じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 幼虫時代の食草であるウマノスズクサに「立ち寄る」ジャコウアゲハ。観察時間中には産卵していなかった。生まれ故郷を懐かしがっているわけでもあるまいが。

2022年5月23日(月)



【小さな話題】4630万円誤送金事件についての3つの疑問とその後の展開

 山口県阿武町(あぶちょう)が、新型コロナ対策の臨時給付金4630万円を誤って24歳の男性に振り込んだ問題が連日報道されている。ふだん世間の出来事にはあまり関心を向けることの無い隠居人の私であるが、今回は金額の大きさ、誤送金された男性がとった非常識な行動、さらに世間の関心がどこに向けられているのか、といった点に興味をいだくようになった。5月23日朝の時点では、容疑者が繰り返し振り替えていた決済代行業者のうちの1つの業者から、3500万円余りが町の口座に返還されたことが捜査関係者などへの取材でわかったという。であるとするならば、残りは1130万円となり、仮に残金を使い切っていたとしても親族などからお金を工面してもらえれば何とか返済できそうな金額となってきた【もっとも別に裁判費用が約500万円かかるらしい】。いずれは、社会案件ではなくエンタメ案件として埋もれていくことになるのかもしれない。

 私自身は、このニュースを最初に聞いた時、次の3つの疑問をいだいた。
  1. そもそもなんでこんな遊び人の男が臨時給付金の送金対象になっているのか?
  2. オンラインカジノは違法ではないのか?
  3. 4600円余りが瞬く間にゼロになるようなカジノは、ビジネスとして成り立たないのではないか?
 まず1.の疑問について。世間では、誤送金してしまった自治体のチェック体制や事件後の回収対応の甘さに批判が向けられているようだが、私は、誤送金であれ、規定の10万円であれ、ギャンブルにお金をつぎ込むような遊び人が給付対象にリストアップされること自体に問題があると思う。
 今回の男性自身が該当するかどうかは別として、一般論として、ギャンブル依存者に10万円を給付すれば即刻ギャンブルに使われてしまだろうし、アルコール依存者に給付すればお酒に、ニコチン依存者に給付すればタバコに使われてしまうことは容易に予想できる。とはいえ、臨時給付金というのは逼迫した状況のもとで困窮者に給付するという性質上、資格審査をしたり、還付金のような形で実質的に給付するということも難しい。
 ではどうすればよいかということになるが、私自身が思いつくのは、購入可能な品目を限定したクーポン券の配布、もしくはマイナカードと連動した支払い対象限定のポイント給付、といった方法である。例えば、クーポン券が「(アルコールを除く)食料品」、「日用品」などに限定されていれば、ギャンブル依存者に給付してもそのお金が賭け事につぎ込まれることはない。
 なおクーポン券方式は印刷コストと納期に時間がかかることから、やはり、電子媒体でのポイント給付方式が望ましいように思う。

 次に2.の疑問だが、ウィキペディアに、

日本はアクセス数は2021年世界三位、2022年世界4位であるが、日本国内からの利用は賭博罪違反である。利用者が違摘発された例もある。

とあるように違法性は明らかである。今回の事件をきっかけとして、取締を強化してもらいたいものだ。でないと、ギャンブル依存者がますます増えて、健全な勤労を阻害したり家庭崩壊をもたらす恐れがある。

 3.の疑問だが、そもそも、「ゼッタイに勝てないような賭け事」というのはビジネスとして成り立たない。行動分析学の基本原理として、強化されない行動は消去されていくので、そういうギャンブルでは参加者はゼロになってしまう。ギャンブルのビジネスというのは、参加者を「時たま、ランダムに」儲けさせることによって成り立つ。私自身も学生時代にハマっていたことがあるが、例えばパチンコの還元率は85%程度と言われており、1万円を投じても8500円分くらいは利用者に戻る仕組みとなっている。もし一度も勝てないようなパチンコであったら誰も入店しなくなるし、逆に1万円以上を還元し続けたら店は倒産してしまう。「85%」の還元率であれば、利用者側からみて長期的には損をすることは明白なのだが、人間は「不確実な結果の随伴は強化されやすい」という進化上の性質があるためか、何回か負け続けても時たま大もうけするような強化スケジュールのもとではハマってしまい、時にはギャンブル依存に陥ってしまうのである。
 ということで、オンラインカジノの違法性は別として、この男が、4630万円もの大金を全部使い切ってしまう(←負け続けた)というようなカジノはビジネスとしては成り立たないはず。もし本当に4630万円を投じたのであれば、その8割の3704万円分くらいは勝っていて回収できていたはずである。もっとも本日朝のニュースでは少なくとも3500万円分はカジノには使われていなかったということで、やはりそうだろう、そんな一方的に負け続けるようなギャンブルはあり得ないはずだと納得できた。

 確かに4630万円というのは大金であり、普通の人が勤続40年程度で退職金を受け取ってもその1/2〜1/3程度にしかならない。とはいえ、これを使い込んでしまうというのは、どう見ても割に合わない話だ。そもそもこの誤送金では、受取人の本名や年齢、住所などの個人情報がすべて把握されている。仮にその大金を現金化して偽名で逃亡を続けても、防犯カメラの映像などからじきに捕まってしまう。また、本名を偽れば、病院で保険診療を受けることもできないし、将来の年金を受け取ることもできない。結婚届もできないし、子どもの戸籍を作ることさえできない。どう逆立ちしても得になることはないと思うのだが、なぜこんなことをしてしまったのか。更生のためのサポートが望まれる。