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9月25日の朝焼け。雲が多かったものの、日の出の10分ほど前に、真東〜備前富士真上のあたりに小規模な朝焼けが見られた。 |
【小さな話題】アリに言葉あり!?(2)音を出す仕組み 昨日に続いて、9月15日初回放送のNHK サイエンスzero: ●アリに言葉あり!?農業するアリの“会話”に迫れ! についてのメモと感想。 放送では続いて、村上貴弘さんご自身がスタジオに登場された。なぜハキリアリを専門に研究することになったのか?という問いに対しては、虫好き少年の三大アイドルアリとして『ハキリアリ』、『グンタイアリ』、『ツムギアリ』の3種があること、大学院生の頃に初めてパナマに行ってたまたま初めて出会ったのがハキリアリであったこと、そこから運命的なものを感じて30年ほど研究に取り組んでいるというような話があった。 アリの音に関する研究としてはこれまで、アリが警戒音のような音を出すというようなことは言われていたが、それほど関心が向けられていなかった。 村上さんは、アリが出す音について、「マメ科の葉を切る」「オトギリソウ科の葉を切る」「オウムバナ科の花を切る」「土に埋もれる」「道の見張り」「女王アリの警報」「ゴミ捨て」「攻撃される」「キノコ畑の世話」「幼虫の世話」「巣穴の見張り」というように10種類以上の音を出していることを明らかにした。但し、それぞれの音の意味【←「単に特定の状況で特定の音を出しているということではなく、発信者が出した音が受信者の行動を変化させ、それが群全体にどのような利益をもたらすか」ということかと思う】についてはまだよく分かっていないらしい。
以上のような音については、音の周波数、強さ、持続時間などから7つぐらいの音素(音の最小単位)に分けて数値化し、分類しているという。 なお、日本に生息するアリの中にも音を出す種類がある。岡山理科大学の構内にも生息しているアシナガアリもその1種。音を出すアリと出さないアリの区別は、胸とお腹の間にあるコブのような部分(『腹柄節(ふくへいせつ)』)を2つ持つ種類(『フタフシアリ亜科』)に限られており、日本に生息するアリの約半分を占めているという。 ハキリアリが音を出す部分は、お腹にある。お腹の上の部分には洗濯板のような発音器官があり、スクレーパーと呼ばれる硬い部分でこれをひっかくことで音を出している。その仕組みは、民族楽器のギロに似ている。お腹を上下に揺らすことでスクレーパーと擦り合って10通り以上の音を出していると考えられる。 ハキリアリのようにキノコを栽培するアリには20のグループ(属)があるが、進化の道筋をたどると、
ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、まずハキリアリが出す音は、すべて発音器官とスクレーパーとの摩擦によって作られているという点が興味深い。単に食べている時の口の中の音であるならば、例えばたくあんをコリコリと囓ったときの音と、蕎麦をすする時の音が異なるのは当然だが、ハキリアリの場合はそうではない。また「幼虫の世話」と「キノコ畑の世話」が似たような音になるというのも興味深い。動作としては全く異なる2つの行動が「世話」というカテゴリーでまとめられるとしたらかなりの抽象化ができていることになる。 もっとも、10種類以上の音の「意味」を一括して分析するというのは、AIの助けを借りない限りはなかなか難しそうだ。となると、まずは音の種類の少ないアリから分析し、少しずつ音の種類の多いアリに広げていくというアプローチが考えられるが、どこまで進んでいるのだろうか。 余談だが、放送では岡山理科大学構内にも生息しているアシナガアリが紹介されていた。岡山理科大は私が毎日ウォーキングに出かけている半田山植物園と隣接しており、当然、植物園の敷地内にもアシナガアリが生息しているはずだ。もしかするとこちらの巣がアシナガアリの巣であるかもしれない。 次回に続く。 |