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このところ、国際宇宙ステーション(ISS)が見えやすい日が続いている。こちらによれば、8月2日は、「20 時 59 分ごろ西北西の低い空で見え始め, 21 時 2 分ごろ 西南西の中ぐらいの高さの空( 49.9 °) で地球の影に入り見えなくなる」と予報されており、じっさい、西北西の空に現れたISSがアークトゥルスの近くを通過し、高く昇ったところで地球の影に入って光を失った。突然消える瞬間、地球の影を実感することができた。岡山では晴れていれば、8月3日と4日の夜にも好条件で観察ができる見込み。 |
【連載】ヒューマニエンス「“腸内細菌” ヒトを飛躍させる生命体」その1 ベイロネラ・アティピカ 7月22日に初回放送された、NHK「ヒューマニエンス」、 「“腸内細菌” ヒトを飛躍させる生命体」 の備忘録と感想。なおこの回は、7月15日に初回放送された「“腸内細菌” 見えない支配者たち」との2回構成となっており、前回では「ヒトは腸内細菌に操られている」という観点であったのに対して、今回は人間の側から、腸内細菌をヒトのために利用する最新研究が取り上げられた。 最初に取り上げられたのは、東京都中央区のBeyond BioLAB TOKYOの一角で進められているアスリートの腸内細菌に関する研究であった。このラボにはアスリート1500検体ほどを保有し、アスリートに有利な腸内細菌を分析しているという。その結果、元オリンピック選手の便の中から新種のビフィズス菌を発見したという。 上記のラボとは別の研究であるが、2019年に発表された、 Scheiman, et al., (2019).Meta’omic analysis of elite athletes identifies a performance-enhancing microbe that functions via lactate metabolism. Nature Medicine, 25, 1104-1109. という研究【無料で閲覧可能】では、ボストンマラソン参加者のうち好タイムを出した選手の便には、ベイロネラ・アティピカが多く含まれていたという【こちらに解説記事あり】。ベイロネラ・アティピカを無菌マウスに移植したところ、それを持っていないマウスに比べて13%長く走ることができたという。森田英利先生(岡山大学)によれば、長距離の競走ではエネルギー源である糖が消費されて筋肉の中に乳酸が溜まるが、腸内に移動した乳酸の一部が腸内のベイロネラ・アティピカによってプロピオン酸が放出され、これが肝臓で糖に変換されて再びエネルギー源になるという。森田先生によれば、腸内フローラは、このほか、世界レベルの大会などに参加した時のプレッシャーやストレスを和らげる働きをしているとのことであった。 ここまでのところでよく分からなかったのは、筋肉疲労で蓄積されるという乳酸がベイロネラ・アティピカと肝臓の働きでエネルギー源になるというのであれば、ヨーグルトを摂取した時の乳酸も、同様のエネルギー源になる可能性があるはずだが、そういう研究もあるのだろうか。 なお、念のためウィキペディアをチェックしたところ、ヨーグルトの乳酸菌については以下のような記述があった。 乳酸菌は通常、腸内細菌として棲息しているが、ヨーグルトの乳酸菌は、腸内定着することはできない。ただし、その代謝物などが腸内のウェルシュ菌(Clostridium)などを減少させ、Bifidobactoriumなどの在来乳酸菌を増殖させるという整腸作用をもつ。結果として、腸内細菌叢中のウェルシュ菌などの比率の低下と産生される物質を減少させ、腸管免疫系を活性化させるとされている。乳酸菌の耐酸性には差違がありヨーグルトでよく利用されている「ブルガリア株」は胃酸で不活化(死滅)する。また、生存し胃を通過したとしても小腸内で胆汁酸により不活化(死滅)するため大腸内に定着はしないが、その菌体や代謝産物が腸内で有効に働くとされる。一方、ビフィズス菌もヨーグルトで利用されるが、胃酸、胆汁酸で不活化(死滅)せず、大腸内で定着する性質を有する[12]。定常的に摂食することで乳清由来乳酸による腸内環境が弱酸性(pH5.3から)化し、糞便菌叢の胆汁酸(弱アルカリ:pH8.2から)に耐性があるクロストリジウム属(Clostridium)株の生育を減少させ、腐敗産物(アンモニア、フェノール、p-クレゾール、インドール、スカトールなど)生成量を低減させると報告されているが、詳細メカニズムは解明されていない。私自身はヨーグルトの大量摂取者であるが、ヨーグルトを摂取したことが疲労回復に繋がるという実感はない。おそらく私の腸内にはベイロネラ・アティピカは定住していないものと思われる。 次回に続く。 |