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【連載】AIの進歩で仕事を奪われる人と、新たなビジネスチャンス(3)報道関係者、各種相談窓口、カウンセラー 昨日に続いて、AIの進歩と人間の仕事について考察する。 本日(4月5日)朝のモーサテの『今日の経済視点』のコーナーで、ゲストの大槻奈那さんが『ChatGPTの破壊力』をキーワードに挙げていた。大槻さんが挙げておられたのは、ご自身が勤務しておられる大学で、学生のレポートがChatGPTで作成されることへの懸念であった。これまでにもこのようなAI利用の問題については議論がされてきたが、今回はいよいよヤバイ段階に達しているという。 このことからの派生として、モーサテのキャスターやゲスト解説者もAIにその座を奪われるのではないかという冗談が交わされたが、これは単に荒唐無稽な冗談では済まされないように思われる。 現在すでにNHKのニュースでも一部がAIによる自動音声で放送されているが、外国ではアナウンサー自身が実在しない合成画像になっている場合もあると聞いている。じっさい、事実を正確に伝える必要のあるニュース記事などでは、感情を込めた生身の音声は必要ではなく、機械音声のほうが中立感・公正感があるようにも感じられる。さらにはどのニュースを報道し、どれをボツにするのかといった選択も、人間よりAIに委ねたほうが偏りが無くなるようにも思う。もっともAIは検閲にも利用可能であるから、ニュースの選択基準としてどういう条件が設定されているのかを監視する必要はあるだろう。 さて、昨日の日記で、医療の予診段階(軽症者の初診外来)でのAI活用の可能性を指摘したが、医療に限らず、さまざまな相談窓口でもAIの活躍が期待される。 まず真っ先に浮かぶのは、スマホ、家電一般などでトラブルが発生した時の対応である。私も何度か問い合わせをしたことがあるが、大概は「ただいま電話が大変混み合っています。そのままお待ちいただくか、しばらく経ってからおかけ直してください」という機械音声が流れるばかりで5分、10分と待たされることがある。いったん繋がったあとの「人力対応」は親切で好印象を受けることが多いとはいえ、待たされるだけでイライラしてしまう。このあたりは、ちょうどChatGPTやBingと同じ形で音声対応してもらったほうがありがたい。 相談窓口のAI化に関して議論が分かれそうなのが、人生相談であろう。私自身は、AI導入については楽観的な見方をしている。中にはAIに任せるのは危険だ、AIに相談したことで自殺者が出たらどうするのだ、と主張する人もいるだろうが、これはAI側に、「自信喪失、自己嫌悪、自殺願望」といったネガティブな反応には同調しないといった条件を設定することで防げると思う。 生身のカウンセラーとAIとどちらが相談しやすいのかは、クライアントによって異なるように思う。カウンセラーが共感してくれたり、献身的なサポートに感動したりするタイプの人にとっては、AIカウンセラーは物足りないと思われる。いっぽう、私のようにひねくれていて、しょせん人間は孤独であると思っている者にとっては、 ●カウンセラーはクライアントである自分に対して職業的に対応しているだけであって、共感も励ましも演技に過ぎない。 という猜疑心があり、そもそも自分の悩みを開示しようとは思わない。その点、AIが相手であれば、心置きなく開示することができる【←もっとも、対話型AIのやりとりに含まれる個人情報はデータベース化されると聞いているので、プライバシーが守られるという保証はない】。私の場合、AIから共感して貰って、あるいは励ましの言葉を貰っても、それら自体は嬉しくも何とも無いが、とにかく、悩み事があった時にそれを自力で解決するための方法をいくつか提案してもらうことができれば大いに参考になるはずだ。 もっとも、幸い、今の私は、AIに相談しなければならないような差し迫った悩み事は存在しない。もちろん、健康の衰えには漠然とした不安はあるが、そういう問題は相談によって解消できるようなものでは決してないと考えている。 話題が逸れてしまったが、生身のカウンセラーが100%失業することはあり得ないと思う。しかしAIに相談するほうが気楽だという人も一定比率で存在するはずで、どちらが選ばれるのかは成果やクライアント側のニーズに依存するだろう。 次回に続く。 |