳典 |
|
7月22日時点での東京都の新型コロナ新規感染確認者数の推移と年代別の内訳。NHKニュースによる。 |
【小さな話題】新型コロナに関する素朴な疑問「ワクチン接種者と未接種者に分けて集計すべき」「ワクチン接種証明よりも抗体検査」「時代遅れで非人道的なプラセボ対照治験」 7月23日は東京オリンピックの開催日であるが、お祭りモード一色というわけにはいかないようだ。この日の朝6時のNHKニュースでも、トップの話題は新型コロナであり、東京都で1979人の感染が確認され、急拡大に歯止めがかからないこと、オリンピック参加で来日した選手の感染も相次いでいること、西浦博教授のシミュレーションによれば来月上旬には東京の新規感染者数が1日3000人を超える恐れのあることなどが報じられた【朝7時のニュースはオリンピックモードに切り替えられていた】。 最近のコロナ関連報道でまず疑問に思うのは、なぜ、ワクチン接種済の人と、未接種の人に分けて新規感染者数(正確には新規感染確認者数)を集計しないのかという点である。重症者や死者の人数についても同様である。上掲のグラフ下段の年代別内訳を見ると、感染者が最も多いのは20歳代であり、10歳未満から50歳代までの年代で全体の95%を占めているということで、60歳代以上が5%に過ぎないというのはおそらくワクチンの効果によるものと推測できる。もっとも、その5%の高齢者が、ワクチンを接種した上で感染したのか、何らかの事情で未接種であったのかが分かれば、今後の接種方針や普及活動への有益な情報になるはずである。 このほか、さらに伝えて欲しい情報としては、ワクチン接種者のうちどのくらいの数の人が感染したのか、特に、デルタ株に感染したのかという点である。デルタ株に対して既存のワクチンがあまり効かないということであれば別途新たなワクチンを開発する必要があるし、場合によっては、ファイザーやモデルナのワクチンの3回目の接種を行うという必要もある(但し、ワクチン2回接種者は、その後感染しても軽症で終わるという確かな証拠が得られたとすれば、そもまま放置してもよく、その場合、いちいち感染者数の急拡大に怯える必要はない。) 素朴な疑問の2番目は、なぜ抗体検査をもっと重視しないのかという点だ。専門的なことはよく分からないが、新型コロナウイルスの感染や重症化を防ぐ抗体が獲得できたかどうかを測定できる検査はすでに開発・実施されている。しかし、外国への旅行などで求められるのは抗体検査の結果ではなくてワクチン接種証明が主流であるようだ。もちろんワクチンを2回も打てばそれなりに感染しにくくなるとは思うが、個体差は大きい。重要なことはワクチンを打ったかどうかではなく、ワクチンによってちゃんと抗体ができているのかどうかの証明でないのか? なおこの2番目に関連するが、ワクチン開発の最終段階の臨床試験(治験)では、被験者を対照群と治療群とに分け、対照群にはプラセボ(偽薬)を割り付けるという時代遅れの方法が採用されているという。今回の新型コロナで言えば、実験群には開発中ワクチン、対照群にはプラセボを接種し、その後の感染率の有意差を調べるというやり方であるようだが、これでは対照群の被験者はたまったものではない。ま、新型コロナの致死率はそれほど多くないが、例えば癌の特効薬の有効性を確認する治験であると、対照群に割り当てられた被験者が早く死ぬことがその特効薬の有効性を確認する証拠となる。特効薬が承認されたあとの患者さんにとってはありがたい話だが、たまたま対照群に割り当てられたために、その薬を服用していれば長生きできたかもしれないのにそれが叶わずに人生を奪われたという人はたまったものではない。もちろん、治験段階では、その薬は治療には役立たないという可能性もあるが、ダメ元でもいいから有効性にチャレンジしてみたいと思うのが心情だ。 今回のワクチン開発について言えば、別段、プラセボ対照試験を行わなくても、
なお、最近のニュースでは、ワクチンの大量接種がすでに実施されている状況のもとでは、大規模なプラセボ対照治験を行うこと自体が困難となっており、いま述べたような中和抗体の確認だけで早期の緊急承認に踏み切るという方法が受け入れられつつあると聞いている。 [※追記] 「国産ワクチン」開発はどこまで進んだ? 何が“壁”なのか?(2021年7月21日16時27分配信)という記事の中に関連する情報が記されていた。
|