じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] ツクシ。過去日記を参照したところ、3月中旬から春分の日のあたりで撮影された写真が多かった。野原で見つけるツクシには春の雰囲気が感じられるが、花壇の中のツクシはスギナの繁殖のもとになるのであまり歓迎できない。


3月24日(木)

【ちょっと思ったこと】

また雪

 今年はどうやら春の訪れが遅いようだ。人形峠では昨晩に再び積雪あり。春分の日の前後にいったん積雪ゼロとなり、これで一気に春かと思われたが、朝6時で12.3cm積もっている。広島付近では、山陽道、中央道ともチェーン規制となっている。ベランダに出しっぱなしにしていたベンジャミン(ゴムの木)を慌てて室内に取り込んだ。

【思ったこと】
_50324(木)[教育]京大・第11回大学教育研究フォーラム(3)大学基準協会の評価/報告する側と評価する側それぞれの問題点

 昨日の日記に続いて、3月22日午後開催の、大会企画フォーラム

●大学評価−評価する側の論理−

について感想を述べることにしたい。

 木村孟氏の基調講演に続いて
  • 前田早苗氏(大学基準協会大学評価・研究部部長心得)
  • 吉田文氏(メディア教育開発センター教授、GP実施委員会委員)
  • 奈良哲氏(文部科学省高等教育局国立大学法人評価委員会室室長)
  • 松下佳代氏(京大高等教育研究開発推進センター教授)
という4氏からの話題提供があった。

 このうち、文科省の奈良哲氏の講演は、率直な感想としては、公的な文書を棒読みしているような感じで、内容的にはあまり得るところが無かった。少々失礼になることを承知であえて言わせていただくが、1つの文がやたら長いことも気になった。話題提供の時間が20分に限られていたことと、個人的な見解を表明しにくい立場であったことが、ぎこちなさを感じさせてしまったのではないかと拝察する。もっとも、文科省の役人がみなこういう喋り方をされるわけでもない。2月6日に八王子・大学セミナーハウスで行われた公開セミナー「我が国の高等教育の将来像」では、徳永保氏(文部科学省大臣官房審議官 高等教育担当)のお話を拝聴することができたが、こちらのほうは大変意義深いものであり、文科省の考え方がよく理解できた。主体的・能動的に大学改革推進に携わっておられる徳永氏と、実務&調整役に徹しておられる奈良氏の違いを見せつけられたと言うべきか。




 次に、大学基準協会の前田早苗氏のお話について。前田氏はまず、公的文書にみる大学評価の目的の評価を概観された。木村氏の基調講演でも言及されたが、大学評価についてふれた最初の答申は、臨教審にさかのぼることができる(1986年4月、第2次答申)。そこでは、

●大学は絶えず自己の教育、研究および社会的寄与について自ら検証し、評価することが要請される。
●個別の大学の自己評価にとどまらず、大学団体がそのメンバー大学を相互に評価し、アクレディテーションを実施し、大学段額としての自治を活性化することも重要である

と記されていた。

 その後、1991年2月の大学審議会答申「大学教育の改善について」で大学基準協会の役割が強調され、さらに設置基準の大綱化が示されるようになった。

 興味深いのは、その後の大学評価の目的が、大学の中からの自律的要請ではなく、総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第1次答申」(2001年12月)や、経済財政諮問会議「構造改革と経済財政の中期展望」(2002年1月)という、いわば政府の規制改革方針の流れの中で制度化されていったという点である。こうして、会員制の自律的な大学団体であった大学基準協会も、質保証という役割が重視されるようになった。

 1996年の第1回の大学評価では、報告を出す側も評価委員の側にもいろいろな不備があったようだ。面白かったのは、報告者側で
  • 現状羅列型
  • 陳情型→「問題点はあるが自律的には改善がむずかしい。外部から指摘してもらえれば直るだろう」
  • 自己肯定型
というパターンが見られたこと。改善方策や将来計画が無いという共通点もあったとか。このあたりは大学評価に限らず、各種の委員会報告や調査報告、教員の個人評価報告、学部等の「成果」報告書でもありがちなことであり、大いに自戒したいと思う。

 その一方、評価委員の側でも
  • 報告書の内容を鵜呑みにする
  • 自分の所属する大学と比べる
  • 報告書に記されていない裏情報で評価←但し、報告書を鵜呑みにしないという点では一概にダメとは言い切れない
  • 評価に十分な時間を確保できない←評価委員はたいがい管理運営の要職についておられる方であり、教育研究上の負担も別にあるためなかなか時間を確保できない
というような問題があったという。これらもまた、大学内の自己点検評価のプロセスではありがちのことだ。自分自身の個人体験と比較する、というのもよくあるパターンである。

 さて、木村孟氏の基調講演でも言及されたが、「意図的低位設定により上位の評価結果が狙える」(=低位設定:意図的に目的や目標を低く抑えておく)というのはありがちなことだ。となると達成度評価だけでは、理念・目標を低位に設定したほうが評価が高くなるという危惧がある。そこで、大学基準協会では、これとは別に、「大学基準協会の正会員としてふさわしい水準にあるかどうか」をみるための「水準評価」を同時に実施しているという。但し、これは過渡的なものであり、将来的には、達成度評価と水準評価は一本化されるべきであると考えておられるようだ。

 私自身も過去に、学部内の自己評価委員などを務めたことあり、評価の実施や報告書作成で苦労したところであるが、今回のお話を伺って、これまでのいきさつを理解することができた。

 次回に続く。

3/25追記]

「質保証」という点での最初の認証評価結果が、同じ日に公表された。こちらによれば2つの大学が「保留」とされた模様。