じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日に続き初霜の写真(12月6日撮影)。総合文化科学研究棟前のテンニンギクの花壇にも初霜が降りた。


12月7日(金)

【思ったこと】
_71207(金)[心理]学士教育課程のコンセプト(1)

 12月7日、表記の研修セミナーに参加した。今回のセミナーは有料であったため、詳細なメモをここに公開することは差し控え、具体的な固有名詞が出ないような形で感想を述べさせていただくことにしたい。

 さて、セミナーではまず、大規模・私立大における、教員・職員・学生の三位一体型の教養教育の取組が紹介された。具体的には、
  1. 学部横断型・少人数のセミナー
  2. 理系と文系を結ぶ横断型なテーマで、「生きる」という根源的なテーマを見据える授業
  3. 「身体知」の実験授業
などであり、それぞれの成果がよく理解できた。特に3.は、他大学では行われていないユニークな内容を含んでいた。「ことば以外の表現法を使って自分を表現することで、新しい自分と出会い、他人とつながる」ことを目的としており、具体的には、有名な小説を朗読したり、講談や身体表現に置き換えてみたり、といった斬新な内容であった。但し、「声」と「情動」には、カルト宗教にも通じるようなリスクがあり、精神科の専門家のサポートも受けているということであった。

 こうした取組は画期的なものであると感じたが、実施の規模は数十人程度のクラスにとどまっているようであった。全学の学生数が数万人にという規模の中ではきわめて微々たる比率であり、しかも寄附講座に頼っているということであり、せっかくの成果が、全学の教養教育の抜本的な制度改革に繋げられるのだろうか、という点に不安を感じた。

 同じようなことは私のところの大学でも同じように言える。一般論として、何かの新しい改革を、全学で直ちに一斉に実施するということには、担当者確保の面でもなかなか難しい。そこでとりあえずは、数十人の規模で試行的に実施し、うまく行けばその輪を広げていこうと計画する。しかし、いくら成功体験が次々と報告されたからといって、自然発生的な増殖だけで輪が拡がるということはまずない。制度的に定着させるためには、トップダウン型の決定や、実施に見合うだけの制度設計がどうしても求められる。

 今回紹介された大学は、学部別の完全縦割りの意識が強く、全学的視点からのトップダウン型の決定が行われくいように思われた。しかしこの大学は、伝統があり、全国でもトップレベルの大学の1つとして知られている。これだけの「格」を備えた大学であれば、特段の抜本的改革がなされなくても、あるいはFDの成果がごく一部分にとどまっていたとしても、優秀な学生が確実に集まり、質保証が保てるということかもしれない。

 次回に続く。