じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真]
 念青唐古拉山脈は、四川省との境からラサの北側までおよそ1000キロにわたってヤルツァンポの北側に広がる、長さ1000kmの大山脈。その主峰がニェンチンタン(グ)ラ(念青唐古拉)山である。標高は7162m(7111mという記述もあり)。

 今回のチベット旅行では、森と湖とアルプス風の景色が特色のパソンツォ、あるいはヒマラヤ最東端のナムチャバルワの眺めを楽しむことができたが、私自身が描くチベットのイメージに一番近いのは、ここに掲載する念青唐古拉山脈の風景であった。

 なお、旅行社からの案内では「念青唐古拉」の発音は「ニエンチェンタンラ」と記されていたが、各種サイトを検索したところ、「ニェンチンタンラ」が正しいようにも思われる。ここでは「グ」を括弧にいれて表記しておく。

 ※山麓には、建設中の鉄道(ラサ〜西寧)の、のり面が見える。


1月10日(月)

【ちょっと思ったこと】

三連休と、長い冬休み

 10月8〜10日の三連休は、来年度の大学院シラバスの作成、FD関係の文書作成、先月27日に提出が締め切られた修論査読など、平日とあまり変わらない毎日を過ごした。

 1月4日の日記に記したように、今年の正月は例年に比べると休業日数が少な目であったが、冬休みそのものは逆に長くなっていることに気づいた。大学の授業は例年1月8日から始まるが(2003年度の場合はハッピーマンデー対策として1月8日に月曜日の時間割が設定されていた)、今年は8〜10日が三連休であったため11日からの授業となる。冬休み期間としては実質的に最長となるのではないだろうか。

 なお、一部の公立学校では1月7日から授業を始めたところがあったとか。昨年秋の台風上陸・接近に伴う休校が相次ぎ授業日数が確保できなくなったための措置ということらしい。

 ちなみに2006年の冬休みは1月9日まで、2007年は1月8日まで、2008年は1月7日まで、というように1日ずつ減っていく。その後は「1月7日まで」で固定され、2011年になると再び1月10日までの長い休みが復活する。

【思ったこと】
_50110(月)[心理]「傾向がある」ことへの対策(その1)

 「○○の傾向がある」ということに関する興味深いニュースが3つほど伝わってきた。こういうニュースを聞いた時、我々はどういう対策をとればよいのだろう。
 以下、いずれも長谷川による抜粋・要約引用。
  1. 1月4日のYahooニュース:受動喫煙で成績低下 読解や算数、米の研究(1月4日 共同通信)
    受動喫煙の機会が多いと、子供の読解や算数の成績が悪いとの研究を、米シンシナティ子供病院(オハイオ州)のチームがまとめ、4日、米公衆衛生専門誌に発表した。過去に米政府が全米で実施した健康調査の被験者になった6−16歳の子供で、たばこを吸わない約4400人が対象。
  2. 1月8日のYahooニュース:日射少ないと消化器がん増 美白ブームに警鐘も(1月8日 共同通信)
    日射量が少ない地域ほど大腸などの消化器系のがんで死亡する人が多い−。九州大の溝上哲也助教授(疫学)が明らかにし、米国の専門誌にこのほど発表した。
     溝上助教授は、47都道府県の1961−1990年の平均日射量と、発生部位別にみた2000年の都道府県別のがん死亡率とを比較し、関連を調べた。
  3. 1月10日の朝日新聞記事:北朝鮮の男性、髪は5センチまで(1月9日 モスクワ放送)
    ラヂオプレス(RP)によると、モスクワ放送は9日、北朝鮮では男性の頭髪は5センチまでしか伸ばすことが許されない。高齢者は例外として7センチまで。同放送は、北朝鮮当局の見解として「長髪は脳から酸素を奪い、人間はばかになる」と報じている。
 まず、我々がしなければならないことは、情報の確からしさについての確認である。1.と2.は専門誌に発表されたということなので、出典からデータの詳細にあたることができる。いっぽう、3.の記事は、「ラヂオプレス(RP)によると、モスクワ放送は9日」という間接情報であって、事実関係は直接確認されていない。過去の経緯からみて「北朝鮮ならばそういうこともありうる」と思い込みがちであるが、情報の信頼性はイマイチであると考えたほうがよさそうだ。

 さて、3つの情報がいずれも正確であったとして、次にしなければならないのは、「相関がある」ことは必ずしも因果関係の証明にはならない、と疑ってみることだ。

 1.については、こちらの日記(1/6付)でも指摘されたように、「子どもの健康を大切にする家庭の方が子どもに上質な教育を行う可能性が高い為、受動喫煙の機会が多い子どもの知的能力が相対的に低くなっているとも考えられる」という可能性もある。このあたりは、子どもの教育環境と受動喫煙機会を詳細に調べなければ分からない。

 2.については、素人目には、平均日射量以外の要因、例えば食生活の違い、飲酒習慣の違い、冬の寒さ、他の部位が癌にかかりにくいため相対的に消化器がんが増える可能性、などを検討する必要があるように思いたくなるが、疫学の専門家が統計解析の手法を駆使して導き出した結論である。たぶん、そのくらいのことはちゃんとチェックしていると思う。とはいえ、それがビタミンDの不足によるのか、また、この結論を拡大解釈して日光浴すると皮膚癌や白内障などのリスクが生じるが、この危険とどう天秤にかけるか、もう少し情報が欲しいところだ。

 3.の記事でもし本当に「長髪は脳から酸素を奪い、人間はばかになる」という見解が真実であるならば、髪の長い女性ほど知的能力が低下している可能性がある。いずれにせよ、医学生理学的な根拠が求められる。

 ところで、「○○の傾向がある」という結論がある程度信頼できた場合、我々はどういう対策をとるべきなのか。そこで大切なのは
  1. まずは、どの程度、強い傾向であるのかを確認する必要がある。わずかの差を針小棒大にとらえてはいけない。
  2. 傾向をもたらしていると推測される要因は、操作可能であるのか。それとも、取り替えや改善が困難な要因であるのか。
  3. 「○○の傾向がある」ことへの対策をとった場合と、とらなかった場合(無視または放置した場合)それぞれについて、リスクの大きさ、メリットやデメリット、コストの大きさなどを総合的に考慮する必要がある。
という視点である。これまで何度も指摘しているように、昨今の「血液型」論議でも上記について十分な配慮が必要である。次回に続く。