じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]

 昨日の日記に「田んぼの中のパラレルワールド」の写真を掲載した。10日の夜にはその続編として、田んぼに映る金星と木星の写真に挑戦してみた。

 写真左は金星で、かろうじて田んぼに映っている様子を捉えることができた。写真右は木星とアンタレス。こちらは空の高いところにあって、田んぼの水面に映る様子までは撮れなかった。位置の分かりにくい方はこちらの解説図をどうぞ。

 「田んぼの中のパラレルワールド」は毎年この時期に出現するが、宵の明星を映せるのは、6月期に金星が宵の明星として西の空に君臨する年に限られる。今年は6月9日が金星の「東方最大離角(光度マイナス4.3等、離角45度23分)となっていて、条件は最高であった。

 なお6月18日深夜には金星食があり、日本国内では、金星が月に隠れる直前の大接近の様子が観られる。また翌19日には土星食がある。梅雨空になるので、観察できるかどうかは微妙。



6月10日(日)

【思ったこと】
_70610(日)[心理]人間・植物関係学会2007年大会(2)セバスチャン・ クナイプの教えたこと(2)

 昨日の日記に述べたように、クナイプ自然療法は、
  1. Water(水療法):温冷水浴=冷水浴・温水浴、湿布・清拭、蒸し風呂など100種以上
  2. Plants(植物療法):ハーブ・薬草などを使った食事や入浴やアロマテラピーなど
  3. Exercise(運動療法):森林散策=2時間程度の森林散策、スポーツ、体操、マッサージ、呼吸療法など
  4. Nutrition(食事療法あるいは食物療法):栄養バランス=ハーブ、薬草を用いた料理、自然素材の完全食
  5. Balanced Life(調和療法):規則正しい生活。心身の自然との調和=緊張と緩和、運動と休養、仕事と休暇など
という5つの要素(もしくは1.から4.と、それを調和させたライフスタイル)から構成されるが、今回の話題は主として、「ホースで冷水をかける」といった「水療法」の紹介が中心であった。

 実は私は、この講演が始まる14時ギリギリまで学会・理事会に出席しており、トイレに行って戻ってきた時にはすでに講演が始まっていて、なぜ水療法の紹介が中心になったのかという理由をうかがうことができなかった。ということであくまで推測になるが、「ホースで冷水をかける」といったセラピーは、水のかけ方、温度管理、かける時間など、かなりの訓練を要するため、クナイプ・シューレでも、それだけ、重きを置いているためであるかもしれない。冷水を浴びせるというのは、体温調整を一度崩し、バランスを取り戻させることで視床下部の働きを高める効果を狙っているようであった。

 もっとも、せっかくの人間・植物関係学会での講演であるからして、水療法の話は最小限にとどめ、植物療法や森林セラピーに重点を置いてほしかったという気持ちはある。




 次に植物療法に関しては、いくつかのハーブの効用が紹介された。クナイプ自身の本の中では、水療法に関する記述が80頁ほどあるが、ハーブについても40頁が割かれていて、かなり重視されていたことが分かる。その後、近代科学の進歩により、それぞれのハーブについての効用が実証されるようになった。なお、各種ハーブの中で、ラベンダーだけは、医学的な根拠がまだ見つかっていないというお話であった。




 人間・植物関係学会に最も関係が深いのは、運動療法の一環としての森林セラピーではないかと思うが、このことについては、詳しい話は無かったように思う。昨日の日記にリンクした森林セラピー・ポータルでは、
  • ドイツ国内には64ヵ所の保養地があり、これらにクナイプ医師連盟が調査・設計を行った森林散策コースがあります。また、保養地にある保養宿泊施設のすべてには、医師が往診・常勤できる仕組みとなっています。
  • クナイプ療法の画期的な点は、社会健康保険が適用されるというところにあります。
  • ドイツでは4年に一度3週間の保養を行うことが法的に認められているので、これを利用してクナイプ療法を行う人も多くいます。
  • クナイプ療法の発祥の地バート・ウェーリスホーフェンには、毎年100万人近い人が訪れています。この地の行政機関と民間の医療団体の間にはしっかりとした協力体制が取られており、これも、この地の自然療法が盛んな理由の一つだと考えられます。
というように紹介されており、森林の多い日本でも、森林セラピー普及が期待される。

 このほか、5.のBalanced Life(調和療法)は、クナイプ社の該当項目の説明では「規則正しい生活」と訳されており、リズムの安定した生活、自分の時間のコントロールなどに重点を置いていたようだが、そのことをもって「バランスのとれた生活(Balanced Life)」になるのかどうかは、イマイチ分からない。日本語の解説書も刊行されているようなので、それを拝見した上で見極めていくことにしたい。





 今回の講演についての全般的な感想としては
  1. セバスチャン・ クナイプの先見の明には敬意を表するとしても、それを無批判に継承するわけにはいくまい。特に日本においては、日本独自の文化・伝統(例えば滝修行、寒中水泳、温泉・冷鉱泉の活用、里山、田んぼ)を取り入れてカスタマイズした上で、活用を目ざしていく必要がある。
  2. この療法は全体として健康法なのか、治療を狙ったものであるのか、あるいは、リハビリテーションの一環であるのか、使い分けが必要。
  3. そもそも「自己治癒力」とか「自然治癒力」というのは、自然と闘う力なのか、自然と一体化する中でバランスを保つ力なのか。
 このうち2.に関しては、質疑の際、医療の代替ではなく、治療でもなく、治療を補完する目的である、「医者は治療するが、自然は癒す」というような回答があったと記憶しているが、はっきり確認できなかった。

 3.は、「私たちは自然の恵みによって生かされている」という仏教的な自然観に立って老・病・死を受け入れようとするのか、それとも、西洋的な自然観に立って、死の直前まで、老・病・死と闘おうとするのか、によってかなり違ってくると思う。セバスチャン・ クナイプはキリスト教の神父であるからして後者に立っているように思えるのだが、自然の恵みを大切にする点では東洋的・仏教的であるようにも思える。このあたりも原典にあたってみないと何とも言えない。

 次回に続く。