Copyright(C)長谷川芳典 |
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2月28日の朝はよく晴れ、南東の空に月齢26.7の月と金星が輝いているところが見えた。写真には写っていないが、火星も見えていた。肉眼では確認できなかったが、水星と土星も地平線の近くに見えていたはずだ。 |
【連載】サイエンスZERO「月が教えてくれる!? 地球と生命“共進化”の謎」その1 1月23日に初回放送された表記の番組を録画再生で視た。どう見ても関係なさそうな月のクレーターの生成時期についての研究が、8億年前の地球上での多細胞動物の大進化の謎を解くかもしれないという、発想の素晴らしさを印象づける内容であった。 「かぐや」の超精細画像を活用した月のクレーターについての研究は以前にも別の番組で紹介されたところがあったが、月の上での出来事と、そこから384400 kmも離れた地球上の出来事に関係があるとは普通は思いつかない。しかし、もしある時期に月面に多数のクレーターができたとすると、同じ時期には地球上にもたくさんの隕石が落下すると推定される。もし特別な元素が隕石に含まれていたとすると、それらが落下することで地球上でもその元素の比率が高まることになる。その元素が多細胞動物の進化に有用であったとすれば、月のクレーターと生物進化は大いに関係があるということになる。 放送の前半では、まず、生命進化のあらましが概説された。 それによれば、46億年前に地球誕生した後、生命は40億年前になって出現した。しかし、最初に出現したのは単細胞動物であり、39億年前の地層から見つかった化石化した生物は、おそらくメタン生成菌か、鉄を代謝に使った生物であったと推測されている。いっぽう多細胞動物が出現したのは8〜6億年前であって、かなりの年月を必要としている。 単細胞動物は分裂しても同じ形のものが生まれるだけであるが、多細胞動物では細胞の機能が分化していく。原始的なものとし、骨片細胞、襟細胞などが紹介された。 単細胞生物が最初に誕生した40億年前のあと、その後30億年前〜20億年前のあたりでは、地球上の酸素濃度に大きな変化が生じた。現代のレベルと比較すると、当初は1000万分の1であった酸素濃度は、その後に100分の1、そしていったんは現代と同レベルまで増えた。その原因となるのは、35億年前に登場した光合成生物であったが、地球の全球凍結が終わったあと、陸地の栄養分が一気に海へと流れ込み、光合成生物のシアノバクテリアが一気に増殖して酸素濃度を引き上げた。当時、多細胞生物のご先祖様にあたる単細胞生物にとっては酸素は有害であったが、それとは別に酸素を利用してエネルギーを作れるように進化した別の生物がいた。この別の生物というのがミトコンドリアの原形であり、これを取り込んで進化したのが真核生物ということになる。出演した小宮剛先生(東京大学)によれば、酸素を使った好気呼吸は酸素を使わない呼吸に比べて16倍も大量のエネルギーをを作ることができるのでより活発に活動することができる。 ちなみに、上記の酸素濃度の急上昇は全球凍結のきっかけになったかもしれないという。というのは、全球凍結以前は、酸素発生型光合成生物とメタン生成菌が競合しており、なかなか酸素は増えなかった。ところがそのバランスが崩れてメタンが減ると、温暖化ガスとしてのメタンの効果が減少することで寒冷化が進む。その悪循環が全球凍結に繋がったという可能性である。 さて、真核生物が誕生した21〜19億年前以降、8億年前までの間の酸素濃度は殆ど分かっておらず、地球史においてもこの時代の研究はあまり進んでいなかったが、最近になっていくつかの発見があったという。ロシア・オネガ湖の地下約1900mから発見された岩塩の分析や海底の地質データを重ねた分析によると、
陸から海への栄養減→光合成生物減→酸素減 になったと推測されている。2.では超大陸コロンビアが分裂、また3.は超大陸ロディニアによりまたまた海岸線が減少して酸素が減少したと考えられているが、これらはあくまで仮説であり、別に火山活動の影響を論じた仮説などもあるという。 以上に紹介された酸素濃度の増減は生物進化に影響を及ぼす。小宮先生によれば、
さて、以上までのところは、月のクレーターとは全く関係の無い話であったが、ここで登場したのが、もう1つの重要物質であった。 次回に続く。 |