じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
日だまりで花穂を持ち上げるヒヤシンス。水栽培で花を咲かせた後の球根をこのあたりに植えている。貧弱ではあるが、このように翌年以降も花をつける。 |
【ちょっと思ったこと】
学習障害への対応 夕食時にNHKクローズアップ現代「どう支える “学習障害”の子供たち」を視た。 学習障害と言えば、私自身、長崎で勤務していたころにサポートに加わったことがあった。あれから15年以上経ったこともあり、とっくの昔に公的な支援体制が確立していると思いこんでいたが、未だモデル事業の段階、昨年12月の臨時国会で「発達障害者支援法」が成立し、ようやく早期支援の体制作りなどが始まったばかりであるというからその対応の遅さに驚く。 今回紹介されたケースは、読み、書き、計算に関する特定の学習の困難に関わる事例。学習障害であるが故に書き取りを苦手とする子どものノートに「読めるように丁寧に書きましょう」などという担任のメッセージが書き込まれていたのにはあきれてしまった。 番組でも紹介されていたが、学習障害の場合、一般的な学習方法を反復してもなかなか成果が上がらない。にも関わらず、担任や周囲から「努力が足りない」などと言われて落ち込んでしまう。しかし、それぞれの障害の特性を的確に把握した上で、別のやり方で訓練をすれば、日常レベルの技能を身につけることもできる。 これは、例えて言うならば、同じ山の頂上を目ざすのにあたって、同じ登山道をひたすら頑張って歩くのではなく、その子どもに合った登りやすい道から頂上をめざしていくやり方とも言える。 もっとも、最近では、手で文字を書かなくても、キーボードや音声で文字を入力することもできる。足し算や引き算は電卓を使えばそれで済む。小中学校で求められている諸技能を一様に習得しなくて日常生活はそれほど不便ではなくなってきた。技能の一様な習得に時間をかけるよりも、自分の得意な能力を徹底的に伸ばしていったほうがよいのではという気もする。よく引き合いに出されるが、トム・クルーズ、アインシュタイン、ダ・ヴィンチダビンチなどは、みんな学習障害であったと言われる(余談だが、正高さんが、『天才はなぜ生まれるか』(ちくま新書 ISBN:4-480-06166-5)で、このあたりのことを書いておられた)。 余談だが、(学習障害という言葉を使うかどうかは別として)英語がうまく使えない、単語や読解はできるが、英作文は難しいという人はけっこうたくさん居ると思う。そういや、2002年の7月頃に「英語が使える日本人」構想というのが発表されたが、その後どのように進捗しているのだろうか。試しに「英語が使える日本人」をキーワードに検索してみたが、おや、なんと、「英語が使える日本人」再考などという論文が第二位にランクされているではないか。いま連載している「我が国の高等教育の将来像」のセミナーでも、ある方から「英語が使える日本人は1%居ればよい」という発言があったが、上の山登りの例を踏襲するなら、英語教育の場合にも、登山道はいろいろあってよいし、みんなが同じ山(=ネイティブ並みの英語力)を目ざす必要は全くないと思う。 ハチとアリの一生 1日前の話題となるが、夕食時にNHK地球・ふしぎ大自然「巨大マンション”を作れ! 信州 スズメバチ家族の秘密を視た。 スズメバチなどというと、日頃はなるべく関わりを持ちたく無い存在であるが、今回の番組で初めてその生態を知ることができた。今回取り上げられたキイロスズメバチは、春にはまず女王バチが1匹だけで巣作りと子育てを始める。その後、働きバチたちが増えると今度は産卵に専念するようになる。巣が小さくなると引っ越しをするが、せっかく作った大きな巣も一年限り。雄バチや新女王が誕生して巣を去ると、しだいに寂れてしまい空き家となってしまう。そして、唯一の生き残りである新女王は、翌春までじっと冬を越すこととなる。 キイロスズメバチの巣の直径は最大で1mにもなり、部屋の数は1万にもなる。しかし苦労して作っても新女王以外はその年のうちに死に絶えてしまうというのだから、空しいものだ。働き蜂に至ってはわずか1カ月の寿命、そんなに数を増やしてどうするのだろうかと思うふしもあるが、外敵(オオスズメバチ)から巣を守るためには数が多いほうが都合がいいらしい。「大きな巣を作れるスズメバチのほうが生き残りやすい」という自然選択の結果なんだろうが、彼らは何のために生きるのか、なぜそんなに子育てばかりするのか、人間界の発想では理解しがたい部分もある。 ところで、女王を中心に大規模な巣を作る昆虫としては、他にアリの仲間が知られている。しかし、シロアリの場合などは、普通の働きアリでも寿命は約2年、女王アリや王様アリとなると10〜15年。長いものでは50年から100年、産卵数も50億個にも達するというから大変なものだ(←ネット検索で得た情報であり、未確認)。こうしてみると、ハチよりもアリのほうが何となく進化しているようにも見える。 ミツバチなど少数種を除けば、ハチもアリも人間にとってはあまり有り難くない存在である。かといって、家屋に被害を与えるシロアリを除けば、手当たり次第にやっつけるというほどの敵対関係にあるわけでもない。こういう「高等昆虫」たちとは、できる限り平和共存を保っていきたいものだ。 |