じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 8月31日は、甲子園球場でプロ野球・阪神vs中日戦が行われた。2位中日に1.5ゲーム差に追い上げられ、今日の試合はどうなるだろうかと思いつつ徒歩で帰宅していると、西の空に「V」サイン型の雲が現れ、すぐ近くではトラ模様のネコが座ってこっちを見ていた。おおそうか、

Vサイン+トラ猫→阪神勝利!

これは縁起がいいぞと思ってさらに歩いていたところ、なっなんと、「V」サイン形の雲は、「×」印形に変形してしまった。

Vサイン+トラ猫→×

こりゃーまずいことになったと思ったが、雲の形が予言した通り阪神は惜敗してしまった。


8月31日(水)

【ちょっと思ったこと】

妊婦はバンドウイルカを食べるな、というお達し

 8月29日のNHK「クローズアップ現代」で、

どう伝える 食の安全 〜妊婦が食べる魚に新基準〜

という話題を取り上げていた。魚に含まれるメチル水銀は胎児に蓄積されやすく、脳の発達に悪い影響を及ぼす可能性がある。これを受けて、厚生労働省は食品安全委員会の審議を経て、新たな安全の目安を作成した。しかし、この種の「お達し」はしばしば過剰な反応や風評を招きやすい。どうやったら情報を正確に伝えられるか、という苦心の跡が伺えた。

 放送後ネットで検索をしたところ、当該の

妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(平成17年8月現在)

というコンテンツが厚労省のサイトにあることが分かった。

 今回の件に限らず、最近の官公庁のWebサイトでは、最終的な「お達し」ばかりでなく、それに至る審議経過、審議資料、あるいはパブリックコメント手順などが詳細に掲載されており、これはたいへん結構なことであると思う。

 各種コンテンツは膨大な量であり、日記執筆時間にすべてを閲覧することは困難であったが、その中の

「魚介類等に含まれるメチル水銀に係る食品健康影響評価(案)」のポイントについて平成17年6月 内閣府食品安全委員会事務局

で、審議のポイントを知ることができる。

 そこには、
  1. 何故、胎児はメチル水銀の影響を受けやすいか?→メチル水銀は胎盤を介して容易に胎児に移 行する/胎児は発達過程にあり、特にメチル水銀の標的臓器である中枢神経系に影響が及ぶ
  2. 乳児、小児はメチル水銀の影響を受けないか?→乳児:母親が通常の食生活をしていれば母乳 中のメチル水銀は十分低濃度/小児:成人と同様にメチル水銀を排泄
  3. メチル水銀の有害性の評価ポイント→食品中のメチル水銀は消化管から95〜100%吸収され、糞、尿、頭髪、胎児等へ移行する/血液・脳関門を通過し、中枢神経に影響を及ぼすことがある/高濃度曝露による障害は、水俣病やイラクの中毒事件に見られる/メチル水銀は胎盤を通過することから、発達中の胎児への影響が懸念され、妊婦が摂取しても胎児に影響を及ぼさない量(耐容摂取量)について国際機関において検討されてきた
といったことが記されている。要するに、通常、魚介類を摂取しても成人や小児では排泄されるので影響を受けにくいが、発達過程にある胎児は最も影響を受けやすく、したがって、妊婦の耐容摂取量を検討しておく必要があるというロジックであるようだ。

 もっとも、これまでの調査研究の中から有害な証拠として挙げられているのは、胎児期に受けたメチル水銀曝露の影響を7歳児及び14歳児を対象に調査した「フェロー諸島前向き研究」の結果であり、そこでは、

●音を聞いた場合の反応が1/1,000秒以下のレベルで遅れるようになる。(水俣病のような重篤な健康影響とは異なる)

という程度の有意差しか確認されていなかった。一部には「この程度の差であるなら深刻な影響とは言えない」という反論をする向きもあるだろうが、メチル水銀自体が生理学的に有害であり、高濃度曝露による障害が報告されている以上、「ゼッタイに安全とは言えない」という段階で、何らかの基準を作成することは、行政の責務であろうと考える。

 また、魚には胎児の脳を発達させる栄養が含まれていることから、メリット、デメリット双方のバランスを考えた上で基準を作るべきだという意見もあったらしいが、ここはやはり、毒性に限って周知徹底をはかるべきであり、その上で、妊婦あるいは一般消費者による、メリットも勘案した上での主体的な選択に委ねればそれでよいのではないかと思う。この点でも委員会や厚労省の方針は妥当であったと思う。

 もっとも、現在提示されている「お達し」には少々腑に落ちないところがある。
...妊娠している方又はその可能性のある方については、魚介類等の摂食について、次のことに注意することが望ましい。

これまで収集されたデータから、バンドウイルカについては、1回60〜80gとして2ヶ月に1回以下、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ及びサメ(筋肉)については、1回60〜80g として週に1回以下にすることが望ましい。
また、メカジキ、キンメダイについては、1回60〜80g として週に2回以下にすることが望ましい。
 私がよく分からないのはその中の、

バンドウイルカについては、1回60〜80gとして2ヶ月に1回以下、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラ及びサメ(筋肉)については、1回60〜80g
という部分である。バンドウイルカといえば、こちらにもあるように水族館などで曲芸を披露することで知られる「普通のイルカ」の一種である。妊婦であろうとなかろうと、こういう肉を、「1回60〜80gとして2ヶ月に1回」以上食べる日本人が居るのだろうか? 同じことは、ツチクジラ、コビレゴンドウ、マッコウクジラについても言える。

 こちらにもあるように、こういう注意書きは、いろいろな場で国際比較されるものだ。これではまるで、日本人妊婦は、何も注意しなければ、イルカやクジラの肉ばかり食べているように誤解されかねない。ちなみに、サメのところでわざわざ「サメ(筋肉)」と断っているのも何か配慮があるのだろう。健康食品として売り出されている「サメ軟骨」への営業妨害であると批判されないための但し書きか。ええと、フカヒレというのはサメの筋肉とはどう違うのだろうか。

 あるいは、いきなり「メカジキ、キンメダイについては、1回60〜80g として週に2回以下にすることが望ましい。」という注意書きが文頭に出ると、風評被害が広がって魚が売れなくなる恐れがあるため、あえて、イルカやクジラのほうを優先的に記述し、メカジキやキンメダイについての情緒的反応を和らげようという意図があったのかもしれない。




9/2追記]
上記の話題に関して、日記才人メッセージ経由で貴重な情報をいただいたので追記させていただく。
  • hedgehogさまより
    静岡の漁港として超有名な街では、網にかかったイルカを食べるそうです。バンドウかどうかはわかりませんが。【以下略】
  • spicaさまより
    【略】...私も気になってネットで検索してみましたら、次のような記述を見つけました。
    日本の場合、比較的イルカがよく観察されるところでは食用にする習慣が残っておりところもあり、各都道府県知事許可漁業の「いるか突き棒漁業」として認可を受けて操業しているところもある(突き棒漁業とは銛を打ち込んで漁獲する漁法である)。例えば静岡県東部ではこうした漁法でしとめたイルカの肉をスーパーマーケットで売っている。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%AB
    ここからは私の推測ですが、もしかするとこういった地域では日常的にバンドウイルカの肉を口にしている為に、「1回60〜80gとして2ヶ月に1回以下」という強い注意をしなければならないのかもしれません。
どうもありがとうございました。どうやら、日本国内の特定地域ではバンドウイルカを食する習慣があるようです。