じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 秋のバラ。向老期の人生の象徴?


11月11日(木)

【ちょっと思ったこと】

yahoo300MB、やっと見通し

 11月7日の日記ほかで繰り返し指摘していることだが、Yahoo!ジオシティーズは10月5日より、10月下旬より、ホームページ容量が大幅にアップ。通常で50MB、ジオプラス(Yahoo! BB会員は無料)なら300MBをお使いいただけます。という会員拡大・継続キャンペーンが10月5日以来展開されているにもかかわらず、11月になっても25MB(BB会員の場合)までしか使えない状態が続いている。この事実は、景品表示法:
商品又は役務の品質、規格その他の内容について実際のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示
に反する可能性があるのではないかと考え、すでに公正取引委員会に証拠画像を送っているところではあるが、11月11日になって、Yahoo!ジオシティーズ側から、11月18日前後に増量作業が完了する見込みである(但し、サーバーの状況など諸般の事情により前後する可能性あり)との御連絡をいただいた。

 上記の「サーバーの状況など諸般の事情により前後する可能性」が想定されることは理解できる。しかしそれならなぜ、10月5日という早い時点で

●10月下旬より、ホームページ容量が大幅にアップ。通常で50MB、ジオプラス(Yahoo! BB会員は無料)なら300MBをお使いいただけます。

というキャンペーンで会員拡大をはかったのか。またその遅れについて、なぜWeb上で一般向けのお知らせを出さない(11/12朝現在)のだろうか。

 あくまで仮の話だが、
  • A社;300MBのスペースをきっちり確保した上で、11月上旬から300MBをセールスポイントにした会員拡大キャンペーンを展開。
  • B社:「10月下旬から300MBに増量」という会員拡大キャンペーンを10月上旬から展開したが、実際の増量は11月下旬。
という2社があったとする。この場合、結果的にはA社のほうがお得であるが、先に広告を出したB社のほうがたくさん会員を獲得できるかもしれない。となると、公正な競争とは言い難い問題が生じる。

 この問題が景品表示法違反にあたるかどうかは公正取引委員会のほうでご判断いただくことになると思うが、とにかく有料会員は、11月から300MB使えるという期待のもとに契約を続行しているわけだから、このことによって生じた不信感は、そう簡単にはぬぐい去ることができない。

【思ったこと】
_41111(木)[心理]日本理論心理学会第50回大会(6)日本発の理論を考える(その1)

 11月6日〜7日に開催された日本理論心理学会第50回大会。今回からは


●シンポジウム「日本発の理論を考える」
司会:繁桝算男氏 (東京大学)
パネリスト
  1. 理論的営みを盛んにするには 森正義彦氏(創価大学)
  2. 日本発の理論を考える-先人の足跡を訪ねて- 大山正氏 (日本大学)
  3. 日本発の理論を考える-理論不毛の原因と今後の課題- 江川■成氏(■:「王」に「文」、十文字学園女子大学)
  4. 日本発の理論を考えるために-平凡な研究者がオリジナリティのある研究をするために- 無藤隆氏 (白梅学園短期大学)
  5. 創造的研究の育成のために-創造的認知研究の立場から- 鈴木宏昭氏 (青山学院大学)
について、感想を述べさせていただくことにしたい。

[今日の写真]  まず上記の5件の話題提供の内容であるが、1.の森正氏の話題提供は、心理学の研究・教育において理論が必要であるという趣旨、2.の大山氏と3.の江川氏は「日本発」に重点を置いた話、4.の無藤氏と5.の鈴木氏は、オリジナリティや創造性に関する内容であった。参加者は非常に少なかったが、15時〜18時の3時間に及ぶシンポと、その後の懇親会での率直なコミュニケーションを通して、学界の重鎮の先生方から貴重なお話を伺うことができた。




 さて、1番目の話題提供は森正氏の「理論的営みを盛んにするには」という内容であった。森正氏は、心理学研究者、特に日本の心理学研究者の理論的営みが低調である理由として、理論の必要性や重要性が十分に理解されていないことを指摘された。森正氏に言わせれば、心理学は未だに「信頼性と適合範囲の仮説群のモザイク的集合」の様相を呈している。そこには素朴帰納主義がある。しかし、理論は、経験(帰納)だけから収束するものではない。抄録から引用させていただくと、
.....比較的安定した類似の組合せに対応して、何度か同様な法則が帰納されたとしても、その他の条件の組み合わせに対しても同様な法則が得られるかどうかの保証は、帰納的手続きの範囲では得られない。いいかえると、その法則性に影響する可能性のある条件の次元を、帰納的方法の範囲では確定することができない、...
ということになる。

 ここまでのお話の内容は、ヒュームの経験主義やカントの哲学を思い出させるものがあるが、心理学の身近な話題である実験的方法に即して言えば、
 「実験的研究ではライバル仮説を排除する手立てが提供される可能性が高い」と述べたが、論理的には、非常に高次なベクトル空間のほんの1点において、そのきわめて近傍に位置したライバル仮説を排除しているにすぎない。非常に多くの要因が影響している研究領域では統制による実験的方法のみで因果関係を導くことは難しい。
という、豊田氏の論考(こちらの3.2.参照)とも共通しているように思えた。

 しかし、ここから先が問題である。要するに、我々はまず「理論」として何を求めるかについて、一致点を見出さなければならない。

 こちらの補注【4】にも引用したように、私自身は
科学とは「自然のなかに厳然と存在する秩序を人間が何とかして見つけ出す作業」ではなく、「自然を人間が秩序づける作業である」
という、佐藤方哉氏のお考えに大いに賛同しており、心理学における法則や理論に関する研究というのは、その「真偽」の検証よりも、それが当てはまる条件・範囲を確定し、どのように活用できるのかを探索することに意義があると考えている。

 次回に続く。