じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] [今日の写真] 東大・安田講堂の内部に「出現」した巨大マンモス。演者は中島信也氏。ネットで検索したところ、6月14日に立命館大学で、わたしのちいさなCM人生 「hungry?」までの道、「燃焼系」からの道。という講演会が開催されるようだ。きっと、本日の体験も語られることだろう。

写真右は、シンポ終了後に撮影した安田講堂前のハルジョオン。研究資金潤沢な東大でも雑草除去には手が回らないようだ。押し花にして、「東大にハエル」→「東大に入る」という東大合格祈願のしおりにすれば儲かるかも。


6月12日(土)

【思ったこと】
_40612(土)[教育]情報学環新生記念シンポジウム(1)

 東京大学・安田講堂で開催された東京大学大学院情報学環・学際情報学府新生記念シンポジウム「智慧の環・学びの府:せめぎあい、編みあがる情報知」に参加させていただいた。

 この記念シンポは、大学院情報学環・学際情報学府と社会情報研究所(かつての新聞研究所)の融合を記念して開催されたものであった。なお以下はすべて長谷川の聞き取りに基づくため、不正確である可能性がある。あくまで個人の感想に過ぎない点を予めお断りしておく。また、リンク先は、先方のサーバーのメンテやurl変更によりアクセスできない場合があります。

 シンポではまず花田情報学環長が、学際性とネットワーク性に加えて自己革新が必要であるとの開会挨拶をされた。

 続いて小宮山・東京大学副学長が、東大では初めての部局統合となる、この新しい「学環」の特長についてお話された。地方大学で部局統合と言うと定削によるポスト減といった縮小生産のイメージが強いが、今回の統合は、むしろ発展形であり、細分化の弊害を克服することに意義があるようだ。このことについての感想は、後半のパネルディスカッションで詳しく触れられた。

 次に、第一弾として吉見氏と西垣氏が文化・人間情報学コースの研究紹介をされた。情報学環ではいくつかの興味深い研究プロジェクトが遂行されているが、今回は赤ちゃんプロジェクトとメルプロジェクト(Media Expression, Learning and Literacy Project)が紹介された。

 ごく短時間のビデオ紹介であったが、赤ちゃんプロジェクトというのは、どうやら、家庭で撮影されたビデオをもとに、発達の動画カタログを作り上げるというような研究のように見えた。発達心理学ではすでに、ピアジェの理論などを取り入れた各種の発達診断が広く知られているが、これらはどちらかと言えば、人工的なテスト環境における行動リパートリーの発現の確認に過ぎず、日常生活から遊離している感があったが、このプロジェクトでは、日常生活世界の具体的な事物との関わりに重点が置かれているように見受けられた。いずれも興味深い取り組みであったが、方法論そのものを新しく作っていくという点で相当大変であろうと感じた。

 そのあとの話題でも似た部分があるが、今回のシンポで私が関心を持ったのは
  • 「学環」という概念。各種資料によれば、従来の研究科が「専門深化と恒常性を基本とする縦型」組織であったのに対して、この組織体制は「構成員の流動性と全学的連携」による横型組織という特長があるという。学環所属の少数の基幹教員と任期付きの流動教員とで構成されるということだが、その連携が重要であることはもちろん、分野の異なる教員の間の連携がどこまでうまく機能するかがカギとなっているように思われる。
     じっさい、今回紹介されたような研究プロジェクトは、どうやら、個々の研究者の「本業」ではなさそうに見えた。これは、明日以降に述べる「スペシャリストかジェネラリストか」にも関係してくるのだが、個々の分野で優れた研究業績を挙げている研究者たちが副業的に共同課題に取り組んでいる、という感じがしないでもなかった。
  • 研究と教育の問題。「学環」というのは研究組織の名称であり、これとは別に教育組織そしての「学際情報学府」が設置されている。これは、4年ほど前、大学院充実化政策の一環として、教育部門と研究部門を分けて設置できるよう法改正がなされたことで実現したものであり、従来の大学院が陥っていた研究偏重の傾向を是正し教育も重視した大学院づくりを進めることが狙いとなっている。個々の教員が研究部門において大きな成果を上げられるであろうことは疑いの余地が無いが、教育部門での成果となると短期的な評価は難しい。それと、大学院教育では、教員が熱心であればあるほど型にはめられがち、という弊害も皆無とは言えない。かつての京大(←最近のことは分からない)のように、好きなことだけやっても卒業できるという自由な学風のほうがユニークな人材が輩出する可能性があるかもしれない。
 次回に続く。