じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]

 梅の花シリーズの第三弾。梅には実をとるための品種と、花を観賞するための品種があるようだ。今回の写真は後者。先日の上京時に通りがかりの公園で撮影した。



2月9日(金)

【ちょっと思ったこと】

若い研究者は世間知らず?

 2月8日のアサヒコム記事(期間限定でこちらから閲覧可能)に

●若い研究者は世間知らず? 文科省の意識調査

という見出しの記事があった。

 見出しを読んだだけでは、文科省が、世間のことをどれだけ知っているのかというテストを若手研究者たちに実施した、というようにも受け取れる。そんなこと調べて何に使うのか?と詳しく読んでみると、

  • 文部科学省が大学や企業に勤める理系の研究者を中心にアンケートしたところ、若手研究者の3割前後が、社会常識や一般教養に欠けるというイメージで見られていることがわかった。
  • 昨年、2000人を対象に実施し、1024人回答。有効回答率は51.2%。
  • 20代前半〜30代前半の若手研究者の「社会常識」について尋ねたところ、「低い」が16.5%で「非常に低い」が5.3%と、辛口評価が目立った。一方で「非常に高い」「高い」という評価はそれぞれ1.1%、9.1%。
  • 「一般教養」も評価は低く、「低い」「非常に低い」が23.5%、4.1%あった。「非常に高い」「高い」は0.9%、12.5%だけだった。
という内容であることが分かった。つまり記事の正確な内容は、

●「20代前半〜30代前半の若手研究者は社会常識があるか、一般教養があるか」という質問を理系研究者に行ったところ、肯定的な回答がそれぞれ21.8%、27.6%であり、否定的な回答10.2%、13.4%より多かった。

というだけのことである。記事の見出しだけが一人歩きすると、とんでもない誤解を生みそうだ(若手研究者に対するステレオタイプな見方の実態調査とも言えるが)。




 文科省のサイトを念入りに調べたところ、アサヒコムが今頃になって取り上げた調査結果というのは

平成17年度「我が国の研究活動の実態に関する調査報告」について(平成18年12月19日)

であったようだ(以下、長谷川のほうで体裁を一部改変、省略)。
本資料は、研究者の意識等の実態把握を目的として、平成18 年2 月に2,000名の研究者に対してアンケート調査を実施し、回答のあった1,024 名からのデータを基に分析を行ったものです。

【中略】

調査対象者は、現在研究活動を行っている2,000名の研究者とした。具体的には、2004年度中に JSTPlusファイル(※)に登録された論文から無作為に抽出した論文の第1著者もしくは第2著者を、 現在研究活動を行っている研究者とみなして、それらの中から2,000名を民間企業50%、大学等30%、公的研究機関等15%、その他機関5%の割合となるよう層化無作為抽出を行った。
となっており、今回の記事は、問9の結果に関するものと思われる。
問9 我が国の若手研究者の能力についてどのように考えていますか。下記の1.〜15.の各項目について該当する番号を1つずつ選んで○印をつけて下さい。
* ここで若手研究者とは、20 歳代前半〜30 歳代前半の研究者とします。
1 非常に高い、2 高い、3 普通、4 低い、5 非常に低い、6 よくわからない
  1. 専門分野の知識
  2. 基礎的な知識
  3. 課題設定能力
  4. 課題解決能力
  5. 計画性
  6. 創造性
  7. 探究心
  8. 協調性
  9. 論理性
  10. 国際性
  11. 粘り強さ
  12. 競争心
  13. バランス感覚・俯瞰的能力
  14. 社会常識
  15. 一般教養
 結果は、この報告書の第2−2−1図(PDFの35頁)に図示されているが、横軸は
各項目について、「非常に高い」という回答割合に2、「高い」という回答割合に1、「低い」という回答割合に−1、「非常に低い」という回答割合に−2をそれぞれ乗してこれらを合計したもの。
だというが、えっ、そんな集計していいの? 「非常に高い」が「高い」に比べて(1.5倍や3倍ではなくて)2倍の重みがあるということは誰が決めたの?と言いたい。私のところの学生がこんな集計をしてきたら、集計のやり直しを命じるところだなあ。

 ま、調査自体はそれなりに意義のあるものかもしれないが、もともとこの調査結果は昨年12月に発表されたそうだ。なぜ今頃になって取り上げるのか分からない。回答結果のごく一部だけを過大に取り上げて「若い研究者は世間知らず?」なんていう記事を書く記者というのは、やっぱ、よっぽどネタ不足に悩んでいるのだろう。