じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 4月20日の早朝はよく晴れ、南東の空に金星(明けの明星)が輝いていた。金星の左下、地平線と金星の中間のあたりにはうっすら木星が見えていたが、霞のせいかぼんやりとしていてデジカメには写っていなかった。

2022年4月20日(水)



【連載】abc予想証明をめぐる数奇な物語(4)フェルマーの最終定理の証明

 4月19日に続いて、

NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語【ブログ後編はこちら

についての感想と考察。59分バージョンをベースにして、4月15日の23時から放送された89分「完全版」を参照しながら感想を述べることにしたい。

 まず、昨日も取り上げた、

c >K(ε)・rad(abc)1+ε
(K(ε) を ε に依らずに取ることはできない。)


という意味だが、εは任意の実数でありε>0であることが確認できた。K(ε)の意味が未だによく分からないのだが、どうやら定数であり、かつ、定数とは言ってもεと独立して決まるものではないというように暫定的に理解しておく。

 次に、式の一部を簡略化した、

c>rad(abc)

があらゆるa、b、c(但し、aとbは互いに素な正の整数で、a+b=c)について成り立つかどうか考えてみる。こちらの解説に挙げられた例を引用すると、
  • a=1、b=8の時はc=9、rad(abc)=2×3=6なので、c>rad(abc)となり成り立たない。
  • a=5、b=27の時はc=32rad(abc)=2×5×3=30なので、c>rad(abc)となり成り立たない。
というように例外が見つかる。しかし、リンク先によれば、
  • cく10000であるような(a,b,c)は約1500万通りあるが,そのうち例外的ABCトリプルは120個しかない。
  • cく100000の場合,約3億800万個の(a,b,c)のうち例外的ABCトリプルは276個しかない。
ということで、例外はあるもののきわめて少ないことが分かる。

 リンク先では、abc予想が正しかった場合、フェルマーの最終定理がどのように証明できるかも分かりやすく解説されていた。要するにこれは背理法による証明であり、
  • n≧3で、xn+yn=znを満たす自然数の組x、y、zが存在したと仮定する。
  • x、y、zが互いに素でない場合は共通因数で割ったものを考えればよいので、互いに素である場合のみを考えればよい。
  • abc予想(但しε=1とした場合)により、

    n<rad(xnynzn)2

    という不等式が成り立つ。
  • rad(xnynzn)2=rad(xyz)2であり、かつ
    x,y<zだから、rad(xyz)2≦(xyz)2<(z3)2=z6となる。したがってzn<z6が成り立つ。すなわちn<6
  • 当初の仮定からn≧3であるので、3≦n<6を満たすnは、n=3,4,5に限られる。しかし、n=3,4,5の場合は別の方法でフェルマーの最終定理が分かっていたので【=そのようなxyzは存在しない】、xn+yn=znを満たす自然数の組x、y、zが存在するという当初の仮定は矛盾する。
ということになる。なるほど、この証明なら私でも理解できる。abc予想の証明自体は依然として全く理解できないが、

●abc予想が成り立つと仮定した場合に、フェルマーの最終定理が成り立つことを背理法により証明せよ。但し、n=3,4,5の場合はすでに証明されているので除外してよい。

というような問題であれば、数学の入試問題としても出題できそうだ。

 次回に続く。