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【連載】こころの時代〜宗教・人生〜「“ノアの箱舟”をつくる人」その1 8月22日(日)の朝5時から放送された表記の番組についての感想と考察。 タイトルから、キリスト教の話かと思ったりしたが、内容は全く異なっており、札幌・円山動物園動物専門員、本田直也さんの話であった。「ノアの箱舟」というのは、絶滅危惧種の両生類・爬虫類の保護・繁殖という意味であった。 円山動物園を一番最後に訪れたのは2018年の10月であり、その時の記録は、以下の楽天版にある。
番組によれば、本田さんは子どもの頃から生き物に強い興味を示し、ヘビ、カメ、トカゲ、サンショウウオ、イグアナなど、さまざまな爬虫類・両生類の飼育を始めた。自宅の四畳半の個室は、2段ベッドの上段以外はすべてケージが並べられており、冬は動物の冬眠に合わせて3℃で過ごしたという。お兄さんが語られたところによれば、ある時ヘビが逃げ出して室内で鎌首をもたげてシャーシャー音を出していたというエピソードもあった。高校卒業後、本田さんは迷うこと無く円山動物園を就職先に選んだ。 本田さんは、生き物の飼育だけでなく、繁殖に強い興味を持っておられる。今では両生類・爬虫類の繁殖の第一人者と言われており、アオホソオオトカゲ、ヤドクガエルなどの人工繁殖の実績がある。 番組の初めのあたりでは、本田さんが初めて人工繁殖に成功したヨウスコウワニの珍しい習性が紹介された。このワニたちには冬の4ヶ月間は餌を与えず冬眠を再現させる。その上で展示場のガラスをドンドン叩くと求愛のスイッチが入り、オスのワニが「ゲェーッ」というようなゲップのような声を出す。するとメスが、もう少し大きな音で「ガォーッ」というように呼応する。こうした季節の変化と求愛の声がセットになって繁殖できる状態に達するという。こうして今回、ワニの鳴き声を初めて聞くことができた。 また、ハコガメの繁殖では、生息地の環境に合わせて乾期から雨期へ変化を再現するために水をかけてやったり、土壌を現地に合わせたり、という工夫をしている。それでもなお、コウヒロナガクビガメのように産卵から孵化に至る条件が分かっていない種類もあるという。 飼育と繁殖について本田さんは、飼育欲というのは、生命というのを身近に置いておきたい、自然を再現しておきたいというもので誰しも持っているのではないかというように語られた。いっぽう繁殖については、1匹の飼育では魅力を感じないが、ペアになると飼育したい、種としてのサイクルを間近で自分で環境を作り観察したい、という欲が子どもの頃からあったと述べておられた。【←いずれも長谷川の聞き取り・要約によるため、文言は不確か】 ここからは私の感想になるが、私自身も日々、植物や昆虫などの生き物に注意を向けながらウォーキングをしており、家の中にも観葉植物がいろいろあり、常に、自分自身と生き物を結びつけながら生活している。最近は隠居生活がますます徹底し、妻を除けば、他の誰とも喋らずに1日を過ごすこともあるが、別段それで孤独を感じたことはない。しかし、身の回りから植物が全く無くなってしまったらさぞかし寂しくなるのではないかという気もする。 もっとも、私の場合、爬虫類や両生類に対しては、あまり興味を示すことは無かった。番組でも言及されていたが、これらの動物はもともと人間とは無関係に生きており、犬や猫のように人になつくことはない。もっとも、時折、話題になることがあるが、世間には、人になつかない動物を好んで飼育する人もいる。同じ動物好きでも、何が好みを分けているのかよく分からないところがある。なお、番組によれば、本田さんの自宅には、犬1頭、猫6頭、ヘビやトカゲが飼育されており、人になつくかどうかということは、飼育する動物の決め手にはなっていないように見えた。 次回に続く。 |