じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 備前富士(芥子山)の山頂から太陽が昇る『ダイヤモンド備前富士現象』の時期がやってきた。写真は10月17日(木)の日の出の様子で、頂上よりは左側(北側)に若干ずれていた。
 10月18日(金)はこの現象が見られる初日になると期待されたが、あいにくの曇り空となった。
 なお、この現象が見られる期間は、は観測地によって異なる。1年に2回、それぞれ3日程度。


2024年10月18日(金)




【小さな話題】「無理数の無理数乗は無理数か?」を巡る微妙な問題

 「無理数の無理数乗は無理数か?」という問題を解説した動画をいくつか見かけた。出典は

平成 19 年度 佐賀大学2次試験前期日程 (数学問題) 理工・農・文化教育学部であり、元の問題は、
次の命題について,真ならば証明し,偽ならば反例をあげよ.
(1) 有理数と有理数の和は有理数である.
(2) 無理数と無理数の和は無理数である.
(3) 無理数と無理数の積は無理数である.
(4) 無理数の無理数乗は無理数である.
であり、そのうちの(4)がこれに該当していた。

 この問題にはよく知られた解法として背理法による反証がある。
  1. (√2)√2は無理数か、もしくは有理数である。
  2. (√2)√2が有理数であった場合、これが「無理数の無理数乗は無理数である.」の反例となる。
  3. (√2)√2が無理数であった場合、さらにその√2乗を考えると、
    ((√2)√2√2=(√2)√2√2=(√2)2=2
    となる。これは、(√2)√2が無理数であったと仮定した場合の無理数の無理数乗であり、結果が有理数になることから反例となる。
  4. 以上、(√2)√2が有理数であった場合も無理数であった場合もいずれも反例が存在するので、「無理数の無理数乗は無理数である.」には必ず反例が存在することが証明された。


 おそらくこれで満点を貰えるとは思うのだが、私が1つ気になるのは、この背理法では、「反例が必ず存在する」ことは証明しているが、具体的な反例は1つも挙げられていないという点である。そもそも(√2)√2が無理数か有理数かは分からないままであるし、3.もまた、(√2)√2が無理数であったと仮定した場合に限っての反例である。仮定のもとで示された結果をもって反例と言ってよいのか、少々疑問に思うところがある。こうしてみると、リンク先で別解としている、

(√2)log29=3

による反例のほうが無難であるような気もする。【但しlog29が無理数であることはちゃんと示しておく必要がある】

 ちなみに、もとの入試問題の変形として、

●無理数の無理数乗は無理数か? 証明または反証をせよ。

という問題が考えられる。この場合は「反例を挙げよ」ではなく「反証せよ」なので、√2の√2乗を用いた背理法でもちゃんとした反証になっていると言えよう。

 さらに、もっとシンプルな、

●無理数の無理数乗は無理数か?

という問題が考えられるがこれは何をもって正解とするのか、結構難しい。というのは、「無理数か?」という問いに対しては、
  1. 常に無理数である。
  2. 無理数になる場合もあれば有理数になる場合もある。
  3. 常に有理数である。
という3つの解答が考えられる。正解は2.であるがこれを証明するには、単に有理数になる例を挙げるだけでなく、無理数になる例も挙げておく必要があるのではないか。

 あと、上掲の佐賀大の入試とは別に、

●a、bは無理数で、abが有理数であるようなa、bを1組求めよ。

という問題もあるようだ【1986年大阪大学 前期理系第1問】。

この場合は、冒頭に紹介した背理法は使えない。

 なお、以上に関連したYouTube解説動画をざっと検索したところ、 が目にとまった。



 あと、冒頭の佐賀大の問題にあった無理数や有理数同士の四則演算の結果だが、こちらに詳しい解説がある。けっこう面白いのは、「同種の無理数の符号を変えただけで無い場合や同種の無理数を掛け合わせた場合以外のような、あまり自明とはいえないケースで、全く異なる2つの無理数の和や積が有理数になる例がないのだろうか?」という問題であるが、これは相当に難しそうだ。そもそもπとeの和や積が無理数かどうかは分かっていない。ちなみにこのあたりの議論は、ChatGPTとやりとりしたことがあった。