じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] バレンタインデーのチョコ。といっても私が貰ったわけではなく、妻が知り合いの奥様連中と交換したものばかり。要するにバレンタインにかこつけてチョコ菓子づくりを楽しむということらしい。


2月14日(土)

【ちょっと思ったこと】

映画のトリックと東洋人への偏見

 夕食時に「ビートたけしのこんなはずでは」の一部を視た。この日は2時間のスペシャルもので、過去の映画の特撮技術やエピソードが紹介された。

 特に面白いと思ったのは、「ロード・オブ・ザ・リング」で使われた様々な技法である。この番組で初めて知ったのだが、主人公のフロドの身長は実際には168cmあるという。白人としては小柄のほうだろうが、ホビットの体格には合わない。ではどうするか。番組によれば、1つは周りの景色を大きく見せること、もう1つは、「強制遠近法」という手法を活用することであったという。

 そういえば、かつて「心理学概論」の授業をやっていた時には、物はどうやって立体的に見えるのかという話をしたことがあった。2つの目で対象を眺める場合には、水晶体の厚さ調整のほか、両眼の輻輳や視差が重要な手がかりになる。また、車窓から景色を眺めると分かるように、運動の視差も重要である。ところが平面に投影する映画の場合には、水晶体は一定距離に固定され、両眼の輻輳や視差を使うことができない。その分、いろいろなトリックが使える。

 「ロード・オブ・ザ・リング」第一作の最初のほうに、フロドがガンダルフと一緒に馬車に乗るシーンがある。映像では並んで座っているように見えるが、実際は、フロドのほうが遠くに座ることで小さく見せているのだという。しかし、距離が異なれば、運動視差でばれてしまう。そうならないよう、セットを巧みに動かしたというからすごい。ちょうど先日この映画をビデオに録ってあったのでその部分を再生したり静止画でじっくり眺めてみたが、どう疑っても並んで座っているようにしか見えなかった。

 そういえば、あの映画に登場するゴラムはどうやって撮影していたのだろう。少なくともCGのようには見えない。コマ録りなのだろうか。




 子供の頃に観た怪獣映画などはどれもウソっぽく、いかにも着ぐるみの人間か、合成写真であるのが丸わかりだった。それに比べると「ロード・オブ・ザ・リング」などは確かによくできていると思う。

 TVゲームなどを通じてバーチャルな世界が日常化してしまったことによって、子どもたちの間でも「あれってホンモノ?」というような疑問が出てこなくなった可能性もある。かつては、現実世界が唯一の日常世界であり、怪獣や宇宙人はウソっぽい作り物にすぎなかった。ところが、RPGゲームなどを通じて、バーチャルな別の世界の中でも、能動的に働きかけ、いろいろな発見や交流ができるという体験を繰り返していると、「ロード・オブ・ザ・リング」がホンモノか作り物かというのはどうでもよくなってくる。自分に関わりの義務が無いと確信できる限りは、映画の世界も、イラクやパレスチナでの戦闘も、南極中継も火星中継もみな同一次元の世界になってしまうのかもしれない。



 夕食後の散歩から帰ってみると、今度は、「猿の惑星の猿は、日本人だった」という裏話を紹介していた。オランダ人フランス人である原作者は「戦場に架ける橋」の作品でも知られているように、かつて、日本軍の捕虜として酷使された経験がある。また戦争中は、敵国からは日本人は人間と猿の間であると蔑視されていたようだ。「戦場に架ける橋」の美談では満足しなかった原作者が本音を描いたのが「猿の惑星」だというのがこの番組の新説?のようだが、文学者は実際にはどう考えているのだろう。

 「猿の惑星」が日本人蔑視映画かどうかは何とも言えないが、欧米の映画でしばしば日本人、あるいは東洋人、ロシア人への偏見が見られるのは確かだと思う。よく知られているのが「007」のシリーズである。映画を観る時には、単にストーリーを楽しんだりスターにあこがれるばかりでなく、そこにどのような人種的偏見やステレオタイプがあるのかも見抜くべきである。