じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] 農学部農場の梅の木に珍しい鳥が来ていた。近づくと逃げてしまったので、細かい特徴は分からなかったが、たぶん、アトリではないかと思う。動物行動学で、さえずりの刷り込みの面白い例として知られている。


3月14日(火)

【思ったこと】
_00314(火)[教育]『受験勉強は子どもを救う』か(5)受験制度が社会や大学教育に与える影響

 昨日の日記の続き。きょうは、この連載の元ネタである和田秀樹氏の『受験勉強は子どもを救う』(河出書房新社)に戻って、「第2部:受験勉強は人生に役立つのだろうか」(149頁以降)、という問題に進んでいきたいと思う。

 和田氏は、「受験の要領と人生の要領はどう違うのか」(156頁〜)に関連して、
  1. 完全に異論のない理想的な受験システムはありえない。最善のものを選ぶという妥協が必要。
  2. 1つの選別だけでその人の一生を決めてしまうシステムにしてはいけない。
という2点を指摘しておられる。新潟の女性長期監禁事件が発端となって問題視されているキャリア制度などは、まさにこの2番目の問題の最悪のケース。警察官として長年経験を積んだ人はなく、公務員上級職に採用されてロクに実体験をもたないような人が税務署長や警察署長になってしまうというのは、下積みの経験の重みをないがしろにする愚策だと思う。もし、上記2.を大学入試や学歴社会の弊害であると主張するなら、それ以前にキャリア制度を根本的に見直すことが必要だ。

 次に和田氏は、社会的な選別システムとして、かなり大ざっぱだと断った上で
  • ヨーロッパ型の世襲社会
  • アメリカ型の実力社会
  • アジア型の学歴社会
という3つの選択肢を比較しておられる。もっとも、このラベリングには少々難があるかもしれない。例えば、以前に在外経験の長い某Web日記作者が書いておられたが、アメリカが実力社会かどうかは大いに疑問。アメリカン・ドリームというのはごく一握りの成功例が誇大に伝えられているだけだと聞いたことがある。「アジア型の学歴社会」というのも資産家の子弟の中での受験熱と言えないことがない。

 ま、それはそれとして、受験勉強の功罪や入試制度の問題は、単に大学側の都合ではなく、それが総じて支配構造や経済の発展にどういう影響を及ぼすのかというところまで考えていかなければならないことは確かだ。



 やや話題がそれてしまうが、大学の教育の改革も受験制度を抜きにしては語れない。最近の大学改革に関する審議会答申などでは、「アーリー・エクスポージャー」、「アカデミック・アドバイザー」、「アドミッション・オフィス」、「インターンシップ」、「オフィスアワー」、「グレード・ポイント・アベレッジ」、「シラバス」、「セメスター」...というようにカタカナ表記のキャッチフレーズばかりがやたらに目立つ。これらの多くはアメリカの教育制度由来のもの。しかし、周知のように、アメリカと日本では受験制度が根本的に異なり、これは大学教育の内容にも大きな違いを与えている。前の章に戻るが、和田氏は、28〜29頁で、
......アメリカの学生は、母国語でたった二、三枚のレポートを書くのに、まる一日とか、それ以上かかってしまうこともあると聞く。.....アメリカでは、日本流に言うなら、第一外国語を、日本の中学校レベルのものにするのに最低二年くらいかかっている。一行の作文を、十問くらい宿題に出されるとアップアップなのだ。...[29頁]
と、伝聞あるいは自らの印象にすぎないことを断ったうえで指摘しておられる。このあたりは、日本でもアメリカでも大学間でかなりの格差があると思うが、いずれにせよ、それぞれの大学の実状を考慮せずに、他の大学でもやっているから、外国でもやっているから、というような安易な理由に流されない姿勢が大切かと思う。

 もっとも、穿った見方をすれば、答申の執筆者もそれらを無批判に受け入れようというのではなかろう。日本の大学教育があまりにも旧来の因習に囚われているので、それに風穴を開けるためにわざと聞き慣れない用語を多用して新鮮味を出そうとしているだけなのかもしれない。
【ちょっと思ったこと】
  •  かなパパさんが3/13付の日記で、“円周率が「3」になる!?”という話題を取り上げておられた。仮に円周率が「3」ピッタリであったとするとどういうことが起こるだろうか。
     
     まず直径「1」の円に内接する正n角形の外周の長さ(辺の長さの合計)Lを考える。Lは

    L=sin(π/n)×n

    として計算できるので、n=6つまり正6角形のときに外周の長さ(辺の長さの合計)もちょうど「3」になる。つまり円周率を「3」と見なすことは、円と正六角形は同じ大きさであると教え込むことになると言えよう。

     ついでに面積のほうも考えておこう。円周率が「3」であるとすると、半径が1であるような円の面積は1×1×3=3となる。この円に内接する正n角形の面積Sは

    S=1×sin(2π/n)÷2×n

    として計算できるので、n=12つまり正12角形の時に「3」ピッタリの面積をもつことになる。アナログ時計の目盛りを結んだ多角形を「これが円だ」と思わせるようなものか。
     ちなみに上記でπのところをαと置き換えて、

    L-S=sin(α/n)×n−1×sin(2α/n)÷2×n

    という式で、nが無限大に近づいた時にL-Sの極限値がゼロになるようなαを求めるとこれが円周率になるはずなんだが、ラジアンを使った三角関数の定義には最初からπの定義が含まれているからこれをもってπの定義とするわけにはいかないかも。30年以上前に習ったことなので忘れてしまった。
【今日の畑仕事】
【スクラップブック】