【小さな話題】探検!巨大ミュージアムの舞台裏 〜国立科学博物館〜(1)「鯨」「剥製」「恐竜」
2021年3月に初回放送、2023年2月7日にNHK-BSPで再放送された表記の番組についてのメモと感想。
↑にも述べたように、国立科学博物館(科博)は小学生の頃に数回訪れた記憶があるが、博物館というと、動物の剥製や骨格標本が並べられており、植物や動物の生きた姿を観察することが好きだった私としてはあまり魅力を感じることがなかった。上京して半日ほど時間が空いた時も、都内の植物園、動物園、水族館を訪れることはあったが、博物館に行ってみようと思ったことはなかった。とはいえ、今回の番組を通して、けっこう稀少な展示物があることも分かった。次回以降の上京時には、1日かけてじっくり見学してみようかと思っている。以下、放送の中で、新しく知ったこと(=「じぶん更新」に相当する情報)をメモしておく。
- クジラ
- マッコウクジラ標本の顔の表面には吸盤の跡がある。これは深海に潜ってダイオウイカを捕らえた時にダイオウイカの足の吸盤がはりついた跡。マッコウクジラがなぜ深海まで潜ってダイオウイカを捕らえるようになったのかはまだ謎が多い。
- マッコククジラの骨の中には、後ろ足と体をつなぐ骨盤が残っている。陸生時代の名残。
- 日本各地の海岸には年間300件以上もクジラの死体が打ち上げられている(ストランディング)。そのうち50件以上については、科博のスタッフにより、死体の死因を調べたり骨格標本を作るための作業が行われている。
- 大きなクジラの骨格標本を作るためには、いったん地中に埋める。数年以上経つと、地中の虫や微生物により肉が食べ尽くされて骨だけが残る。
- 大型のクジラの死体が腐敗すると体内に発酵したガスがたまるため、解体作業中にガスが破裂して吹き飛ばされる事故があるという。
- クジラの胃の中からはプラスチックなどのゴミが大量に発見されることがあり、海洋汚染の深刻さを示している。
- 科博の建物
- 建物自体がとても貴重。日本館は1931年に建設され、国の重要文化財に指定されている。
- 日本館は空から眺めると飛行機の形をしている。
- 剥製
- 世界中から集められた陸生動物の剥製115体が展示されている。
- 1905年に絶滅したと言われるニホンオオカミ3体のうちの1体が展示されている。
- 茨城県・つくば市「国立科学博物館・筑波研究施設」の陸生哺乳類剥製標本室には1700体が保管されている。その中には、体長3mを超える巨大なホッキョクグマ、絶滅危惧種のユキヒョウ、パンダのリンリン、レオポン(1959年、阪神パークでヒョウの父親とライオンの母親から生まれた雑種。当時はレオポンブームが起こった)などの標本もある。
- 研究用の剥製は、収納の利便性なども考慮してバンザイのポーズ、平べったいままで保管される(仮剥製)。
- 動物研究部・川田伸一郎さん「博物館はサービス業。自分だけでなく、他の人が研究できる環境を整えてあげる。100年後、200年後に、今残している標本の価値が大切になってくる。」
- 科博のお宝(1)
- 恐竜
- トリケラトプスの産状化石。生きている時に近い状態で発見。骨と骨の繋がり方が分かる。
- ティラノサウルス。かつては体を起こした状態で展示されていたが、しゃがんだ状態に修正された。じっさいかつての恐竜図鑑(1982年)ではティラノザウルスは、尻尾を引きずりながら立ち上がって歩く姿が描かれていた。しかし1970年に
●Newman, B.H.(1970).Stance and gait in the flesh-eating dinosaur Tyrannosaurus. Biological Journal of the Linnean Society, 2(2), 119-123.
という論文で「ティラノサウルスは体を起こす姿勢をとると、首の関節が脱臼してしまう」という新学説が唱えられ、それに合わせてポーズも修正された。
- その後、ティラノサウルスの歩き方やしゃがみ方、しゃがんだ状態からの起き上がり方が、骨格の特徴やコンピュータシミュレーションにより解明されてきた。その中で、小さな前脚が、しゃがんだ状態から瞬発的に起き上がる際に役に立っていることが明らかになってきた。
- 地学研究部・對比地孝亘さん「次々と新しい学説が出てくる中で、その時一番正しいと思われている考え方を示すのが博物館の役割。」
- 恐竜と恐竜以外の爬虫類は後ろ脚の付き方が異なる。足が体の下にまっすぐ伸びたほうが体重が支えやすいので、恐竜は直立姿勢のほうが大きくなりやすかった。また直立のほうが、他の爬虫類のがに股よりも走りやすかった。
- 筑波の研究室の標本紹介:角竜の若年個体(成長途上のプロセスが分かる)、翼竜アンハングエラ・ピスカトールのホロタイプ標本、パキケファロサウルス(石頭恐竜)の子どもと考えられる個体の石頭もしくは小型の別種。
ここまでのところでとりあえずの感想を述べるが、やはり科博の展示物は、生きた動物ではなく、剥製や骨格標本ばかりで、子どもの頃からの暗くかび臭い印象(←失礼)を拭い去ることにはならなかった。
剥製標本の学術的価値は分かるが、動物は外側の皮ばかりでなく、内蔵、筋肉、神経系こそが重要であるようにも思う。ま、恐竜時代はともかく、最近死んだばかりの個体については、そうした内蔵・筋肉・神経などの標本がどのように保存されているのか、あるいは捨てられてしまうだけなのか気になるところである。
ティラノサウルスについては、確かに私の子どもの頃とはだいぶイメージが変わってきている。以前に比べると立ち上がったゴジラ型のポーズは影を潜めているほか、最近では羽毛で覆われた画像もよく見かける。なお私自身は子どもの頃は「チラノザウルス」であると覚えていたが、「ザウルス」ではなく「サウルス」のほうが恐竜一般の呼び方としては定着しているようであった。ウィキペディアでは、「ザウルス」は
saurus - 学名(ギリシア語のラテン語形)で「トカゲ」を意味する単語「サウルス」の濁った形。ラテン語の発音上は間違い。主に恐竜・翼竜・首長竜などの絶滅爬虫類の学名に用いられていた。現在はもっぱら「サウルス」という。
となっていた。さらに検索したところ、こちらに「ザウルス」という読み方が一時期使われていた背景には「sa」がドイツ語で「サ」ではなく「ザ」と発音されてことがあるという記事があった。
次回に続く。
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