じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _60822(火)[心理]「学習療法」認知症に効く?(3)セラピーの商標登録 8月20日の朝日新聞(大阪本社)の 「学習療法」認知症に効く?/毎日、単純計算や音読/介護施設275カ所採用/「脳トレ」川島教授が考案/専門家静観 進まぬ議論/専門誌掲載 急速に拡大 という見出しの記事に関する連載の3回目。今回は視点を少し変えて、 「学習療法」は川島教授らが商標登録している。2004年7月に設立された「くもん学習療法センター」が教材やノウハウの普及を担当。 という記事部分について考えを述べることにしたい。 いっぱんに、セラピーには
1.や2.の場合で、更なる研究開発を必要と感じる人がいれば、学術団体(研究会や学会)の設立をめざすであろう。いっぽう、普及や実践活動に力を入れたいと感じる人がいればNPO、また1つのビジネスと位置づける人は営利企業の設立をめざすことになる。 さて、学術団体の範囲にとどまる場合は殆ど問題にならないのだが、NPOや企業として活動する場合には、しばしば「××療法」という名称で商標を登録することがある。そのさい、すでに一般名詞化されていれば登録が認められないが、時には早い者勝ちで権利が認められるため、争いが起こることもある。ウィキペディアの商標問題の項にもあるように、かつて、角川書店が「NPO」および「ボランティア」という言葉について商標登録出願をして問題になったことがある。 セラピーの名称を商標登録することは、その団体の正統な普及活動を保障し、便乗商法や詐欺商法を防止するという点では有効であろうと思う。 その反面、複数のセラピーの有効性を学術レベルで比較検討する際には支障をもたらす恐れがあるようにも思う。なぜならば、商標登録というのは「特定の団体に限って使用を認める(商標権者は、指定商品について登録商標を使用する権利を専有する。商標法25条)という性質のものであって、セラピーの具体的内容をこと細かく定義したものではないからだ。つまり、登録された大雑把な内容を逸脱しない限りは、その団体が「これは××セラピーに含まれる」と言えば含まれるし、「これは××セラピーに該当しない」と言えば含まれないということになって、学術レベルの比較検討で当然要求される再現性が必ずしも保証されないという問題が生じる。 例えば、私が「日記療法」という名称で商標登録したとする。ひとくちに「日記」といっても、伝統的な日記帳に文字を書き込む日記のほか、Web日記もあれば、最近流行のブログ形式もある。しかし、いったん登録商標されてしまえば、その団体が認める範囲でしか「日記療法」という言葉を論じられなくなる。「日記療法に効果があるか」という議論もきわめて制限されてしまう。 ということもあって、セラピーの名称を商標登録する場合は、単に「××セラピー」とか「××療法」というように「××」という単一名詞を入れるのではなくて、「○○式」とか「△△流」というような固有名詞をその前に必ずつけることを原則化すればよいのでは、というのが私の考えだ。その上で、パッケージとしての包括的有効性を競い合うようになれば、各療法の質的向上にもつながる。 次回に続く。 |