じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _50713(水)[心理]血液型偏見番組より遙かに面白い科学実験番組 夕食時にTBS系「見物人の集まる実験室オモシロ科学マジック50連発スペシャル!」という番組の一部を視た。電気カッターの刃の代わりに紙の円盤を取り付けて木を切る実験、油を注ぐと内側のビーカーが見えなくなってしまうという実験、銅の円筒中にコイン型の磁石を入れるとゆっくりと落下するという実験、人間の声でプッシュホンの音を出す実験など、身近な材料を使いながら、こんな不思議なことが起こるのかということを映像を通して実感できた。 ところでTBSの番組と言えば、昨年は、ホムクルを初め、各種の血液型偏見番組の乱発に顔をしかめたものであった。しかしその後BPOの要望を受けて自粛、私の知る限り、最近では、血液型偏見・差別をネタにした番組はすっかり姿を消している。例外的に、スーパーフライデー 運命の!?血液スペシャル キレイなカラダになる生活革命なる健康情報提供型番組が放送されたこともあったが(←これもTBS。2005年5月17日の日記参照)、視聴率は10.9%、4位と低迷。血液型ネタでは関心を集められなくなったことを裏付けた。 血液型をネタとした番組についての批判は血液型性格判断資料集で何度も述べているところであるが、それらは、偏見・差別を助長する恐れがあるというばかりではない。取り上げられる「実験」や「調査」には、何かの法則性を「実証」したなどとは到底結論できないような稚拙、かつ「こじつけ」や「やらせ」の疑いの強いものがあり、あきれ返ってしまうことが多い。 もっともこれは、テレビ局側の責任に帰するわけにもいかないようだ。いっぱんに、物理学や化学では、1回限りの実験の結果がもつ一般性、反復可能性は非常に高い。しかし心理学の実験はそうはいかない。その違いを理解せずに、同じやり方でデモンストレーション実験の映像を流してしまうところに大きな問題がある。 例えば、上記の科学実験番組で、銅の円筒の中をコイン型の磁石がゆっくり落ちるという実験をやっていたが、これは、一度だけそういう事例を示せばみんなが納得できる結果であって、何度も繰り返して確かめる必要はあまり無い。 円盤形に切り抜いた厚紙を電動カッターに取り付けて木材を切る実験なども同様。一度でも「切れた」という結果が示せれば、仮説は証明されたことになる。 いっぽう、心理学では、1回限りの実験や調査で何かが実証されるということは稀である。その理由は、人間には個体差があり、また、同じ人間であっても行動が状況や文脈によって変動を受けやすく、一般性や反復可能性の保証が難しいということに起因している。 それ故、(これはあくまで倫理的に許されるならという前提のもとでの話であるが)、園児たちのスイカの食べ方が血液型によって違うのかということを実験で確かめようと思ったら、血液型別に違う帽子をかぶせて最初からレッテルを貼るというようなアーティファクトを除外した上で、いろいろな子どもたちを何度も何度も集めて確かめていかなければならないのである。 しかし、テレビ番組ともなれば、そういう地道な実験・調査ではインパクトが少ない。そこで、番組制作会社が、都合のいい事例ばかりを恣意的に選び、また時には「やらせ」のような形で番組を構成することとなり、それがますます「血液型による決めつけ」との反発を招く結果に繋がっているのである。 なお、これは血液型番組に限ったことではない。健康情報提供番組などでは、数人の主婦を対象に、ある物を2週間食べ続けたら血圧がこれだけ下がったというような「実験」を紹介していることもあるが、あれも相当にいい加減。ま、視聴者側のほうで「そういういい加減な実験は相手にしない」というクリティカルな目が養われていけばテレビ局も反省せざるをえなくなるであろうが...。 ●血液型番組自粛でクイズ番組花盛り? という話題については、2005年5月2日の日記で取り上げたことがあったが、どうやらその傾向がますます強くなってきたようだ。内容的には、科学実験モノ、トリビア雑学モノ、国語力テストなどなど。 しかし、こうしたネタはいつかは尽きるものだ。ネタが尽きて視聴率が下がっていった時、各局が次にどういう話題で復活を狙っていこうとするのか、気になるところではある。くれぐれも、超能力、占い、その他オカルト物に走らないように願いたい。個人的には、もっと地味な、長年の日常努力を称えるような番組とか、自然との共生をめざすような番組に人気が出てくることを期待したいところだが、視聴率アップは難しいだろうか。けっきょく、民放がどういう番組を作るかというのは視聴者次第であり、視聴者側にも主体性と批判的思考の目が求められているということになりそう。 |