じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
毛無山(けなしがせん)の写真連載の3回目。この山は(香り百選・水源の森百選)ブナの森路として森林セラピー基地候補に名乗りを上げているだけあって森林浴を満喫することができる(写真左側)。もっとも、写真右側にあるように、じつは岡大構内もけっこう森林風景が楽しめたりする。
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【思ったこと】 _60609(木)[教育]第54回 中国・四国地区大学教育研究会(6)導入教育のあり方 5月27日(土)と28日(日)に行われた表記の研究会についての感想の連載最終回 5月28日(日)の午前中は、人文・社会科学、自然科学、情報科学、外国語(英語と初修の2つ)、保健体育、日本語・日本語事情の7つの分科会に分かれて研究発表や実践報告が行われた。私は専門分野の関係で ●人文・社会科学分科会:人文・社会科学における導入教育 に出席した。 この分科会の話題提供は、私の大学の文学部における導入教育(「基礎科目1」)と、同じく法学部の共通教育・導入教育に関する実践報告である。このうち文学部導入教育は私自身も一昨年に「基礎科目1」、昨年は「基礎科目2」、また毎年分担で「基礎科目3」を担当しており、なじみ深いものであった。 分科会ではまず、文学部の昨年度・教育委員長N氏が実施内容を紹介した。この「基礎科目1」のシラバスは3年分がWeb公開されており、例えば、私が担当した16年度はこちらに記録が残っている。じつは、この一覧をチェックすれば分かるように「基礎科目1」のシラバスも内容は全く同一。私の担当授業の講義番号は910008となっているがこれは学籍番号の末尾が「8」となっている学生が受講できるという意味。要するに、どの教員のクラスでも、全く同じ教科書を用いて、同じ内容の授業が受けられるという方針であった。 しかし、この方針では、例えば「図表の活用」のところで表計算ソフトを使える教員と、使い方を知らない教員(←専門領域の関係で使う必要がない)があったりして、どうしても「同一内容」が保てない。そのような反省から翌17年度では、各クラスの「担任」教員は定めたものの、実際の授業は中学や高校と同様、それぞれを得意分野とする教員が各クラスを巡回する形で授業を実施していった。 ところがそういう「巡回方式」では、担任教員とそのクラスの学生が日常的に接する機会が減り、アットホームな雰囲気が失われるなどの別の問題が出てきた。今年度(18年度)では再び、2名の教員が原則として1つのクラスの授業をすべて受け持つという方式に変更された。 さて、この「基礎科目1」という授業であるが、18年度シラバスにある通り、この科目は
以上述べたような位置づけのもとに、文学部新入生に対して導入教育を実施することは意義のあることだとは思うが、実施上は、まだまだ試行錯誤の部分が多い。私がいちばん疑問に思うのは、これだけユニークな教員が揃っている文学部において、何も、あそこまで、同一内容に拘らなくてもよいのではという点だ。そもそも勉学のスキルといっても、文学系、語学系、歴史系、行動科学系では、かなりの相違がある。それらを混合して、特徴のない一般的なスキルだけを身につけさせようとしても、なかなか勉学意欲向上には結びつかない。やはり、まずは、新入生各自に、少なくとも1つの専門領域に興味をいだかせることのほうが効果的ではないかと思う。そういう点では、いっそのこと、「基礎科目1」担当教員20名を選ぶだけにとどめ、授業内容は各教員が自由に決め、学生側も自由に選択できるようにしたほうが(←もちろん、特定の教員に人気が集中した場合は抽選もやむなし)、教える側も熱意がわいてくるし、学ぶ側にもそれが伝わって効果的なのではないかと思う。もしこういう方針に転換した場合は、私は、「Webサイト&ブログの書き方」を中心とした授業内容にしてみたいと思っているところだ。 もとの話題に戻るが、昨年度・教育委員長N氏によれば、この授業に関する自由記述アンケートの中には
もう1つの法学部の共通教育・導入教育のほうはなかなかしっかりした内容であると感じた。もっとも、文学部の場合と法学部の場合では、入試段階からの学生の志望動機が異なる。法学部の場合は、とにかく、何を学び、何を活かして社会に出るかということがかなり明確であるはずだ。いっぽう文学部の場合は、現状の入試では、各種専門領域のうちのどれかに漠然とした興味さえ持っていればよく、何を学ぶか、それをどう活かすのかは入学後の勉学次第ということになる。文学に関心のあって入ってきた学生が1年次の授業を受けて社会学で卒論を書くということがあってもよいわけで、それだけの幅と柔軟性を持った導入教育が求められているのである。入試制度やアドミッション・ポリシーについての説明無しにいきなり実践報告を行っても、他大学の参加者には分かりにくかったかもしれない。 |