じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] イエローナイフにあるマクドナルド。カナダでは最北の店であるという。ここまで来てわざわざマクドナルドで食事をする日本人も居るまいとは思うが、オリジナルのサービス券やスタンプカードを貰えるならプレミアムがつくかもしれない。マクドナルドの店と言えば、昨年の夏、北京でも見かけたことがあった。ファーストフードのグローバル化の象徴か。



9月5日(水)

【ちょっと思ったこと】

教員合宿研修

 9/5から9/6にかけて、岡山大学教育開発センター主催「平成13年度教員合宿研修:学部一貫教育の中で教養教育をどうとらえるか〜カリキュラムの構造化を中心に〜」が行われ、約60の教職員が参加した。岡山大学では来年度から教養教育科目を6つの主題科目と個別科目(どの主題にも属さない科目、自然科学系の基礎科目や実験が多い)に分け、主題科目については、少なくとも4つの各主題について1授業科目計8単位を履修することを原則とする指針を決定した。今回の合宿研修は、来年度主題科目を担当する教員が、主題別の分科会に分かれて構造化を円滑に進めるための議論を行うことを目的としたものであった。

 構造化についての具体的検討内容はいずれ報告書が公刊され、(たぶん)Web上で公開されることになるので、そちらのほうに譲りたい。

 今回、教養科目の構造化が行われた背景には、
  1. 単位の取りやすい楽勝科目に集中する安易な科目選択
  2. 自分の専門関連分野以外の科目に関心を持たない偏向した科目選択、例えば理科離れの現象
  3. 履修希望のアンバランスを調整するために行わざるを得ない抽選制によって生ずる履修機会の制限
といった、一部の学生に見られる履修上の問題点がある。かつて教養部が設置されていた時のように、「人文」、「社会」、「自然」からそれぞれ何単位以上というように義務づけをしても、関心の無い科目を無理やり取らされている限りは学習意欲は高まらない。

 「楽勝」科目への集中や科目選択の偏りが生じる一因は、開講されている教養科目が並列的、個別的であり、それぞれを履修することが自分の将来にどう連関するのか、見えにくい点にもある。各科目をクラスター化し、さらに、主題の目ざす方向に「ベクトル化」させた内容を含むように改善していけば、学習意欲を高めることにもつながるはずだ。

 教養科目についてはこれまでにも様々な議論があり、極論としては、そういうものは不要であり、卒業後に即戦力として使えるような「役立つ」科目だけを教えればよいという意見まである。しかしその一方で、自己や他者、いのち、世界観などについて考える機会を求めてカルト宗教の団体に勧誘され、留年を繰り返したあげく除籍になるという学生も出ている。大学の授業だけですべてを充たすことができないにせよ、今回の改革によって、学生が「生きる」ことを考える際に大学の授業をもっと活用できる機会を増やすことができるようになればと思う。
【思ったこと】
_10905(水)[心理]行動分析学会年次大会(5)行動分析学の点検(2)

 9/4の日記の続き。

1日目午後:行動分析学の点検:強化と強化スケジュール(2)対応法則

 1番目の話題提供は、平岡恭一氏の「強化と選択行動理論」であった。平岡氏は、まず、ソーンダイク(1913)の「効果の法則」からHerrnsteinの「対応法則(マッチング法則)」[Herrnstein, R. J. (1970) . On the law of effect. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 13, 243-266. ]へと発展させられた中で何が付け加わったのかという点を説明された。

 ここで念のため、ソーンダイクの「効果の法則」を確認しておこう。
満足するような結果をもたらす反応は強められ、不満足あるいは嫌悪を伴う反応は弱められる
この「法則」の循環論的記述に関わる問題は、9/4の日記ですでに述べた通りであるが、この「法則」は

●行動はその結果によって変わる

という行動随伴性の基礎に関わる原理のほかに、

●有用な結果をもたらす行動は増え、有害な結果をもたらす行動あるいは何の役にも立たない行動は減る。

という意味を含蓄している。しかしこの原理だけでは、有用な行動は無限に増えていくことになる。果たして動物はそれだけで環境に適応できるだろうか。「対応法則(マッチング法則)」は、それらに対して、「ただ際限なく反応を増やすのではなく、最適な遂行をめざす」ということを示唆するものであった。平岡氏は
  • 背景的強化を考えなくてはならない
  • 強化は複数の行動の間の均衡点を設定する
という2点を挙げる一方、説明理論としての不十分さを指摘し、その上で、逐次改善理論、巨視的最大化理論、微視的最大化理論、その他の諸モデルを概観し、今後の方向を展望された。



 以上が平岡氏の話題提供の概要であった。「対応法則」は、実は私自身の卒論のテーマであった。
  • 日常行動のすべては選択行動であること
  • 選択行動はしばしば葛藤状態をもたらすこと
という状況のもとで、動物や人間がどこまで最適な行動を取りうるのか、を考えるツールとして対応法則は大いに意義があると思う。もっとも、私が知りうる範囲で言えば、この方面の研究は
  • 量的モデルの改訂のために研究のエネルギーが注がれることの問題点や限界
  • 質的に異なる好子(強化子)が個別に随伴するような選択行動(←実際の日常生活はこれ)をどこまで分析できるか
  • 「強化率」や「強化数」というように、随伴させる事象の機能を固定的にとらえることの弊害。
という点でいろいろと問題点をかかえているようにも思う。