じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 大学構内で全身が真っ赤なトンボを見かけた。大きさ、全体の色などから、ショウジョウトンボであると判断した。


6月19日(土)

【思ったこと】
_40619(土)[心理]血液型差別番組を考える(1)血液型をネタにしないと娯楽性を保てない番組、それをもり立てる大脳生理学者

 夕食後、娘が視ていたクイズ番組に、心理学ではよく知られているダルメシアン犬の絵が出てきた。その後も、いろいろな多義図形(だまし絵)を見せて、隠された別の絵を当てるという問題が出された。画像の著作権さえクリアしているのなら、そういう図形をクイズに出すことはいっこうに構わないのだが、気になったのは、血液型差別表現だ。子どもたちだっていっぱい視ているはず。「○○型が得意な問題」などとレッテルを貼ることの社会的影響はちゃんと考えているのだろうか。

 で、いったい何のクイズ番組なのかと思ったら、何のことはない、これが、かの「クイズ!ホムクル」だったのか。あとでネットで調べたら、この日のネタは「血液型びっくり対決実験…神経質A型VS 社交的O型▽超快感…芸術脳UPだまし絵クイズ」という内容であることが分かった。多義図形(だまし絵)も各種数理パズルも、推理ものクイズも、多少クイズ好きな人なら何度も目にしている使い古しばかり。「血液型」でも加味しないと娯楽性が保てないということか。

 この番組については6月4日の日記で批判的に取り上げたことがあった。そのさい証拠を保全しておこうとDVD録画はしてあったのだが、一度も再生するヒマがなかった。なお、6/4の日記には、この番組のことを「私も時たま楽しんでいる」と書いたが、あれは全くの勘違い、私が時たま楽しんでいたのは、19時から開始の「脳内エステIQサプリ」のほうだった。




 さて、今回のことが気になったので、6月5日にDVD録画した2時間物を早送りして、とりあえず、番組全体を概観してみた(←視たくもない番組を、問題点指摘の目的だけのために2時間もつきあうのはまっぴら)。

 そこで分かったのは、やはり、「A型は几帳面」、「O型は社交的」、「B型はマイペース」といったレッテル貼りがまかり通っていることだった。時折「個人差があります」というような断り書きも出ていたが、断れば免罪されるというものではなかろう。例えば、几帳面な人と几帳面でない人が居たとする。レッテル貼りが行われていなければ、単に「あなたは几帳面だ」、「あなたは几帳面でない」と、行動傾向に言及すれば済むこと。ところがこのレッテル貼りによって、
  • 「あなたはA型ですか。だから几帳面なのですね」
  • 「あなたはA型なのに几帳面ではないですね」
  • 「あなたはA型でないのに、意外と几帳面ですね」
  • 「あなたはO型ですか。だから几帳面ではないのですね」
といった偏見が生じる。「几帳面」という客観的な行動傾向がその人の血液型によって、増幅されたり、割り引かれたりするわけだ。

 「個人差があります」と断る時の「個人差」が、血液型の違いによって生じるかもしれない行動傾向の差を圧倒的に上回るものなら、そもそも、血液型別の考察は、実用に耐えうるだけの予測力も説明力も持たないはず。ならば分ける意味が無い。「血液型による違いがあります。但し、個人差があります」というのは、そうじゃなくって、

●個人差はあるかもしれないが、血液型による差違は動かしがたい真実だ

と言っていることと同じだ。血液型による予測が外れた時の言い訳にはなっても、偏見助長の免罪には決してならないということを、制作者は肝に銘じておくべきだろう。




 この番組では、北海道大学医学部のS教授が肯定的な解説をしていることも分かった。S教授が「脳」をキーワードにそれらしき発言を続けているということは前から知っていたが、それはここではふれない。とにかく、北大教授という権威づけのもとで

●A型が几帳面、繊細、慎重であるのは、免疫力が弱いから
●O型が社交的なのは免疫力が強いから

などと公言される以上は、その社会的影響についてもちゃんと責任をとっていただきたいものだ。例えば、「あなたはA型なので免疫力が弱い」という理由で、お見合いや就職を断られた場合、どう責任をとってくれるのかということ。番組を視た子どもたちの間でイジメが起こった場合も同様だ。

 本当にO型よりA型のほうが免疫力が弱いというなら、行動傾向への因果的説明を試みる以前に、まずは医療現場での応用を考えるべきではないかなあ。血液型による免疫力の差が本当に重大であるというなら、例えば、インフルエンザワクチンが不足していた場合にはA型から優先的に予防注射を実施するという方策だって考えられる。医学部教授なら、まずは健康や医療に役立つ部分から公的な取り組みに着手すべきだと思うのだが...。

 番組の終わりのほうでは、「血液型研究家」のS氏も登場されていたようだ。おやっ、北大のS教授と「血液型研究家」のS氏は、いつから共同研究を始められたのだろう。なおざっとみた限りでは、「血液型人間学」者のN氏はこの番組には関与されていない模様。

 今回は、DVD録画を早送りしただけの情報に基づく感想。時間のある時に、もういちど念入りに録画内容をチェックし、合わせて北大S教授がどういう公的発言をされているのか、もう少し調べてみたいと思っている。

 なお「血液型性格判断」について批判的なことを書くと、必ずと言ってよいほど、抗議や嫌がらせのメイルを送ってこられる方があるが、こちらに御配慮いただき、ご意見はご自分のホームページに掲載していただくようにお願いしたい。