【小さな話題】羽生善治 52歳の格闘 〜藤井聡太との七番勝負〜
4月15日にNHK総合で放送された、
●NHKスペシャル羽生善治 52歳の格闘 〜藤井聡太との七番勝負〜
についてのメモと感想。
将棋の対局は、NHK杯将棋トーナメントを毎週視ているほか、アユムさんの解説動画などを通じて各種棋戦を楽しませてもらっているが、今回の放送で取り上げられた藤井vs羽生の王将戦は特に魅力溢れる対局であった【以下、敬称略】。今回の対局で羽生はいったん2勝2敗のタイに持ち込むなど善戦し、新たな羽生マジックも出現した。今回の放送で印象に残っている点をメモしておく。
- 羽生:【データベースで藤井の作戦別の勝率を見るとだいたい8〜9割となっており】、作戦で“ここが弱い"“ここをつけばいい"とか、そういうのは基本的にない。だけどデータはあくまで過去のもの。過去になかったものの中で何か新しいものを見つけていく作業。
- 1996年、『将棋年鑑』がプロ棋士たちに「コンピュータがプロ棋士を負かす日は?」というアンケートを行ったところ、殆どの棋士は「来ない」、「永遠になし」といった否定的な回答をしたが、羽生一人は「2015年」と回答した。実際にコンピュータが初めてプロ棋士に勝ったのは2013年であった。
- 羽生:(AIの将棋ソフトは)1年経つと1年前のバージョンに7割〜8割ぐらい勝つと言われている。そうすると今のバージョンも1年経つと駆逐される。ということはその中に間違いがあるということ。
- 羽生はコンピュータを駆使した若手棋士に苦戦し、2021年度は14勝24敗と初めて負け越し4割を切った。その後、木村一基九段などとコンピュータを使った研究に取り組み、王将リーグで挑戦者となった。2022年度は33勝18敗。
- 王将戦第2局:第101手目では、先手羽生は「4八香」ならば勝率99%、それ以外の手はすべて1%という選択を迫られたが、正確に「4八香」と指して勝利した。
- 藤井が好む「角替わり」は主導権を奪いやすく先手の勝率が最も良いとされている。2022年8月以降の公式戦先手番の勝率は5割8分。多くの若手棋士は評価値重視の戦法を採用しているが、王将戦第3局では羽生は『雁木』を選択した。羽生「若い人がそういう方向に行ってしまうのはもうしようがないことだと思います。だってもう目の前にそういう技術があって具体的な数字で見えてしまうので。ただ将棋の全体の技術の向上とか新たな創造性ということに関していうと、危険な兆候ということもある。多様性が失われていくということもあるので。遊びの部分というか、ゆらぎの部分をどれぐらい見極めて、新しい可能性を探っていく。」
- 羽生:テニスのラリーとかやっていて、一番厳しいコースに打たれて返せた時が一番うれしい。だから一番厳しいコースに打ってくれないと楽しくない。簡単に返せるコースだったら簡単に返せちゃうからあんまり楽しくなくてギリギリをちかれた所を返せるって所が楽しい。
- 【藤井と対局することについて】羽生:(野球に喩えれば)すごい強力なバッターの人がいて自分がピッチャーだとしますね。どのコース投げても打たれそうだと。で、このコース投げて打たれたと、じゃあ今度はこっちに投げてみようかと、でまた打たれたと。で、次どこ投げようかというような、そういう感じです。それ楽しいですか? 大変でしょ。(どこか苦手なところがあると思って投げる?)そう、投げる。でまた打たれるわけですよ。
- 【王将戦終了後】羽生:藤井さんには藤井さんの美学があって、非常に幅広く考えている気がします。将棋って多い曲面だと100通りとか200通りという可能性があるので、ほとんどの可能性を最初から捨てているけど、でもその捨てている可能性の中に結構いい手が潜んでいたり可能性が潜んでいることもあるので刺激にもなったり勉強にもなった。どういうことが課題か分かったので、それをふまえてまた次に向かっていけたらいいなと思いました。
次に藤井からタイトルを奪う棋士がいるとすれば、渡辺でも永瀬でも豊島でもなくて、やはり羽生ではないかという気がする。
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