【思ったこと】 _01207(木)[一般]21世紀の夢物語への疑問
12/8の朝日新聞によれば、科学技術庁・科学技術政策研究所は7日、「21世紀中に実現する、あるいは実現して欲しい画期的な新技術と、生活や社会の変化」について大
学や企業、国公立研究所の一線研究者約4600人に自由な意見を求めたアンケート結果を公表したという。回答のあった約1200人の意見を分類したものであり、記事では「主な展望」として5点が紹介されていたが、そのうちの3点にはかなりの疑問がある。
- すべての病気が治療できるようになり、健康な高齢化社会が訪れる
感染症や癌などが治療できるようになると人間の死は老衰か、事故死だけになってしまう。人口の増加や少子化問題にどう対処するのか、事故による障害者をどうサポートするのかという課題が残る。難病や70歳未満で早死にする原因となるような病気の治療法を確立することはぜひとも必要だが、平均寿命を100歳、110歳と伸ばすよりは、死を不安に感じないような老後の保障に重点をおいたほうが健全な高齢化社会の実現になると思う。
- 脳の活動を信号に変換する技術が生まれ、考えただけでコンピューターヘ入力できるようになる。この技術の応用で動物とのコミュニケーションが可能になる
考えただけでコンピュータ入力ができるようになってしまったら、嘘はつけない。独裁政治に悪用される恐れもある。エッチなことを考えただけでセクハラで訴えられる恐れもあるだろう。画像やイメージまで取り込むことは不可能であるし、仮にテキスト化だけを目指すにしても、雑然としたアイデアが頭の中に駆けめぐっている状態では1分間に何ギガバイトもの莫大な量になってしまって分類整理は不可能。30分のビデオ記録でもそれを再生して分析するとなると半日かかってしまうことがある。コンピュータ入力された思考内容を読み返すだけで一生かかってしまうかも。
- 倫理観、道徳観の欠落や衝動的な犯罪行動と脳機能との関連が解明され、犯罪がほとんどなくなる
明らかな脳障害に起因する不適応行動や犯罪は抑止できるようになるだろうが、それらはほんの一部。多くの犯罪や不道徳な行動は、それらが強化されるからこそ生じる。犯罪が生じる社会環境、あるいは、犯罪を起こすことが得になるような随伴性を改善しない限り問題は解決しない。犯罪行動の原因が脳機能の欠陥にあるなどと本気で考えているとしたら笑止千万だ。
ま、夢物語ということなので、実現しようがしまいが、弊害があろうとなかろうと、とりあえず想像の翼をはばたかせてみるのもよいかもしれないが、結局、科学技術だけで実現できるのはこの程度にとどまるという見本のようなものかもしれない。それよりも行動科学の発展と実践、なるべく手を加えない自然との共生の道をさぐったほうがよさそうな気がする。
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