じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月8日(木)の夜明け前はよく晴れて、北西の空に沈む満月(12月8日13時8分)と、火星が接近する様子を眺めることができた。月と火星は12月8日の13時25分に0°33′まで(見かけ上の)大接近をするが、日本からは眺めることができない。なお、『天文年鑑2022』によれば、
  1. 火星と地球の(ホンモノの)最接近:12月1日11時17分
  2. 火星が衝:12月8日10時33分
  3. 満月:12月8日13時8分
  4. 月と火星の見かけ上の最接近:12月8日13時25分
となっていて、それぞれ微妙にずれている。本来、火星と地球が完全な円の軌道を公転しているのであれば、最接近の瞬間は衝の瞬間と一致するはずである。火星の衝と満月の瞬間が一致せず、見かけの最接近の瞬間とも一致しないのは、おそらく、(地球から見て)それぞれの軌道が傾いているためだろう。

2022年12月8日(木)



【小さな話題】正2.5角形とは何か?

 数日前、YouTubeで、

【ゆっくり解説】正2.5角形ってどんな形?数学の知られざる世界【ナゾトキラボ IQ & 謎解きチャンネル】

の動画が偶然目にとまった。タイトルを見た時に最初に思ったのは「n角形というのは頂点がn個あるという意味なので、nが自然数(n≧3)以外になることはあり得ないのではないか?」ということであった。しかし定義を拡張すると、nが有理数であるような正多角形はちゃんと存在することが分かった。

 動画によれば、正多角形というのは、
  • すべての辺の長さが等しい。
  • すべての内角の大きさが等しい。
というように定義される。

 正多角形を作図する時には【但しここでは、定規と分度器を使用】、固定された長さの直線(=1つの辺)を描き、そこから内角の大きさだけ向きを変えて次の辺を描く。これを繰り返すことによって作図することができる。正N角形が円に内接することを利用して内角の大きさを求めると、

内角α=180-360/N

となり、実際N=3の時は60°、N=4の時は90°となって正三角形や正方形にちゃんと対応していることが分かる。

 ここで、Nに2.5を代入したのが正2.5角形ということになる。この場合のαは36°となる。上記と同じやり方で、36°ずつずらしながら作図をしていくと、線が交差するものの最終的には出発点に戻るような星形の図形が完成する。動画ではさらに正4.5角形や正3.1角形などが示された。

 こうした星形正多角形は一般的にはN/M角形と呼ばれる。Nが自然数の場合を含めて
  • 正N/1角形:円1周をN等分した多角形
  • 正N/M角形:円M周をN等分した多角形
となる。なおこの定義からは正2角形は「円一周を2等分した多角形」となり1本の直線となる【3次元では2辺をもった二角形がちゃんとあるようだが】。また、それぞれの内角の大きさは、
α=180-360M/N
となる。

 上記の定義から容易に推測できるように、正N/M角形の頂点の数は、N/MではなくNの大きさに対応している。なので、正3.1角形と正3.01角形は、N/Mの大きさ自体はあまり変わらないように見えるが、実際は前者は31個、後者は301個の頂点を持つことになる。

 また上記の定義から自明であるように、N/Mはあくまで有理数であり、正√2(ルート2)角形とか、正π(パイ)角形というのは存在しない。近似的には作図ソフトで図形を描き始めることはできるが、いつまで経っても出発点には戻らないので図形を完成することができないためである。
 もう1つ、定規とコンパスだけで作図できる正多角形は、もっと限られている。たまに話題になるのが正65537角形であり、作図可能な正多角形は無数に存在するものの、これが正素数角形のうちで辺の個数が最大であると予想されているらしい【知られているフェルマー素数は、ガウス以前から、「3, 5, 17, 257, 65537」のみであり、これで全てであろうと予想されている。 】
 このほか、星形正多角形の発展として星形正多面体の世界があるが、私には殆ど理解できないのが残念。