じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
12月18日の岡山は最低気温が2.1度まで下がり霜が降りた。県北や大山では本格的な積雪となっている。この寒さのせいで、岡大七不思議の「落ちないアメリカフウ」(写真上)や「落ちないイチョウ」(写真下)も、かなりの葉を落としてしまった。特に「落ちないイチョウ」は18日の夕刻までに殆どの葉を落とし、周辺のイチョウと変わらない姿になった。「落ちないアメリカフウ」のほうはもうしばらく目立ちそうだ。写真左半分は12月17日朝撮影、右半分は18日朝撮影。


12月18日(月)

【思ったこと】
_61218(月)[一般]ワーキングプア再考(3)加速するグローバル化の波の中でもがき続ける人たち?

●NHKスペシャル「ワーキングプアII努力すれば抜け出せますか

という番組の感想の3回目。番組では「女性たちの悲鳴」に続いて「景気回復を実感できない」と題して「加速するグローバル化の波の中でもがき続ける人たち」の話題が取り上げられた。

 事例として紹介されたのはいずれも岐阜県内で長年にわたり繊維業(出来上がった衣料製品にアイロンをかけるプレスの仕事)を営む零細業者であった。

ケース3:Tさん(57歳の女性)
  • ひと月の収入は7万円に落ち込み、家賃すら支払えなくなった。
  • 25年前に夫婦で工場を開く。8年前に夫と死別し一人で工場を守ってきた。
  • 廃業し、岐阜市内在住の娘さん(未婚。助産師)のところに身を寄せる。

ケース4:Mさん(56歳の男性と妻)
  • 夫婦で長年にわたりプレスの仕事を続けてきたが、1着100円で請け負っていたのが1着50円となる。一昨年568万円の収入が今年は300万円以下に。
  • 妻は福祉施設で朝食を作るパートの仕事に。娘の大学進学を控えて別の給食のパートも始めるが、入学金や当面の授業料をまかないきれないので金融機関から200万の借金。
 これらの人たちの収入が落ち込み、やむなく長時間労働を強いられるようになった背景には、海外製品との厳しい価格競争、親会社からの厳しいコストダウン要求があると指摘されていた。

 また、日本国内においても、中国からの「研修生」「実習生」が低賃金で働くようになり、中には時給200円台の不当な賃金で働かせているところもあるという。そのコストダウンが国内の同業者を生活を圧迫しているのだという。中小零細企業の廃業や倒産はこの1年間で16万件にのぼるという。

 この部分に関してキャスターは
生産や流通のグローバル化に加えて海外からの安い労働力の流入は新たなワーキングプアを生み出す危険をはらんでいるのです。
と結んでいた。




 番組のこの部分を視てまず思ったのは、とにかく、外国人の不法就労など違法な状態は放置してはならないうことだ。メーカー側にもいろいろな事情があるとは思うが、とにかく法律は守らなければならない。

 もっとも、いくら法律に則って雇用を続けたとしても、海外からの輸入品、あるいは海外の工場で現地生産を行った製品に対抗できるかどうかは微妙である。これは、繊維製品に限ったことではない。いまこの日記を書いている時に使っているパソコン、ディスプレイ、プリンタ、ポータブルHDDなども、裏側のラベルをよく見るとみな東南アジアの工場製となっている。

 私は、コメなどの農産物や材木は国土の環境保全という点から見てもできる限り国産品を守るべきだと考えているが、工業製品についてはどうだろうか。けっきょく、性能や品質の差で勝負するしかないのではないか。

 番組では、「生産や流通のグローバル化が新たなワーキングプアを生み出す危険」を指摘していたが、別段グローバル化がなくても、日進月歩の技術革新の中では、古いものは廃れ、新しいものに置き換わっていく。少し前にテレビでも放送されていた、映画「ALWAYS三丁目の夕日」の中でも、電気冷蔵庫普及のなかで、氷屋さんの得意先が奪われていくシーンがさりげなく挿入されていた。氷屋さん自身は何も悪いことはしていない。日々、一生懸命仕事に打ち込んでいたのだが、家電化の波には抗しきれなくなったということだ。

 過去何十年も一生懸命仕事をしてきたからと言って、今後も同じ職種で働き続けることができるが将来にわたって保障されるとは限らない。この50年余りのあいだに数を減らしていった職種は、街中の氷屋さんに限るものではない。私個人の子ども時代を思い出してみても、
  • 衛生屋さん:くみ取り式のトイレを巡回して、消毒などをしてくれる。水洗トイレの普及で姿を消す。
  • 豆腐屋さん:スーパーの出店と冷蔵庫の普及で、晩のおかずに豆腐を買う人が減った。
  • アサリ・シジミ売り:これも同様。
  • 米屋さん:米の配給がなくなってから利用しなくなった。
  • 牛乳屋さん:冷蔵庫と1リットルパックの普及で、牛乳配達を利用する家庭はめっきり減った。
  • 靴磨き屋さん:道路の舗装が進み靴があまり汚れなくなったということか。
などなどいろいろある。このほか。私が生まれ育った町の商店街を稀に訪れると、昔にぎわっていた八百屋さん、魚屋さん、肉屋さんなどの数が大幅に減っていることに気づく。これは、冷蔵庫の普及で毎日買い物に行かなくても済むようになったことや、スーパーの出店によるものと思う。

 「生産や流通のグローバル化が新たなワーキングプアを生み出す危険」は確かにあるとは思うが、じゃあそれを阻止して、鎖国化あるいは保護貿易に徹すればみんなが豊かに幸せになれるかと言えば、それはあまりにも非現実的だ。上記の2つの事例は、拝見する限りでは廃業やむなし、新たな雇用機会を創出したり、転業をサポートするという対策しかとれないのではないかと感じた。

 次回に続く。