じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
キノコ第五弾。早朝の散歩時によく見かけるが、陽が当たる朝8時すぎには萎れて目立たなくなってしまう。種名は未確認。

 なお、このキノコが生えている場所で、まだら模様のネコを見かけた。地面の色にマッチしており、結果的に保護色になっている。



7月5日(木)

【思ったこと】
_70705(木)[心理]「試しに止めてみる」ことの本当の理由(1)

 生活習慣病対策や体質改善などの目的で長期間薬を服用する場合、特に緊急性が無ければ
  1. A1:薬を飲む前の状態のベースラインを測る(第一ベースライン)
  2. B1:薬を飲み続けている時の数値の変化を測る(第一介入期)
  3. A2:いったん薬の服用を中止して数値の変化を図る(第二ベースライン)
  4. B2:再び薬を飲み始める(第二介入期)
という4つの段階(期間)をとることが推奨される。

 ここでしばしば出されるのが、「なぜA2という、薬の服用を止める期間を挿入する必要があるのか?」、「薬を飲み始めてから改善がみられているなら、A1→B1までで十分であり、そのまま飲み続ければいいじゃないか?」といった疑問である。

 しかし、これには実験計画上の理由がある。つまり、A1期間に比べてB1期間で改善が見られたとしても、それだけでは、本当に薬が有効であったかどうかは証明されていない、。B1の時期に、薬とは無関係にたまたま健康が増進したという可能性もあるし、季節変化、地域の環境変化が偶然、B1の導入時期に重なったこともある。

 薬のようなものにはできれば頼らないほうがいいし、薬を買うためのお金もかかる。また、何かしら副作用があって、長期間服用するうちにその悪影響が蓄積していく可能性だってある。そこでいったん、A2期間を設けて薬の服用を打ち切り、効果を検証しようとするのである。そして、A2期間で数値が悪化し、さらにB2期間で再び改善が見られた場合は、少なくともその対象者においてその薬は有効であると判断される。

 このロジックは、一般的には、単一被験体研究法における「反転法」、「A-B-A-Bデザイン」などと呼ばれている。行動分析学の入門書では、この方法は代表的な研究法として紹介されている。例えば最近刊行された某入門書では、ある農耕地で、畑を荒らす野ネズミの数が殺鼠剤の使用によりどう変化したかという事例を挙げて、この研究法の有用性を説いている。もともとその農耕地にはたくさんのネズミが居たが(=A1期間)、殺鼠剤使用により(=B1期間)大幅に数が減少した。しかし、そこまでのデータでは、単に季節変化によってネズミが畑に出てこなくなったという可能性もある。そこで上記同様のA2期間を設けてみたらネズミの数が再び増加してきた。さらにB2に移行すると、再び数は減少。よって殺鼠剤は有効である、というロジックである。

 上記は、この方法をうまく適用した事例であると言えるが、反面、この方法の適用を誤ったり、目的と手段を混同して、情報的価値があまり無いような結論を引き出してしまっている研究も少なくないように思う。授業でこの問題を扱っている時期でもあり、これを機会に、問題点を整理しておこうと思う。

 この日記でも一部取り上げたことがあるが、例えば、
  • 自分ではちっとも勉強しない子どもに家庭教師Aさんの指導を依頼した。Aさんを雇うことは、その子どもの勉学習慣向上に有効と言えるか。
  • 花粉症に悩まされている人が、A町からB町に引っ越した。B町の環境は、花粉症の改善に有効と言えるか。
  • 体質改善のため、毎朝30分の散歩をすることに決めた。それを強化するために、「散歩をちゃんとした時に限って(その人の大好きな)コーヒーを1杯飲むという自己契約をした(散歩しなかった時はコーヒーは飲まない)。このセルフコントロールは有効と言えるか。
事例が考えられる。いずれの場合も、A2期間を実施することは必要不可欠なのだろうか、また、上記のような検証実験から、何が結論として引き出せるのだろうか。

 次回に続く。