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ウォーキングの途中でタヌキに遭遇した。この近辺ではたまにアナグマを目撃するが、タヌキを見かけたのは今回が初めて。 |
【連載】ヒューマニエンス 「“不安” ヒトが“自らつくった”進化のカギ」(9)セロトニンの両面性(2) 昨日に続いて、11月25日にNHK-BSで再放送【初回放送は6月1日】された、NHK『ヒューマニエンス』、 ●「“不安” ヒトが“自らつくった”進化のカギ」 についてのメモと感想。 本日は、昨日紹介した2つの実験研究について私なりのコメントを述べさせていただく。 まず、銅谷賢治さん、宮崎勝彦さんたち(沖縄科学技術大学院大学)のグループによる実験であり、出典は、 ●Miyazaki, et al. (2014). Optogenetic activation of dorsal raphe serotonin neurons enhances patience for future rewards. Current Biology, 24, 2033-2040. となっていた。 今回の放送のテーマが『不安』であったせいか、この実験結果に関しては、放送の中では「マウスはエサを待つ間不安になっていくはずだ。」というように解釈されていた。要するに「セロトニンを刺激すると【不安が減り】より長時間エサを待つことができる」という話に導入する意図があったようだ。もっとも、元の論文の要約を見た限りでは、「不安」という言葉はどこにも出ておらず、また、 結論部分は、 ●These results show, for the first time, that the timed activation of serotonin neurons during waiting promotes animals' patience to wait for a delayed reward. となっていた。要するに「遅延報酬を待つことへの忍耐力を促進した」ということであって、別段、「エサが出てこなくても不安にならなかったのでより長時間待つことができた」というわけではなさそうだ。 論文の全文を入手していないのではっきりとは言えないが、以上を見た限りでは、この実験結果を説明するにあたって「不安」概念は必ずしも必要ではなく、単に記述概念として「忍耐力」を用いればそれで済むように思われた。 遅延報酬の実験では、待ちきれない傾向は「衝動性」という言葉で呼ばれる場合もあるようだ。但し、「忍耐力」も「衝動性」もそうだが、日常生活でもしばしば使われている言葉であるゆえ、操作的に定義された用語が一人歩きして日常生活現象に拡大解釈されてしまう恐れが無いとは言えない。 なお、今回の放送内容の範囲では、『不安』を説明概念に使う必要はないのではと述べたが、こちらの論文【小野田ほか(209).遅延報酬選択における衝動性と抑うつ傾向. 脳と精神の医学, 20, 249-254.】に記されているように、抑うつ傾向と衝動性については関連があるとされているようだ。要点を抜粋【改変あり】させていただくと、
●セロトニンは今は得られていないかもしれないが長期的には得られる報酬を予測、それに対する行動をサポートするという機能がある。 ということ自体はその通りであろうとは思う。 次に、大村優さん(北京脳科学研究所)の実験だが、こちらのほうは大村さんが新発見に至ったエピソードを紹介したものと考えられるので、方法や結果の解釈についてあれこれ述べるものでは無さそうだ。要するに、セロトニンには不安を和らげる働きがあると言われてきたが、実際には大脳の『背側縫線核』のほか『正中縫線核』の2か所が関与しており、後者でセロトニンが受け取られた場合には逆に不安を増やす効果があるということが理解できた。但し、アクセルとブレーキの両方で最適なスピードを維持するという喩えが、背側縫線核と正中縫線核のバランスだけに相当しているのか、それとも、別のところでドーパミンのようなセロトニン以外の物質が合わせて関与しているのかはイマイチ分からなかった。 なお、スタジオで河田さんから、「動物は外からの刺激が原因だが、人間は過去からの記憶とかが作り出すものがきっかけとなって不安が生じる可能性がある」とコメントされていたが、これはなかなか興味深い。私の考えとしては【というかすでに関係フレーム理論などで言われていることの請け売りかもしれないが】、過去の出来事自体はすでに起こってしまったことで変えることはできないし、また本来は中性的、つまり「事実は事実」に過ぎない。それが何らかの不安の原因になりうるのは、記憶が再生される過程で情動的な反応が派生されるからである。記憶そのものは次から次へと再生されていくためそれを阻止することはできないが【無理に阻止しようとするとますます再生されてしまう】、ネガティブな情動反応を切り離して受け流すことは可能であろう。 不定期ながら、次回に続く。 |