じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



11月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
クリックで全体表示。



 数日前、半田山植物園のオニバス池で見かけたメス(写真上段、中段)とオス(下段)のコノシメトンボ。オスは11月2日掲載のオスと同じ個体の可能性が高いが、翅の向きが違っていて同じような破れ箇所があるのかどうかは確認できなかった。寒気到来の前に交尾・産卵ができればいいのだが。


2023年11月13日(月)




【連載】笑わない数学(6)『1+1=2』(3)「1から始まる自然数の世界」でも「1+1=2」は証明できるのだろうか/円環型の場合

 11月11日に続いて、10月18日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』:

1+1=2

についてのメモと感想。

 本日は、放送内容から脇道に逸れるが、前回考察した以下の2つの疑問:
  1. 放送や解説動画では、自然数は0から始まる整数として定義されていたが、1から始まる整数(高校までで習う本来の自然数)として定義しても、「1+1=2」は証明できるか?
  2. 1月から12月までの月は、suc(1月)=2月、suc(2月)=3月、suc(12月)=1月、あるいはsuc(日曜日)=月曜日、suc(土曜日)=日曜日、というように「円環構造」)は持つ構造であっても、「1+1=2」に相当するような証明は可能か?
について考えてみることにしたい。

 まず、1.であるが、ウィキペディア『自然数』の項目に記されているようにもともとペアノが1891年に発表した自然数の公理は1から始まっており、
  • 自然数 1 が存在する。
  • 任意の自然数 a にはその後者 (successor) の自然数 suc(a) が存在する(suc(a) は a + 1 の "意味")。
  • 異なる自然数は異なる後者を持つ。つまり a ≠ b のとき suc(a) ≠ suc(b) となる。(ある種の単射性)
  • 1 はいかなる自然数の後者でもない(1 より前の自然数は存在しない)。
  • 1 がある性質を満たし、a がある性質を満たせばその後者 suc(a) もその性質を満たすとき、すべての自然数はその性質を満たす。
となっているようだ。ここまでのところでは「0から始まる自然数」であっても「1から始まる自然数」であっても本質的な違いは見られない。問題となるのは足し算(加法)の定義である。「0から始まる自然数」では加法は、
  1. すべての自然数aに対して、
    a+0=a
  2. すべての自然数a、bに対して
    a+suc(b)=suc(a+b)
というように定義されていたのに対して、「1から始まる自然数」にはゼロが存在しないので「a+χ=a」なるχという元は存在しないことになる。前回記した「1+1=2」の証明で用いられた「b=0とする」を使うことができない。また「1」は、suc(0)ではなく、そもそも最初から存在する「最小元」として定義されている。ということで、「0から始まる自然数」と同じ論法は使えそうにもない。とはいえ、「1から始まる自然数」の世界では我々は普通に物の個数を合計しており、足し算はちゃんと成立している。ま、1つの考え方として、

●「ゼロから始まる自然数」の世界で加法が定義できるなら、その部分集合である「1から始まる自然数」の世界でも加法は成り立つ

というように、まず第一段階で0を借りてきて加法を定義し、第二段階で0を除いた自然数の世界でも同じことが言えるというように二段階で証明できるとは思うが。




 次の2.の円環型でも加法は成り立つように思われる。例えば「1月+3月=4月」というのは、「1月から3カ月後の月は4月」という意味になる。但し、この集合の元は1月から12月までしかないので、
  • 「11月+3月=14月」ではなく「11月+3月=2月」となる。これは日常生活でも普通に行われる計算である。
  • 日常生活では、「13カ月後」とか「20カ月後」と言うことはできるが、13月や20月は集合の元ではないので、計算はできない。

 この種の計算は結局のところ剰余と同じことを言っている。なお、敢えて「円環」と書いたが、三角関数に見られるような周期や循環ももう少し広い概念になるように思う。ペアノの公理でなぜ「ある種の単射性」が含まれているのかについては、もう少し勉強する必要がありそうだ。

 次回に続く。