じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る



 50年前の東京・渋谷の忠犬ハチ公。正確な日付は不明だが、アルバムの同じページに貼られている他の写真から、1957年12月頃に撮影したものと推定される。

 ウィキペディアの当該項目によれば、
ハチの銅像は第二次世界大戦中に金属資源不足により供出され、現在のものは1948年8月に再建されたものである。...再建当時は駅前広場の中央に鎮座し北を向いていたが、1989年5月に駅前広場が拡張された際に場所移動し、同時に東(ハチ公口方向)向きに修正された。
となっている。確かに、写真のハチ公は、東横デパートを背に北方向を向いている。

 ハチ公前広場は、当時から待ち合わせ場所として有名であった。ケータイが無い時代には、事前に待ち合わせの場所と時刻をしっかり決めておくことが何よりも重要であったが、渋滞や事故などにより遅刻する場合がある。長時間の待ち合わせでイライラしている人にとっては、ハチ公像は多少なりとも慰めになったものと思う。

 もっとも、この広場脇は、各種政治団体の街頭演説にしばしば利用されており、まことに騒々しく、待ち合わせをするには大迷惑であった。そんなこともあって、私自身が待ち合わせにこの場所を使ったことは数回しか無かった。背景の東急東横店(当時の東横百貨店)西館は1954年(昭和29年)に増改築工事が行われたばかりであり、現在も景色はそれほど変わっていない。ハチ公の右側には「渋谷・東光ストア」の文字が見えるが、あのストアはその後「東急ストア」に改称された。しかし、こちらのサイトの店舗案内によると、渋谷駅前にはもはや店舗は存在していないように見える。また、ここから、渋谷駅西口広場方面に至る歩道脇には、アコーディオンを弾く傷痍軍人、くつみがき屋さん、ボロ服をまとった物乞いの人たちが座っていたのを思い出す。


10月15日(月)

【思ったこと】
_71015(月)[心理]日本心理学会第71回大会(24)エビデンスにもとづく臨床(2)

 大会最終日午前に行われた、

●認知行動療法と実証(エビデンス)にもとづく臨床:クライエントにとって真に有効な実践は何か?

というシンポの感想の2回目。

 まず、昨日の日記で、

●エビデンスのある所にお金を出すことで、限られた資源を有効に活用する

という考え方に言及したが、今回のシンポで企画者から示されたスライドによれば(←あくまで長谷川のメモに基づく)、この流れは、
  • 実証にもとづく医学(メタ分析、薬物の効果)
    コクラン計画(1992年)
  • 実証にもとづく看護・リハビリテーション
  • 実証にもとづく臨床心理学・カウンセリング
  • 実証にもとづく保健政策
  • 実証にもとづく社会政策論
    キャンベル計画(2000年)
    社会運動化 とどまるところを知らない
というように理解していけばよいようだ。ちなみに「コクラン計画」に関してはこちらに詳しい情報がある。また、「キャンベル計画 とどまるところを知らない」で検索すると、今回の企画者でもあられる丹野氏の丹野研 国際学会プロジェクトがヒットする。




 さて、シンポの1番目は、市井雅哉氏による「医療臨床の領域から」という話題提供であった。

 市井氏によれば、医療現場では、医師のほか、看護師、薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士のほか、この中では唯一、非国家資格である臨床心理士などのパラメディカルスタッフがいる。医師は、保険点数上は、薬物療法主体の治療を行うが、患者側としては、「話を聞いてほしい」、「薬に頼りたくない」、「薬へ依存することへの懸念」、「薬の副作用への懸念」などがあり、心理療法への期待は大きい。しかし、保険医療として心理療法を行うためには、当然、効果についてのエビデンスが求められる。

 今回の市井氏のスライドでも紹介されたように、Dryden & Rentoul(1991)によれば、介入効果研究には5つの段階がある。これをピラミッド型に図式化すると
  • 最下層部(土台)には事例研究
  • 2番目には、単一事例実験
  • 3番目は、要因統制実験
  • 4番目は、文献リビュー
  • 最上層の5番目は、メタ分析
という順序となっており、上層であるほど効果研究としての価値は高いとされている。また単一事例実験は、要因統制実験を行うにあたっての発見的手段として有効であるとも指摘されている。
 ここで少々脱線するが、上記のDryden & Rentoul(1991)というのは、私は、

●Dryden, W. & Rentoul, R.(Eds.)(1991).Adult Clinical Probrems: A Cognitive-behavioural approach." Routledge. [ドライデン・ レントゥル(編著)丹野義彦(監訳)『認知臨床心理学入門−認知行動アプローチの実践的理解のために』、東京大学出版会,1996年

という本のことであろうと思っていた。確かに、その本の訳本の38ページから43ページのあたりには、上記と同じ内容の効果研究の階層についての記述があるのだが、ピラミッド型の図式はどこにも掲載されていない。最近あのピラミッドを何度か見かけるが、あれって、誰がどこで描いたものなのだろうか。それとも原書には描かれていて、翻訳書でカットされたのだろうか。大きな謎である。

 ま、それはそれとして、ランバート & バージン (1978)によれば、治療効果予測の比率は、
技法:患者:治療者=1:6:3
という数値になっているという。これは、治療法自体よりも、患者本人や、治療者の名人芸のほうが有効というようにも受け取れかねない。市井氏は、これについては、今でも通用する考え方だろうか?と疑問を投げかけておられた。


 次回に続く。