Copyright(C)長谷川芳典 |
|
空地に繁茂するカナムグラ。ウィキペディアによると、「好窒素的な傾向が強く、畜産や農業、家庭排水などの影響により富栄養化した土壌などでより繁殖し、優占種となる傾向が強い」と記されているが、確かにこの場所は草刈り作業で刈り取った雑草や秋に掃き集められた落ち葉の集積所となっているため、繁茂しやすい条件が整っているようだ。 |
【連載】ヒューマニエンス「“腸内細菌” 見えない支配者たち」 その3 親から子への継承 昨日に続いて、NHK-BSPで放送された、 ヒューマニエンス 「“腸内細菌” 見えない支配者たち」【初回放送2021年7月15日】 についての備忘録と感想。 番組では続いて、「腸内細菌 はるかなる旅」という興味深い話題が取り上げられた。最近は地球上いたるところに生息しており、中には雨粒の原因になるものさえある(←「又吉直樹のヘウレーカ!」で聞いたことがあった)。最近は地球上で最初に誕生した生命であり、その後、好気性細菌と嫌気性細菌に分かれた。嫌気性細菌は、海の底、岩石の中、海底火山の火口付近などで子孫を増やしたが、もう1つ、動物の腸内が生息場所になるという。動物の消化管は、胃の幽門で仕切られ、腸に至ると僅かに残る好気性細菌が酸素を消費し、ついには無酸素の状態になるという。しかも腸内では自動的に栄養源が供給されるため、嫌気性細菌の絶好の住処となった。 今回の番組で初めて知ったが、大腸の内部は無酸素状態であり、たった一層の上皮細胞によって、血管からの酸素の補給を遮断し、腸内細菌を守っているという。いっぽう、上皮細胞のエネルギー源は腸内細菌が作っており、上皮細胞と腸内細菌はwinwinの関係になっている。 このことから推論できるように、嫌気性細菌は、口を通って補給されることはまずない(もちろん、サルモネラ菌やボツリヌス菌のように重篤な感染症が起こる場合もある)。口から補給できないとすると、腸内細菌は一代限りで消滅してしまう。そうではなくて親から子へはどうやって引き継がれていくのだろうか。 金井先生によれば、ヒトの赤ちゃんは、胎内では無菌状態にあるが、妊婦は出産直前になると乳酸菌を猛烈に殖やす。赤ちゃんは産道を通る際にこれに触れて、母親の腸内細菌が子に移る。このことから、子どもは母親と似た腸内細菌を保有するようになる、と説明された。 牛田一成先生(中部大学)によれば、パンダなどいくつかの動物は離乳の際に親の糞を食べる。この食糞自体は異常行動でも何でもなく、腸内細菌の移動を助けているという。 さらに、ヒトの場合、母乳にはたくさんのオリゴ糖が含まれているが、オリゴ糖はヒトでは消化できず、腸内細菌を育てる食べ物になっている。こうして、生まれてから3年以内に、子どもは母親と似た腸内細菌が定着されるという。 このほか、赤ちゃんは生まれた病院内の環境、生まれたあとに色々なモノを舐めたりすることでも腸内細菌を獲得する。獲得できる有効期間は生まれてから3年以内、もしかすると1年以内と考えられており、その後に取り戻すことは難しいという。 ここからは私の感想になるが、初めての子育ての際は、子どもが身の回りのモノを舐めたり触ったりしないようにずいぶんと気をつかったことがあった。もちろん衛生管理は必要であろうが、あまり気を使いすぎるとかえって病弱になってしまう恐れがある。これは、自然免疫力を弱めるということに加えて、腸内細菌の獲得を妨げる恐れもあるのかもしれない。番組でも言及されていたが、コロナ禍のもとではマスク着用や手指の消毒が推奨されており、じっさい私も、昨年1月以来、一度も風邪をひいたことがないのだが、こういう無菌化が何年も続くと、幼児の抗体獲得や腸内細菌の保有には悪影響を及ぼす恐れがあるようにも思う。 なお、上記のところで「嫌気性細菌は、口を通って補給されることはまずない」と述べたが、3歳頃までの期間では、幼児は口から腸内細菌を獲得している言われていて、矛盾しているように思われた。推測してみるに、腸内細菌自体は大人になっても口から入り込んでいるが、おそらく、3歳頃までの間に定住した腸内細菌が確固としたバランスを保っている中では、新参者の腸内細菌には居場所は与えられずに体外に排泄されてしまうのではないかと考えられる。それゆえ、ビフィズス菌が足りないからと言ってビフィズス菌入りのヨーグルトを大量に摂取しても、その人の腸内細菌のバランスを変えることは難しい。確かこの話は、別番組の「ガッテン」でも取り上げられたことがあった。もちろん、口から入った腸内細菌は一定程度は腸内まで届くだろうが、そのことと、そういう新参者が定住して腸内細菌のバランスを大幅に修正できるかどうかという問題は別であるように思う。 次回に続く。 |