【小さな話題】最近視た生物系番組 「トウキョウトガリネズミ」、「奄美・沖縄の森の多様性」
最近観た生物系番組の備忘録と感想。
- 【5月30日放送、NHK総合】『ダーウィンが来た!「虫と激闘!謎のミクロ珍獣」
1円玉2枚の重さしかないトウキョウトガリネズミの話題。名前に「トウキョウ」がついているものの、生息地は北海道。また「ネズミ」がついているがネズミではなくモグラの仲間ということだ。ウィキペディアにも記されているように、胆振管内鵡川町(現:勇払郡むかわ町)周辺で新種として1903年に発見されたが、発見者であるホーカーが標本ラベルにYezo(蝦夷)と書くべきところを誤ってYedo(江戸)と表記してしまったのが名前の由来となっているという。
軽量のため4時間何も食べないと餓死してしまうというが、冬眠はしないらしい。興味深いのは、唾液に体をマヒさせる毒が含まれているということ。これにより、獲物をマヒさせておいて非常食を蓄える時にも有用だという。番組でも紹介されていたように、毒を使う動物にはコモドオオトカゲ、スローロリス、カモノハシなどがいる【番組では紹介されていないが、もちろん各種の毒蛇もいる】。スローロリスは、前脚からでる液体を唾液とまぜて体に塗ることで捕食者から身を守る。カモノハシの毒の強さは哺乳類(有袋類を含む?)最強と言われるが、毒を持っているのはオスだけで、メスをめぐる争いの武器として使われるという。
番組の後半では、トウキョウトガリネズミの繁殖に関する研究が紹介された。トウキョウトガリネズミの赤ちゃんを見た人は誰も居ないと言われるほど謎につつまれている。番組では体重が急増、その後急減した個体の出産を撮影する試みがなされたが、残念ながら妊娠していなかったようだ。急激な体重変化は、体の中に脂肪を蓄えている可能性を示唆した。冬眠しないと言われている点についても、厳冬期をどう乗り越えているのかについても研究が進められているという。
- 【7月11日放送、NHK総合】『ダーウィンが来た!「世界自然遺産へ 奄美・沖縄 豊かな森の秘密」/【7月18日放送、NHK-Eテレ『サイエンスZERO 「「“やんばる”世界遺産へ 奇跡の森になったワケ」
枯葉を土に返すミミズ、強風で大木を倒して植物の多様性を支える台風の意外な役割が興味深かった。
やんばるの森の多くは戦後になってからできた二次林であるという。にも関わらずこれだけの多様性が維持されているところが興味深い。多様性の一因は、多くの生き物が雑食性であるためと指摘されていた。例えばヤンバルクイナは昆虫から果物まで何でも食べる。ノグチゲラのメスは樹上の木の実やウロにいる虫を食べるが、オスは地面を掘って虫などを捕まえる。雑食性であり、食べ物の種類を棲み分けることで多くの種類の動物が共存できる。また、通常、自然界ではピラミッド型の食物連鎖が形成されるが、やんばるの森では、高層ビル的な構成になっており、Aという種類の成体がBという種類の子どもを食べることがあるいっぽう、Bが成体になると今度はAの子どもを食べることもあるという。
番組の終わりのところでは、世界自然遺産に選ばれることと観光地化することの問題、自然環境の健全さと動物の健康と人間の健康は1つであるという「One Health」の考えが強調された。
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