【連載】ヒューマニエンス「“左と右” 生命を左右するミステリー」(6)スポーツで左利きが有利になる理由
1月19日に続いて、1月8日に初回放送された、NHK『ヒューマニエンス』、
●「“左と右” 生命を左右するミステリー」
についてのメモと感想。
前回のところで、鱗食魚では右利き、左利きの割合は40%〜60%の範囲で周期的に変動しながら半々の比率を保っているという事例を取り上げた。この例に限らず、自然界では右利き、左利きの比率は半々であることが適応的であるようだ。ところが人間の場合は、左利きは1割、右利きは9割となっている。各国での割合を各種文献から集計すると、左利きの割合は、
- アメリカ 9〜12%
- イギリス 11.5%
- コートジボワール 7.9%
- アラブ首長国連邦 7.5%
- 日本 7%
- インド 5.8%
- 中国 3.5%
などとなっていて、文化の違いがあるにもかかわらず左利きの割合が大きいという国は見当たらない。もっとも、スポーツの世界では左利きが多い種目もあるという。放送によれば、フェンシング 世界大会に出場する選手の5割が左利きとなっているほか、テニス、野球、ボクシングなどの対戦型スポーツでは左利きの割合が多い。
ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、ここまでの資料からは2つの仮説が考えられるように思われる。
- 人間でも、生まれた時の利き手の比率は半々であった。しかし道具の使用など何らかの文化的圧力がかかり、左利きの多くが右利きになるように訓練された。但し、スポーツなどではその圧力がかからなかったため半々が維持された。
- 何らかの器質的な要因により、人間では右利きの割合が圧倒的に多くなった。但しスポーツの対戦型競技などでは、右利きの選手は左利き選手との対戦に馴れておらず不利となり、結果的に左利き選手が有利になった。
このどちらが成り立つかは不明だが、素朴に考えると2.のほうが可能性が高いように思われる。
ここで対戦型競技について以下のような仮定をしてみよう。
- 右利きの選手が右利きと対戦した時の勝率は50% 【いちばん対戦の頻度が多い】
- 左利きの選手が右利きと対戦した時の勝率は60% 【右利きの選手は左利きの選手特有の技になれていないため不利になる】
- 左利きの選手が左利きと対戦した時の勝率は50% 【滅多に対戦されないので双方とも馴れていないが、確率的には勝率は半々】
さらに、右利きの選手の比率の初期値が90%であると仮定する。そうすると、ある試合において右利きと左利きの選手がそれぞれ勝つ確率は、
- 右利きの選手:0.5×0.9+0.4×0.1=0.49
- 左利きの選手:0.6×0.9+0.5×0.1=0.59
となる。右利きの選手の一部は、なかなか勝てずに引退してしまう。こうして左利きの選手が有利な状況は、勝ち残った選手の利き手の比率が半々になるまで続くだろう。
ついでに、大相撲の『右四つ』『左四つ』の比率についてBingに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
大相撲では、左四つが得意な力士と右四つが得意な力士がいますが、比率はどうなっていますか?
この質問には、一様な答えがあるわけではありませんが、一般的には右四つが得意な力士の方が多いと言われています。1 これは、人間のほとんどが右利きであることや、右手を下にして組む方が安定感があることなどが理由として挙げられます。2
しかし、左四つが得意な力士も決して少なくありません。実際、歴代の横綱の中には、左四つを得意とする力士が多く存在します。例えば、第54代横綱の輪島大士は、左の下手投げを武器に「黄金の左」と呼ばれました。1 また、第64代横綱の貴乃花光司は、左四つからの寄り切りや上手投げで多くの勝利を挙げました。3
左四つと右四つの比率は、時代や力士の個性によっても変わってきます。現在の大相撲では、左四つが得意な力士が増えているという見方もあります。 これは、左四つからの攻めが多様化していることや、右四つに強い力士に対抗するための戦術として左四つを磨く力士が増えていることなどが理由として挙げられます。
(1) 輪島大士 - Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BC%AA%E5%B3%B6%E5%A4%A7%E5%A3%AB.
(2) 「左四つ」とは?意味と例文が3秒でわかる! - コトワカ .... https://kotowaka.com/sumou/hidariyotsu/.
(3) 四つ - Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E3%81%A4.
次回に続く。
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