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7月21日夕刻の岡山はよく晴れて、西の空に金星と月齢3.6の月が輝いていた。月の下には火星も見えていた。 |
【連載】チコちゃんに叱られる!「ストレスがたまると甘いものを食べ過ぎてしまう理由」 7月21日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
「ストレスがたまると甘いものを食べ過ぎてしまう理由」について、放送では「腸がカビに支配されているから。」が正解であるとされた。桐村里紗さん(東京大学大学院共同研究員)によれば、人間の腸内には、約1000種類、100超個の腸内細菌が棲息している。それらはビフィズス菌や乳酸菌のように私たちの健康維持に欠かせない善玉菌、ウェルシュ菌のように体に悪影響を与える悪玉菌、さらにカンジダ菌のように普段は特に悪さもしない日和見菌の3種類に分類される。 ふだんこれらの3種類は腸内で共存しているが、ストレスによる暴飲暴食で糖質をとる量が増加すると腸の中でカンジダ菌が大繁殖する。カンジダ菌は糖質が大好物であり、ストレスがかかった時に甘いものをとりすぎると大繁殖して腸内を支配し、悪玉帝国を作ってしまう。腸内でたくさん増えたカンジダ菌は、アラビノースという血糖値を下げる物質を産出する。そうすると低血糖となりもっと甘いものが欲しくなる。さらにカンジダ菌は、細胞のエネルギーづくりの邪魔をする酒石酸とシトラマル酸を出し、疲れた状態が続く。そうすると脳が体にエネルギーが足りないと勘違いしてさらに甘いものを欲しがるようになり悪循環に陥る。 カンジダ菌を増やさないためには歌ったりスポーツでストレス発散をしたりバランスのいい食事を摂ったりすることが推奨された。このほか、また甘いものを食べるとドーパミンが分泌されて食べ過ぎの原因となる場合もある補足説明された。 ここからは私の感想・考察になるが、まず、解説者の桐村里紗さんが、「東京大学大学院共同研究員」というけったいな肩書きで紹介されていたのでウィキペディアで検索したところ、
ウィキペディアで紹介されていた「病気になった人を病院で待ち治療することは自分の役割ではない」というお考えは大いに賛同できる。じっさい私なども複数の医療機関のお世話になっているが、殆どの場合は、悪いところがあるから診療・処方するというだけであって、できるだけ悪くならないようにするにはどうしたらよいかについては何も教えてくれない。 もっとも、これだけの経歴をお持ちであるなら、「医師」、「腸活評論家」という肩書きで十分であり「東京大学大学院共同研究員」と名乗る必要は無いように思われる【しかも、大学院の所属は「工学系研究科バイオエンジニアリング専攻道徳感情数理工学講座」となっていて、今回のカンジダ菌とは専門内容が異なる】。「東京大学大学院」というように権威付けする必要は無いように思う。 前置きが長くなったが、糖分を長期間摂り過ぎると、カンジダ菌の大繁殖によってアラビノース、酒石酸、シトラマル酸を出し、甘いもの依存の悪循環が生まれることはその通りであろう。もっとも、これはカンジダ菌が殖えたあとの話であって、「ストレスを受けた時に甘いものを食べ始める」というきっかけを説明するものではない。きっかけをもたらしているのは、放送の最後に補足説明された「甘いものを食べるとドーパミンが分泌される」というメカニズムが働いていたためであろう。 食物の好みについては今から50年以上も前に、 ●食物選択における学習の役割(1982年、『哺乳類科学』, 22, 29-51. という論文を書いたことがあった。その中でも言及しているが、雑食性動物の多くは糖類ばかりでなく、サッカリンなどの人工甘味料を好むことでも知られている。しかし、サッカリンはカロリーゼロであり、カンジダ菌を殖やすことにはならないはずだ。であるなら、甘いものの過剰摂取や依存を防ぐには、我慢ではなく人工甘味料による代替のほうが実行しやすい。もっとも人工甘味料の中には発がん性が疑われているものもあり、慎重な対応が求められる。 このほか、いくら甘味が生得的に好まれるといっても、ノンカロリーの甘味料ばかりを摂取しているとカロリー源が欠乏し疲労を招く可能性がある。そうなった時、雑食性動物では、「甘味は強いがノンカロリー」よりは「甘味は低いが高カロリー」の食べ物を選ぶようになるはずだが、最近の研究がどうなっているのかは調べていない。 次回に続く。 |