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10月9日の岡山は、最高気温が30.7℃まで上がった。気象庁統計によれば、これは観測史上6位の高温となる。この高温傾向は10月に入ってからずっと続いており、9日間で4回も真夏日を記録している。 |
【連載】ヒューマニエンス「“快楽” ドーパミンという天使と悪魔」その11 新しい環境へのチャレンジとドーパミン量 昨日に続いて、9月9日に初回放送された表記の話題についての感想と考察。 番組の終わりのあたりでは、「ドーパミンに導かれた人類」と題して、ドーパミンがグレートジャーニーに影響を与えた可能性が指摘された。 河田雅圭先生(東北大学)によれば、人類の祖先がアフリカから各地に移動する際、アミノ酸配列の136番目にあったTがIに変化する人が現れた。Iに置きかわると、「ドーパミンなどの放出が多く不安をあまり感じない性格になるという。「不安傾向が少ないと新しい環境にチャレンジして広がっていきやすい。それに伴って、不安傾向を感じにくい遺伝子が増えていった」と説明された。なお、この論文は以下から無料で閲覧できる。 ●Sato,D.X. & Kawata, M. (2018).Positive and balancing selection on SLC18A1 gene associated with psychiatric disorders and human-unique personality traits. Evolution Letters, 21, 499-510. 現在アフリカに住む人たちは不安を感じやすいタイプが圧倒的多数を占め、不安を感じにくいタイプは1割にも満たない。ところが不安を感じにくいタイプの比率は、ユーラシア大陸では1/3まで増加。さらにアメリカ大陸では半数近く、もしくはそれ以上まで増加したという。 山田真希子先生(量子科学技術研究開発機構)の研究によれば、日本人を対象に、まずは脳のPET画像を使って、普段のドーパミン量が多い人と少ない人を推定。その人たちに、自己評価アンケートを実施したところ、自己評価の高い人には普段からドーパミンが多くでている傾向のわることが分かったという。これについて山田先生は「(ドーパミンの量が多いと)自分をいいようにとらえることで、何かいいことが起こるかもしれないから頑張ろうとか、ちょっと危険なことで頑張ってやろうとか、そういったように前に進む動機になっいる。」と指摘された。これらの知見から、ドーパミンの多く出ている人は自分の力を信じ、新たな土地に挑んでいった、と説明された。 ここからは私の意見・感想になるが、ドーパミン放出量はグレートジャーニーに旅立つ一因にはなったかもしれないが、どの程度影響を与えたのかについては精査する必要があるように思う。なぜなら、これまでと異なる気温、湿度、食物のもとでは、体力や免疫力も必要であるし、芋類からアミノ酸を形成する腸内細菌が必要になってくる場合もある。チャレンジ精神だけでグレートジャーニーが成功するとは思えない。 それと、山田先生の自己評定の研究であるが、これは、調査協力者それぞれがまず平均的な人という基準を想定し、自分自身がその平均値からどれだけ逸脱しているのかを線分上にプロットするという方法がとられていた。自己評価項目には「ユーモアがある」、「想像力に富む」、「正直な」、「社交的な」、「親切な」など60項目であったという。もっとも、これはあくまで主観的評価に過ぎず、そのことだけで頑張れるわけでもないように思う。それぞれの人が実際に新しいことに挑戦しているのかどうかを具体的に聞き出したほうがよいのではないか(その場合、「新しいことにチャレンジしている」と答えた人のほうが前向きに進んでいる、というのはトートロジーになってしまうが、ドーパミン量との相関は得られるかもしれない)。 次回に続く。 |